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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
皇都編

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第百三話 帝国の関所と眠れる門番



──天才錬金術師は常識を知らない


「……案内許可」


黒い外套の集団が道を開く。


その光景にルナたちは未だに困惑していた。


「なんで通してくれるの……?」


ルナが呆然と呟く。


シエルも困惑したまま。


「普通、戦いになる流れだったよね?」


エリシアは深くため息を吐いた。


「ええ」


「完全にそうだったわ」


「なのに」


「どうしてこうなったのよ……」


フィーネは頭を抱える。


「わしにも分からぬ」


「じゃが」


「アルマの常識が世界の常識を破壊したのは今に始まったことではない」


アルマ本人はにこにこしていた。


「優しい人たちだったね!」


全員。


「「「違う!」」」


黒衣の集団。


「……」


彼らですら少し困惑しているようだった。



数時間後。


一行はついにヴァルゼリオン帝国の国境へと到着していた。


巨大な石壁。


その高さは三十メートルを超える。


天を突くような巨大な門。


両脇には魔導砲。


そして。


数十人の兵士。


「すごい……」


ルナが息を呑む。


シエルも目を丸くした。


「大きい!」


フィーネが頷く。


「帝国の関所じゃ」


「世界最大級の防衛施設の一つじゃな」


エリシアは懐かしそうに門を見上げる。


「久しぶりね……」


「ここを通るの」


すると。


門の前に立っていた兵士たちが騒ぎ始めた。


「黒影部隊!?」


「どうしてここに!?」


「それに……」


「何だあの魔獣!?」


「スライム!?」


「荷車!?」


「荷車が動いてる!?」


きゅる。


「きゅー!」


「しゃべったぁ!?」


一瞬で大騒ぎになる。


アルマは笑顔で手を振る。


「こんにちは!」


兵士たち。


「「「え?」」」


そして。


黒衣の集団の一人が前へ出る。


「対象」


「確認完了」


「通行許可」


兵士たち。


「「は?」」


隊長らしき男が慌てて駆け寄る。


「お待ちください!」


「この者たちの身元確認は!?」


「許可証は!?」


「検査は!?」


黒衣。


「不要」


「皇帝陛下命令」


「通行許可」


「……」


隊長の顔が真っ青になる。


「へ、陛下直々!?」


兵士たちも慌てて姿勢を正した。


アルマは首を傾げる。


「えっと?」


「入っていいの?」


「はっ!」


「どうぞ!」


「歓迎いたします!」


ルナが小声で言う。


「すごい待遇……」


シエルも驚いていた。


「皇帝さんってすごいんだね」


エリシアは嫌な予感しかしなかった。


「嫌な予感しかしないわ……」



しかし。


その時だった。


門の前。


「ぐごぉぉぉ……」


「すぴー……」


巨大な何かが門を塞いでいた。


全員。


「「「え?」」」


兵士たち。


「あ」


「しまった」


アルマが近づく。


「大きい!」


そこにいたのは。


体長十メートルを超える巨大な亀。


甲羅には苔や花が生えている。


まるで小さな丘のような存在。


そして。


寝ていた。


「すぴー……」


ルナが固まる。


「亀?」


シエルも目をぱちぱちさせる。


「大きい……」


フィーネが呆れる。


「また珍しいものがおるな」


エリシアは顔を引きつらせた。


「ちょっと待って」


「なんで国境のど真ん中で寝てるのよ!?」


隊長が頭を抱える。


「門番なんです……」


全員。


「「「門番!?」」」


「はい……」


「聖獣ガルドガメ様です」


「帝国創設以前から存在する守護獣でして……」


「最近、昼寝の時間が長くなって……」


「起きないんです」


シエル。


「ゆるい!」


ルナ。


「門番!?」


フィーネ。


「平和じゃのぉ」


エリシア。


「こんなので大丈夫なの帝国!?」


すると。


隊長が泣きそうになる。


「お願いします!」


「起こして下さい!」


「誰がやっても起きないんです!」


アルマ。


「任せて!」


エリシア。


「なんで!?」



アルマは巨大な亀の前に立った。


「もしもーし!」


「朝ですよー!」


「すぴー……」


反応なし。


ルナ。


「駄目そう」


シエル。


「可愛い寝顔」


フィーネ。


「千年ほど寝ておるのではないか?」


エリシア。


「それもう冬眠じゃない?」


アルマは考える。


「うーん」


そして。


ぽん。


「そうだ!」


袋から何かを取り出した。


「特製!」


「香り付き野菜クッキー!」


全員。


「また変なもの出した!」


アルマは亀の鼻先へ近づける。


すると。


ぴく。


巨大な鼻が動く。


「……ん?」


ぴくぴく。


「……」


くんくん。


「……!」


ぱち。


目が開いた。


兵士たち。


「起きたぁぁぁ!?」


巨大な亀がゆっくり起き上がる。


地面が揺れる。


「グォォ……」


しかし。


次の瞬間。


巨大な顔がアルマへ近づいた。


エリシア。


「危ない!」


ルナ。


「お姉ちゃん!」


シエル。


「アルマちゃん!」


だが。


ぺろ。


「きゃはは!」


「くすぐったい!」


巨大な亀はアルマをぺろぺろ舐め始めた。


兵士たち。


「「「えぇぇぇ!?」」」


隊長。


「ガルドガメ様が懐いた!?」


フィーネ。


「……」


「またか」


エリシア。


「もう驚かない」


ルナ。


「私も」


シエル。


「仲間にならないよね?」


ミル。


「……なる?」


きゅる。


「きゅー!」


ギガルド。


グル……


そして。


巨大な亀。


「グォォ♪」


嬉しそうに尻尾を振る。


隊長が青ざめる。


「ま、まさか……」


アルマ。


「ふふ」


「いい子だね!」


帝国へ入った初日。


まだ門を通ってすらいない。


なのに。


すでに帝国最古の門番が懐いていた。


フィーネは遠い目をした。


「先が思いやられるのぉ……」


そして。


帝都ヴァルゼリア。


皇帝ガイゼル。


仮面の男。


まだ見ぬ帝国の闇。


そんなものをよそに。


天才錬金術師アルマは。


今日も変わらず。


世界の常識を塗り替えていくのであった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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