表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
還命の魔術師 -失われた王子の記憶  作者: 白澄 灯
第二章 「学院生活」
PR
29/36

第29話 「妖精達の夜想曲」

                親愛なる王妃殿下へ


 王妃様におかれましては、つつがなくお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。

 先日は温かくお迎えいただき、誠にありがとうございました。

 わたくしは国へ戻り、変わりなく過ごしております。

 こちらでは雪解けが始まり、庭園のフクシア達も、少しずつ鈴のような音を響かせるようになりました。

 

 けれど最近、どうにも妖精達の様子がおかしいのです。

 風が吹くたび、皆で綺麗に音を重ねているのに“ド”の子だけ、泣いているみたいな音を鳴らすのです。

 他の子達も困ってしまっているようで、夜の合唱が上手く揃いません。


 ――庭師達も首を傾げるばかりで、原因が分からないのです。


 夜になると、その音が雪庭(ゆきにわ)によく響くものですから、少しだけ寂しい気持ちになります。


 王妃様なら、何かご存知でしょうか。

 幼い頃、母が「花達の音にも意味があるのですよ」と話してくださったことを、ふと思い出しました。

 もしお時間がございましたら、またお話を聞かせていただければ幸いです。


 長い冬もようやく終わりを迎え、こちらでは少しずつ雪解けの音が聞こえ始めております。

 どうかお身体を大切になさってくださいませ。

 雪国より、敬愛を込めて。


          フローレンス·ソラーナ·ニエベス


 王妃は、手紙へ静かに視線を落としたまま、小さく息を吐いた。

「ソラーナのフクシアは、少し特別なのよ」

 穏やかな声だった。


 窓の外では、柔らかな初夏の風が庭を揺らしている。

「北の雪国でしか咲かない品種でね。氷色の花弁を持つの」

 ロランが静かに目を細める。

 王妃様は続けた。

「風を受けると、小さな鈴みたいな音を鳴らすのよ」

 どこか懐かしそうな声音。

「ソラーナでは、“冬の妖精が奏でる花”なんて呼ばれているわ」

 くすり、と微かに笑う。

「一輪ごとに違う音を持っていて、夜になると皆で合唱するのですって」


 そこで。

 王妃様の指先が、手紙の一文で止まった。


 “ド”の子だけが、濁った音を奏でるのです。


 ロランの視線が、ゆっくり落ちる。

 王妃様は小さく目を伏せた。

「……本来なら、“ド”は一番澄んだ音なのだけれど」



 ◇◇◇◇◇


 遥か北。

 ソラーナ王国。

 白銀に閉ざされた庭園の中で、氷色のフクシアが静かに揺れていた。

 透き通る花弁。

 吊るされた花は、小さなベルみたいに風へ震える。


 リン……リン。

 ティン……。

 澄んだ音色が、雪解けを迎えた夜庭へ広がっていく。


 まるで、冬の妖精達が、秘密の演奏会を開いているみたいだった。


 庭園の中央。

 白い石卓(せきたく)の上へ、小さな輪菓子が並べられている。

 雪色のドーナツ。

 表面には、淡く銀色に光る鈴粉密(りんぷんみつ)がまぶされていた。

 妖精達の好物だ。

 ドーナツは“巡り”を意味する菓子。

 フクシアの音へ合わせ、妖精達に作られる。

 

 その夜、妖精達は、不安そうに石卓を囲んでいた。

 そこへ並ぶ、小さな輪菓子は、星型、花型、半月型、それぞれ違う形をしているけれど、真ん中に置かれた“ド”の輪だけは、綺麗な円だった。

 ただし今は、その一部が、ぽっかり欠けている。

 

 “ド”の輪は、始まりの輪である。

妖精が呟く。

「“ド”だけは特別」

 氷色の花弁が、寂しそうに揺れる。


 ……ドォン。

 濁った音に、妖精達は小さく肩を震わせた。

「“ド”は、終わった音を還す輪なの」

「だから、ちゃんと丸くないと駄目なのに……」

 ひとりの妖精が、欠けた輪をぎゅっと抱き締める。

「庭師達だって、ちゃんと隠してた」

「銀蓋もした」

「なのに」


 どこか遠くで、キキキキキッ! 甲高い鳴き声が響いた。

 氷色のフクシア達が、か細く揺れる。

 帰れなくなった“ド”の子を、皆で待っているみたいだ。

 けれど、その中の“ひとつだけ”が欠けている。


 リン……リン……。

 ティン……。

 

 小さな鈴音の中、花弁の陰から、指先ほどの妖精達が顔を覗かせていた。透き通る羽、雪みたいな髪、彼らは石卓の上の輪菓子を囲み、ドの妖精に視線を向ける。


 “ド”の音だけは、他のフクシア達と少し違っていた。

 透き通る氷色だった花弁の端が、少しずつ茶色へ変わっている。

 雪へ触れる前に、溶けてしまったみたいだ。

 風が吹くと……ドォンと濁った音が鳴り、花は小さく震えた。

 ひとりの妖精が、欠けたドーナツを指差した。

 鈴粉蜜の甘い香りが、まだ微かに残っている。

「絶対ネズミだ!」

「時喰いのネズミ!」

「でも、どうして“ド”だけ……?」


  一番高い枝へ座っていた妖精が、静かに呟いた。

「……“ド”は、巡りの音だから」


 別の妖精が、不安そうにドーナツを抱える。

「ネズミが“その先”を食べちゃったんだよ」

「だから、巡れなくなったの」

「鳴っても戻らない」

 夜風が吹く。

 フクシア達が、寂しそうに揺れた。

「……このままだと、“ド”の子、帰れなくなっちゃう」


「“帰れなくなる”って……どこへ?」

 小さな妖精が、不安そうに羽を震わせた。

 一番高い枝へ座っていた妖精が、静かに目を伏せる。

「音の輪へ」

「……“ド”の子、みんなと歌えなくなっちゃう」

 

「違う!」


 か細い声で誰かが呟いた。

 花弁の陰で、小さな妖精が羽を伏せる。

「ちゃんと歌いたい」

 けれど欠けた輪は、もう上手く巡らない。

 音も、花も、少しずつ色を失っていく。


「本当はね」

 高枝の妖精が、欠けた輪菓子をそっと撫でる。

「最後には、みんな“ド”へ還るの」

「そうしてまた、最初から歌えるんだよ」

 白い雪解け水が、石畳を静かに流れていく。

「でも輪が欠けたから」

 妖精は、齧られたドーナツを見る。

「“ド”の子だけ、戻る場所が分からなくなっちゃった」


 その時だった。

 庭園の奥では、白銀の木陰で何かが動く。


 キキキキキッ。


 甲高い鳴き声に、妖精達が一斉に振り返る。

 雪の上を、透明なネズミが駆け抜けていった。

 その小さな口には、銀色に光る、欠けた輪菓子の欠片が咥えられていた。


 ◇◇◇◇◇


 窓の外では、初夏の風が庭木を揺らしている。

 王妃は窓の外へ視線を向けたまま、手紙を静かに閉じると、しばらく物思いにふけっていた。


 やがて。

「……ロラン」

 穏やかな声が落ちた。

「あなたは、どう思う?」

 ロランは答えない。

 ただ静かに、閉じられた手紙へ視線を落とす。


 そこに記されていた一文が、脳裏を過った。


 “ド”の子だけが、濁った音を奏でるのです。

 ロランは、僅かに目を細めた。

「嫌な巡りです」

 王妃様の指先が、微かに止まる。

 ロランは静かに続けた。

「“ド”は、本来還る音です」

「それが濁るということは……」

 そこで言葉を切る。

 王妃様はゆっくり目を伏せた。

「エリアスへ繋ぎましょう」


「やっぱり、ディオンかしら」

 王妃様の穏やかな声が落ちる。

 だが、ロランは答えなかった。

 窓の外では、変わらず爽やかな初夏の風が庭木を揺らしている。

 

「……あれは」


「軽々しく触れて良い理ではありません」

 王妃様が静かに視線を向ける。

 ロランは目を伏せたまま続けた。


 「巡れなくなったものを還す。言葉にすれば簡単です」

 「ですが」

 その先をロランが飲み込む様子に、王妃様は小さく息を吐いた。

 「心配なのね」

 ロランは否定しない。


 ただ静かに、

「……父親ですので」

 ロランの低い声が、静かに落ちる。


 王妃様は、そっとティーカップを置いた。

 

 「時計塔の件も、まだ完全には回復していないのでしょう?」

 静かな問いに、ロランは僅かに目を伏せた。

 時計塔、歪みの時計草、還命。

 あの後、ディオンは異様な眠りへ落ちた。

 朝と夕を取り違えるほどに。

 王妃様も、その報告は受けている。

「……ええ」

 短く答える。

「何時間眠っても、起きなかったと」


 王妃様は、ふと柔らかく微笑んだ。

「でも」

 手紙をそっと指先で触れる。

「報告では、“三人で還した”のでしょう?」

 ロランの視線が、ゆっくり上がる。

 王妃様はどこか穏やかな目をしていた。

「以前なら、ひとりで抱え込んでいたわ」

 静かな声。

「リネとカイルがいるのでしょう?」

 風が吹き込み、カーテンが揺れた。

 ロランはしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐く。

「……そう、ですね」


 その声は、ほんの少しだけ、柔らかかった。



 王妃の執務室は、午後の柔らかな陽光に包まれていた。

 白いレース越しに、初夏の風が静かに入り込む。

 花瓶へ活けられた白薔薇が、微かに揺れた。

 机の上には、既に閉じられた一通の手紙。

 深紅の封蝋。

 ロランは壁際へ静かに控えている。

 

 やがて、コン、コンと控えめなノックが響いた。


「入りなさい」

 穏やかな声の後、扉が静かに開く。

「お呼びでしょうか、母上」

 エリアスが一礼する。

 銀糸みたいな髪が、窓から差す光を受けて淡く輝いた。

 王妃は、小さく微笑む。

「ええ。座ってちょうだい」

 その姿を見たロランが、静かに一歩下がる。

「では、私は――」

 席を外そうとした、その時だった。

「ロラン」

 王妃様の柔らかな声が落ちる。

 ロランの足が止まった。

 王妃様は、小さく微笑む。

「あなたにも聞いていて欲しいの」

 静かな声音。けれど、そこには穏やかな信頼があった。

 ロランは僅かに目を伏せる。

「……承知しました」

 エリアスがゆっくり視線を向ける。

 王妃様は、机の上の手紙へそっと触れた。

「ソラーナからよ」

 その瞬間、エリアスの表情が、ほんの僅かに変わる。

 どこか遠くで、鈴みたいな音が鳴った気がした。


「……エリアス」


 柔らかな光の中で、エリアスはフローレンス姫からの手紙を読んでいた。

 氷色のフクシア、濁る“ド”の音、欠けた輪菓子。

 その指先が、一瞬だけ止まる。

 王妃様は穏やかな声で問いかけた。


「あなたは、どう思う?」


 初夏の風が、静かにカーテンを揺らす。

 やがて、エリアスは小さく目を伏せた。

「……“ド”は、巡りの始まりであり、終わりでもある」

 その声音は落ち着いていた。

 けれど、どこか張り詰めている。

「それが濁るなら」

 エリアスは、手紙へ視線を落としたまま続ける。

「既に、どこかで巡りが歪んでいる」

 ロランの表情が、僅かに硬くなる。

 王妃様は静かに息を吐いた。

「……やはり、放ってはおけないわね」

 すると。

 エリアスが、ゆっくり顔を上げる。水晶みたいな瞳が、静かに揺れた。

「ですが」

 その声は、どこか迷うみたいだった。

「ディオンを関わらせたくはありません」

 部屋が静まり返る。

 ロランだけが、静かに目を伏せた。


 静かな声だった。

 けれど、その言葉の奥にある感情を、ロランは理解していた。

 部屋へ沈黙が落ちる。

 ロランは静かに口を開いた。

「……殿下」

 低く穏やかな声。

 エリアスが視線を向ける。

 ロランは僅かに目を伏せた。

「私は、あの子へ何かを強いるつもりはありません」

 王妃様が静かに二人を見守っている。

「還命は、軽々しく扱ってよい理ではない」

 その声は静かだった。

 けれど重い。

「だからこそ」

 ロランはゆっくり顔を上げる。

「選ぶべきなのです」

 エリアスの瞳が、僅かに揺れた。

 ロランは続ける。

「誰のために使うのか」

「何を還したいのか」

「その先で、何を失うのか」

 静かな声音。

「全て含めて、あの子自身が」


 やがてロランは、小さく息を吐いた。

「……私は、父として止めたくなる時もあります」

 ほんの少しだけ苦い笑み。

「ですが」

 その視線は真っ直ぐだった。

「ディオンは、もう自分で選べる年です」


 エリアスは静かに目を伏せた。


「……分かりました」


 低い声が落ちる。

 けれど、その声音はどこか重かった。

 王妃様が穏やかに微笑む。

 ロランは何も言わない。

 ただ静かに、エリアスを見ていた。

 エリアスは手紙を丁寧に畳む。

 “ド”の子だけが、濁った音を奏でるのです。

 

「ディオンを王宮へ呼びます」

 静かな声。

「ディオンだけではありません」

 ゆっくり顔を上げる。

 水晶のような瞳は、どこか柔らかかった。

「リネとカイルも」

 ロランの表情が、ほんの僅かに緩む。

 王妃様は小さく目を細めた。

「まあ」

 くすり、と笑う。

「随分と賑やかになりそうね」

 エリアスは微かに息を吐く。

「……ひとりでは、止まらないでしょうから」

 誰のことを言っているのか。

 その場の全員が分かっていた。


 ◇◇◇◇◇


 王宮の回廊を、三人は並んで歩いていた。

 磨き上げられた白い床、高い窓から差し込む、柔らかな初夏の光。

 騎士学院とは違う静けさが、王宮にはある。

「……相変わらず落ち着かねぇな」

 カイルが小さく肩を竦めた。

 リネは呆れたように息を吐く。

「お前はどこでも騒がしいだろう」

「うるせぇ」

 ディオンは少し前を歩く近衛騎士を見る。

 王宮へ呼ばれること自体が珍しいけれど、空気が違うことは感じている。

 

 やがて、重厚な扉の前で、騎士が立ち止まる。

 

 金細工で王家の樹木の紋章が刻まれている。

「エリアス殿下。ディオン・リュミエール様方をお連れしました」

 静かな声の後、少し間を置いて。


 「入れ」

 

 低く穏やかな声が返る。

 扉が開くと、執務室の中は紙とインクの香りがした。

 

 大きな窓と積み上げられた書類、そして、窓辺には銀髪の青年が立っていた。

「失礼します」ディオンとリネは、腰の剣へ軽く触れ、一礼した。静かに騎士礼を取る横で、カイルが軽く頭を垂れる。

「……どうも」

リネが小さく眉を寄せる。

「お前な」

「いいだろ別に」

エリアスは小さく息を吐いた。

けれど、どこか少しだけ、安心したみたいにも見えた。

 

 エリアスは三人を見て、僅かに目を細めた。

「来てくれてありがとう」

 柔らかな声。

 カイルが小さく眉を寄せる。

「……で、今回は何だ」

 単刀直入だった。

 リネが肘で小突く。

 ディオンは静かにエリアスを見る。

 エリアスは机の上へ、一通の手紙を置いた。

 深紅の封蝋。

 見覚えがある。

「ソラーナ王国からだ」

 窓の外で、風が吹く。

 どこか遠くで、鈴みたいな音が鳴った気がした。


 ◇◇◇◇◇

 

 白銀の城が、雪解けの陽光を反射していた。

 ソラーナ王国は、北の大国。

 長い冬を越えたばかりの城下には、まだ雪が残っている。

 王宮へ続く大階段を、俺達は静かに進んでいた。

 吐く息は、僅かに白い。

「……寒っ」

 カイルが肩を竦める。

「春だよな?」

「ソラーナでは普通らしい」

 リネが淡々と返した。

 

 遠くで、鈴みたいな音が響く。

 リン……リン……。

 ティン……。

 顔を上げると、白い回廊の先で氷色のフクシアが揺れていた。

 小さなベルみたいな花。その音は、どこか透き通っている。

 けれど、一輪だけ。

 ……ドォン。

 低く濁った音が混ざった。

 カイルが顔をしかめる。

「……今のか?」

 ディオンは小さく目を細める。

 確かに、ほんの少しだけ、空気が歪んだ気がした。

 やがて、巨大な扉が開く。

 玉座の間。


 *****


 白銀と青を基調にした広間の奥で、ソラーナ国王が静かにこちらを見下ろしていた。

 氷みたいな灰銀の髪、鋭い眼差し。

 その隣には、フローレンス姫が立っていた。

 彼女は俺達を見ると、ほっとしたみたいに小さく微笑んだ。

「ようこそ、セレノアの騎士学生達」

 国王の低い声が響く。

 静かな威圧感だ。

 けれど、その視線は真っ直ぐこちらを見ていた。

「エリアス殿下より話は聞いている」

 国王はゆっくり、庭園の方へ視線を向けた。


 鈴みたいな音が、雪解けの風へ混ざる中、

 ……ドォン。

 濁った音が混じっていた。

 国王の目が、僅かに細められた。

「――あれは、昔からあの音ではなかった」


 静寂が落ち、雪解け水の流れる音だけが、微かに響いていた。

 フローレンス姫がそっと目を伏せる。

「最初は、小さな違和感だったのです」

 柔らかな声。

「“ド”の子だけ、少し音を外すようになって」

「けれど最近は、夜毎に濁るようになりました」

 カイルが腕を組む。

「妖精達がおかしいって話だったな」

「ええ」

 フローレンス姫は小さく頷いた。

「輪菓子も、毎晩少しずつ欠けていて」

 

 三人の脳裏に、時計塔の光景がよぎる。

 減らないパン、歪みの時計草。

 そして--キキキキキッという甲高い鳴き声。


 「……ネズミか」

 

 ディオンが思わず呟く。

 ソラーナ国王の視線が、静かにこちらへ向いた。

「ほう、心当たりがあるようだな」

 リネが一歩前へ出る。

「セレノアでも似た現象が起きました」

「時間の巡りが歪み、“その先”だけが欠ける」

 国王の目が僅かに細められる。

 フローレンス姫は、不安そうにフクシア庭園を見つめた。

 リン……。

 ティン……。

 澄んだ鈴音。


 ……ドォン。

 また、一音だけ濁る。

 

カイルが小さく舌打ちした。

「気味悪ぃな」

 

 カイルが呟いた時、庭園の奥では、白銀の植え込みの陰で何かが動く。

 小さな影。

 透明な身体。

 キキキキキッ!!

 甲高い鳴き声が、雪解けの庭へ響いていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ