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天才錬金術師は常識を知らない〜神に選ばれた少女は、世界の価値を再定義する〜  作者: れんP
帝国編

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第九十九話 荷車の名前と笑顔の帰路



──天才錬金術師は常識を知らない


「きゅー!」


草原の真ん中。


目のついた不思議な荷車は、アルマの周りをくるくる回っていた。


取っ手を尻尾のようにぶんぶん振りながら、嬉しそうに跳ねている。


ルナが苦笑する。


「なんか懐いちゃったね」


シエルも笑う。


「かわいい!」


エリシアはまだ困惑していた。


「いや、待って」


「荷車よ?」


「どうして喜んでるの?」


フィーネも呆れている。


「最近の若い魔道具は元気じゃのぉ……」


「いや、若いも何も荷車ですけど!?」


エリシアのツッコミが飛ぶ。


すると。


「きゅ?」


荷車がエリシアを見る。


「……」


「……なんでそこで首を傾げるのよ」


「きゅぅ」


少し悲しそうな声。


「うっ」


エリシアは思わず目を逸らした。


「泣きそうな顔しないで!」


アルマは笑顔で荷車を撫でる。


「よしよし」


「寂しかったんだよね」


「きゅ!」


「迷子になっちゃったんだね」


「きゅー!」


フィーネが呟く。


「会話が成立しておる……」


ミルも荷車の前にしゃがみ込む。


「……友達?」


「きゅ!」


「……いい子」


ぷにぷに。


スライム状態の手で撫でる。


荷車は嬉しそうに車輪を回した。


グル♪


ギガルドも近寄る。


くんくん。


「きゅ?」


荷車も興味津々。


すると。


きゅぴ!


荷車がギガルドの尻尾をぺろっと舐めた。


グル!?


驚くギガルド。


シエルが笑い転げる。


「ははは!」


「ギガルドくんびっくりしてる!」


ルナも吹き出した。


「ふふっ!」


エリシアも思わず笑ってしまう。


「何なのよ、この子たち……」


その時。


アルマが立ち上がった。


「そうだ!」


「名前!」


全員。


「「あ」」


フィーネが嫌な予感を覚える。


「待て」


「まさか」


アルマはキラキラした目で荷車を見る。


「名前がないと寂しいもんね!」


「きゅ!」


「名前を付けよう!」


ルナが笑う。


「確かに!」


シエルも賛成した。


「いいね!」


ミルも小さく頷く。


「……名前」


「……大事」


エリシアは呆れながらも笑顔だった。


「もう仲間になる流れなのね……」


フィーネが遠い目をする。


「また増えるのか……」


アルマは真剣に考え始めた。


「うーん」


「うーん」


「車輪でしょ?」


「荷物運ぶでしょ?」


「かわいいでしょ?」


シエルも一緒に考える。


「モフモフじゃないからなぁ」


ルナも悩む。


「うーん」


ミル。


「……きゅ」


「……きゅる」


すると。


アルマの目が輝いた。


「きゅる!」


「きゅるちゃん!」


荷車。


「きゅ!?」


「きゅー!!」


大喜び。


取っ手をぶんぶん振る。


ルナが笑った。


「気に入ったみたい!」


シエルも笑顔。


「かわいい!」


ミルも嬉しそう。


「……きゅる」


「……かわいい」


ギガルド。


グル♪


フィーネは苦笑した。


「まぁ」


「本人が気に入ったならよかろう」


エリシアも肩をすくめる。


「変な名前だけど」


「似合ってるわね」


「きゅー!」


きゅるは元気よく飛び跳ねた。


そして。


コロコロコロ。


アルマの周りを回る。


「ふふ」


「よろしくね、きゅるちゃん!」


「きゅ!」



その後。


商人たちの元へ戻った一行。


「あ!」


「荷車!」


商人のおじさんは目を潤ませた。


「無事だったか!」


「ありがとう!」


しかし。


「きゅ!」


荷車はアルマの後ろに隠れた。


「ん?」


商人も困惑する。


「どうした?」


「帰るぞ?」


「きゅぅ……」


怯えている。


アルマが首を傾げた。


「嫌みたい」


フィーネが目を細める。


「ふむ」


「何か理由があるな」


すると。


ミルが荷車に近付く。


「……どうした?」


「……怖い?」


「きゅ……」


荷車の目から涙がぽろぽろ零れた。


ルナが驚く。


「泣いてる!」


商人は青ざめる。


「ま、まさか」


「最近、動きが悪かったからって……」


「少し乱暴に扱ったりはしたが……」


エリシアが睨む。


「少し?」


「えっと……」


「蹴ったり」


「叩いたり」


「壊れかけてたから」


フィーネの目が据わる。


「ほう?」


シエルが怒る。


「ひどい!」


アルマは悲しそうだった。


「きゅるちゃん」


「頑張ってたんだね」


「きゅ……」


すると。


ギガルドが商人の前に立つ。


グルルル……


「ひっ!」


商人が震える。


「す、すみません!」


「もうしません!」


アルマは笑顔で言った。


「きゅるちゃん」


「一緒に来る?」


「きゅ!」


即答だった。


全員。


「「早い!」」


フィーネは額を押さえる。


「決まりじゃな」


エリシアは笑っていた。


「荷車まで仲間にする人、初めて見た」


シエルも笑顔。


「旅がもっと楽しくなるね!」


ルナも頷く。


「うん!」


ミルも嬉しそう。


「……家族」


「……増えた」


そして。


アルマたちの一行。


不死鳥フィーネ。


吸血鬼の少女ルナ。


銀髪の少女シエル。


謎多きエリシア。


メタモルスライムのミル。


蒼雷獣ギガルド。


そして。


生きている荷車、きゅる。


ますます賑やかになった一行は、夕日に染まる街道を歩いていく。


しかし。


誰も知らない。


遠くヴァルゼリオン帝国では。


仮面の男が新たな計画を進めていたことを。


そして。


玉座の間で。


皇帝ガイゼル=ヴァルゼリオンが、静かに笑っていたことを。


「待っているぞ」


「天才錬金術師」


「アルマ」


「お前がこの国に来る日をな」


新たな舞台。


ヴァルゼリオン帝国。


その巨大な運命が。


静かに。


だが確実に。


アルマたちへ近付いていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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