第百話 祝福の百話と王からの贈り物
──天才錬金術師は常識を知らない
夕日に染まる街道。
アルマたちは賑やかにソリティア共和国の王都へ向かっていた。
「きゅー!」
新たな仲間となった生きる荷車きゅるは、嬉しそうに車輪を回しながらアルマの後ろをついてくる。
その荷台には。
ぷに。
「……すぅ」
スライム姿のミルが丸まって寝ていた。
「ミルちゃん寝てる」
ルナが微笑む。
シエルも笑った。
「きゅるちゃんの荷台、気に入っちゃったんだね」
「……すぅ」
小さく寝息を立てるミル。
きゅるも嬉しそうに取っ手を揺らしている。
グル♪
ギガルドもその横を歩き、まるで護衛のようだった。
「本当に変な一行じゃの」
フィーネが呆れながら笑う。
エリシアも苦笑する。
「否定できないわね」
すると。
「見えてきた!」
シエルが指差した。
遠くに見える大きな城壁。
ソリティア共和国王都。
「帰ってきた~!」
アルマが目を輝かせる。
◇
王都。
城門。
衛兵たちは一行の姿を見ると目を丸くした。
「おお!」
「アルマ殿!」
「無事だったか!」
「それに……」
「何だあの荷車!?」
「魔獣!?」
「スライム!?」
「狼!?」
「……寝てる」
「荷車が動いた!?」
きゅる。
「きゅ?」
衛兵。
「しゃべったぁぁぁ!?」
アルマは笑顔だった。
「友達!」
フィーネ。
「説明になっておらん」
エリシア。
「もう諦めた方がいいわよ」
◇
その後。
王城。
謁見の間。
ソリティア国王レオン=ソリティアは、帰還したアルマたちを迎えていた。
「よく戻った!」
王は立ち上がる。
「黒呪竜の討伐!」
「蒼雷獣ギガルドの救済!」
「そして各地の異変の解決!」
「全て見事であった!」
家臣たちも拍手を送る。
しかし。
アルマは首を傾げた。
「討伐?」
「倒してないよ?」
「助けただけ」
「うむ」
フィーネも頷く。
「殺しておらん」
「救っただけじゃ」
王は苦笑した。
「そうであったな」
「だからこそ、お主たちらしい」
ルナが小さく笑う。
シエルも嬉しそうだった。
その時。
王が家臣へ合図する。
「持って参れ」
大きな箱が運ばれてきた。
「これは?」
アルマが首を傾げる。
王は笑顔を浮かべた。
「褒賞だ」
「お主たちへの感謝の証」
箱が開く。
中には。
大量の金貨。
高級素材。
魔石。
そして。
一枚の美しい証書。
「感謝状?」
アルマが目を丸くする。
「うむ」
王は頷く。
「ソリティア共和国名誉功労者の証だ」
「これを持つ者は、我が国で最大限の支援を受けられる」
「宿泊費、税、通行証、様々な恩恵がある」
シエルが目を輝かせた。
「すごい!」
ルナも驚いている。
「そんなものまで……」
エリシアも目を見開く。
「名誉功労者……?」
フィーネも少し驚いていた。
「破格じゃな」
しかし。
当のアルマ。
「紙?」
全員。
「「「紙じゃない!!」」」
王ですら吹き出した。
「はははは!」
「面白い娘だ!」
「紙ではあるが!」
「価値が違う!」
アルマは不思議そうにしていた。
「そうなんだ?」
「じゃあ大事にする!」
◇
さらに。
王は真剣な顔になる。
「そして」
「アルマ殿」
「一つ頼みがある」
「?」
「ヴァルゼリオン帝国へ向かってほしい」
エリシアの表情が変わる。
フィーネも目を細めた。
「やはりか」
王は頷く。
「近頃、帝国の動きがおかしい」
「何かが起きようとしている」
「我々では調査しきれぬ」
「だが」
王は微笑んだ。
「お主ならば」
「世界の常識すら覆すお主ならば」
「きっと新たな道を見つけられるだろう」
アルマ。
「帝国?」
「うん!」
「行ってみたい!」
即答だった。
エリシアが頭を抱える。
「悩まないの!?」
「だって楽しそう!」
フィーネ。
「こやつは本当に……」
ルナは笑う。
「アルマお姉ちゃんらしいね」
シエルも元気よく手を上げた。
「私も行く!」
ミル。
「……いく」
グル♪
ギガルド。
「……仲間」
きゅる。
「きゅー!」
王も笑顔になった。
「頼もしい仲間たちだ」
◇
その夜。
王都の宿。
「ふぁ~」
アルマはベッドに飛び込んだ。
ミルはきゅるの荷台の中で丸くなっている。
ギガルドは窓際で眠り。
ルナとシエルは明日の準備。
フィーネは椅子で本を読んでいた。
エリシアは静かに夜空を見上げる。
「帝国か……」
故郷。
そして。
自分の知らない闇。
そこにアルマを連れていく。
少しだけ不安だった。
しかし。
「エリシアちゃん!」
「一緒に寝よ?」
「え?」
いつの間にかアルマが手を振っている。
「ほら!」
「明日も楽しいよ!」
エリシアは思わず笑ってしまった。
「ええ」
「そうね」
「きっと」
そして。
夜空の向こう。
遥か彼方。
ヴァルゼリオン帝国。
皇帝ガイゼル=ヴァルゼリオンは静かに笑っていた。
「いよいよだ」
「天才錬金術師アルマ」
「歓迎しよう」
「我が帝国へ」
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




