表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
皇都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
103/121

第百二話 帝国への街道と“追跡の影”



──天才錬金術師は常識を知らない


帝国へ続く街道は、王都周辺とは空気が違っていた。


整備はされているはずなのに、どこか冷たい。


風が吹くたびに草が揺れる音がやけに大きく聞こえる。


アルマたちはその街道を歩いていた。


きゅる。


「きゅー♪」


生きている荷車は相変わらず上機嫌で、車輪を軽快に回しながら進んでいる。


その荷台の上では。


ミルが丸くなって眠っていた。


「……すぅ」


ルナが後ろを振り返る。


「ほんとに平和だよね、この辺」


シエルが笑う。


「逆に怖いくらい静かかも」


エリシアは周囲を警戒していた。


「静かすぎるのよ」


「こういう場所は、何かいる」


フィーネも空を見上げる。


「うむ」


「帝国へ近づくほど“監視の目”が増える」


アルマは首を傾げる。


「監視?」


「誰が?」


フィーネは短く答える。


「帝国じゃ」


その言葉の直後だった。


ザッ。


草むらが揺れた。


全員が一瞬で構える。


シエルが剣に手をかける。


「今の!」


ルナが魔力を練る。


「魔物……?」


しかし。


現れたのは魔物ではなかった。


黒い外套をまとった人影。


一人。


二人。


三人。


無言。


顔は見えない。


だが明らかに“こちらを見ている”。


エリシアの目が鋭くなる。


「帝国の追手……?」


フィーネが小さく舌打ちする。


「早速か」


アルマはのんきだった。


「こんにちは?」


その瞬間。


空気が凍る。


黒い影の一人が一歩前に出た。


「アルマ」


低い声。


「帝国より“確認任務”だ」


ルナが身を固くする。


「確認……?」


影は続ける。


「貴様が“対象個体”かどうか」


シエルが叫ぶ。


「個体って何!?」


エリシアが剣を抜く。


「やっぱり敵ね」


しかしアルマは首を傾げるだけだった。


「私、アルマだよ?」


影はしばらく沈黙した。


そして。


「一致」


その言葉と同時に。


周囲の空間が歪む。


ザザッ。


草原に魔法陣が浮かぶ。


ルナが叫ぶ。


「結界!?」


フィーネが翼を広げる。


「やはり来おったか!」


エリシアが前に出る。


「アルマ、下がって!」


しかしアルマは動かなかった。


「なんで?」


「話してるだけだよ?」


シエルが叫ぶ。


「違うよ!」


「それ絶対戦うやつだよ!」


影が手を上げた。


「確保する」


その瞬間。


空間が“折れる”。


見えない壁がアルマたちを包み込もうとする。


ルナが魔力を放つ。


「防御結界!」


バチィン!!


衝突。


衝撃。


大地が割れる。


フィーネが叫ぶ。


「転移系拘束結界じゃ!」


「空間ごと捕まえる気か!」


エリシアが剣で斬りかかる。


「切れるの!?」


しかし刃は空間に弾かれる。


「くっ……!」


シエルが焦る。


「強すぎる!」


ミルが目を覚ます。


「……なに?」


「……うるさい」


きゅるが震える。


「きゅ……!?」


アルマはようやく少し真面目な顔になる。


「捕まえられそう?」


フィーネが怒鳴る。


「そういう問題ではない!」


その時だった。


影の一人が呟く。


「報告」


「高反応個体」


「危険度上昇」


エリシアが睨む。


「やっぱり“危険物扱い”ね」


アルマはぽつりと言う。


「私、危ないの?」


ルナが慌てる。


「違う違う!」


「相手が勝手にそう言ってるだけ!」


シエルも必死に言う。


「アルマお姉ちゃんは危なくないよ!」


フィーネが小さく息を吐く。


「いや」


「危ないには危ないが……方向性が違う」


エリシアが突っ込む。


「そこ否定しないのね!?」


その時。


影の中央が動いた。


他より明らかに格上の気配。


「対象回収優先」


「抵抗は排除」


空間が一気に圧縮される。


ルナの結界が軋む。


「持たない!」


シエルが叫ぶ。


「どうするの!?」


エリシアが歯を食いしばる。


「突破するしかない!」


フィーネが翼を広げる。


「ならば燃やすのみじゃ!」


黄金の炎が広がる。


しかし。


アルマは一歩前に出た。


「待って」


全員。


「「「え?」」」


アルマは影を見ていた。


そして言う。


「あなたたち、帝国の人?」


影は沈黙する。


アルマは続ける。


「私、行く途中なんだけど」


「案内してくれる?」


一瞬。


空気が止まる。


エリシアが崩れ落ちる。


「何言ってるのよ!?」


シエルが叫ぶ。


「敵だよ!?敵!」


ルナも青ざめる。


「お姉ちゃん!?!?」


フィーネですら固まる。


「……正気か?」


しかし影は。


動きを止めた。


そして。


「……再評価」


「対象の行動、非予測」


「危険度判定更新」


エリシアが叫ぶ。


「ほら!危険度上がってる!」


アルマは首を傾げる。


「でも怒ってないよ?」


影はしばらく沈黙し。


そして。


「……案内許可」


その言葉と同時に。


結界が一部開く。


全員が凍る。


ルナが小さく言う。


「え……通ったの……?」


シエルが混乱する。


「どういう基準!?」


フィーネは額に手を当てる。


「……帝国はやはり狂っておる」


エリシアはため息をついた。


「もう驚くの疲れたわ」


ミルはぽつりと言う。


「……アルマ」


「……すごい」


きゅるは元気よく鳴く。


「きゅー!」


影たちは静かに道を開ける。


まるで“通すべき存在”として認識したかのように。


そして。


アルマは笑う。


「ありがとう!」


その言葉に。


影の一人がわずかに動きを止めた。


まるで。


理解できないものを見るように。


しかし。


それでも彼らは進む。


帝国へと続く街道の先へ。


その奥で。


ヴァルゼリオン帝国は静かに。


彼女たちの到来を待っていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ