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見張り役

アイシャが部屋に入るのを確認してから、アレスはもと来た道を引き返した。

その途中で足を止めると、廊下の突き当りから2人の人影が現れる。

「自制というものが殿下にはないのでしょうか?」

「アイシャは婚約者なのだから、拒絶されなければ問題ない」

アレスの側近になって仕事はできるのだが、何かと口を出してくるロイナーはアイシャのこととなると容赦がない。だが、3年一緒にいる中で言い返せるだけの精神をアレスも身に着けてきた。

アイシャは婚約者であることに変わりはない。そのことをロイナーも指摘してこないし反対もしていない。今のところは。

ロイナーの隣には黙ってレイストが立っている。護衛騎士である彼は離れてずっとついてきてくれていたが、ロイナーも一緒に来てしまったことを黙認していた。こういうことになることを彼は予測していたのかわからないが。

「アイシャは記憶がないので状況を上手く把握できていないでしょう。そこにつけ込むのはどうかと思います」

そんなつもりはなかったが、ロイナーからすれがそう見えるのかもしれない。確かに頬にキスをして拒絶されなかったことでアレスもその気になってしまったことは事実だ。記憶がないアイシャだが、アレスに好感を持ってくれている。それが嬉しかった。

廊下の奥から音がしたのはロイナーがわざとしたことだろう。

「これからは気を付ける」

このままだとロイナーの愚痴が永遠と続きそうな気がして、アレスが折れることにした。王太子に対してここまで口出しできるのは彼だけかもしれないとも内心思ったが内緒にしておく。

「この話はここまでにしよう。アイシャが人の声に気が付いて出てきてしまうかもしれない」

少し離れた場所で話をしているが、静かな夜の廊下なので気付かれる可能性はあった。疲れているだろうからゆっくり休ませてあげたかった。

「わかりました。今後の行動に気を付けてください」

ロイナーから注意を受けることになって話は終わった。そのままロイナーは自室へと戻っていき、アレスはレイストを連れて部屋へと戻ることになった。

「だいぶお疲れのようですね」

静かに廊下を歩いていたのだが、すぐ後ろを歩くレイストがそんなことを言ってきた。

「そう見えるか?」

周りには疲れを見せないように振舞っていたが、長年一緒にいるレイストにはお見通しだったようだ。

城に戻って来てから溜まっていた書類の整理に、アイシャが無事に城の生活に馴染めるか気を使っていた。選んだ使用人たちがアイシャにどれだけの敬意を示しているのかも気になっていた。

幸い、誰もアイシャに対して見下すような者はいなかった。王家の目があることを知ったうえでそんな態度を取る人間はいないだろうが、選ばれた者たちはちゃんと教育を受けてきている者たちだ。女神の代理人を傷つけることがどんなことになるのか理解している。

余計な心配なのだろうが、3年前は側にいられなかった分、今回は必ずアイシャを守りたいという気持ちがアレスの中に強くあるのだ。

とはいえ、疲れていることを悟られたら、アイシャに心配されてしまいそうだ。今日はすぐにでも休むことにした。おそらく、ロイナーにも知られると、彼は今度アレス自身の管理ができていないと小言を言ってくるだろう。アイシャに対して厳しい指摘をしてくるが、アレスのことも気にかけてくれるのがロイナー=エリストンなのだ。その表現が小言だというだけだ。

それでも、アイシャが近くにいてくれることはアレスの活力になっている。

「今夜はゆっくり休むことにしよう」

明日からもアイシャがいてくれる。焦ることは何もない。

女神の代理人が女神からの祝福を受け取るかを判断する感謝祭まで3ヶ月を切った。それまでにアイシャが祝福を受け取ってもいいと、国が平和を取り戻してもいいと思えるように努力しなければいけない。アイシャとの仲を深めていくのはゆっくりでいいのだ。

自分のそう言いかけせるようにしながら、アレスは今夜は穏やかな気持ちで眠れそうだと思うのだった。


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