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アイシャの味方

「アイシャの身の回りの世話をする者たちになる」

アイシャはその後すぐに部屋に案内されたが、そこは3年前にも使っていた部屋だったらしい。だが、部屋を見ても何も思い出せなかった。ベッドや家具は変わりがないようで、ドレスや装飾品もそのままになっていた。いつアイシャが戻って来てもいいようにと処分されることなく置かれていたのだ。ただ、ドレスは流行があるので、3年前の物は使えない。新調することを説明された後、ロイナーが使用人の紹介をしてくれた。

アレスは謁見の間を出るとすぐに別行動になってしまった。彼には彼の仕事がある。ずっとエリストン領にいたため仕事が溜まっているということだった。そのため部屋への案内と使用人の紹介はロイナーがすることになったのだ。

「身の回りの世話をする侍女は主に3人になる。護衛騎士はディランが付くことになるが、彼がいないときに交代で付く騎士を2人紹介しておく」

侍女としておそろいのドレスを身にまとった女性が3人。アイシャとあまり年が変わらないように見えた。

「短い茶髪がアリン=ヘキサー。ヘキサー伯爵家の三女になる」

紹介されたアリンが会釈する。とてもきれいな姿勢に、しっかりと教育を受けていることが窺えた。少し吊り上がった目が冷たい印象を与えているようだが、瞳の奥がアイシャを優しく見守っているような気がした。

「隣がナナミ=モルドー。モルドー男爵家の長女だ」

茶髪をおさげにしたナナミが会釈をする。化粧でうっすらとなっているが、そばかすがあるせいで幼く見えた。

「もう1人がルルネ=サイファー。サイファー伯爵家の長女だ」

黒に近いが赤毛のルルネは、とても珍しい髪色をしている。黒い瞳がまっすぐにアイシャを見てから会釈をしてきた。

「アリンとナナミは今回アイシャの侍女として選ばれたが、ルルネは3年前にもアイシャの侍女をしていた経験がある」

「え?」

顔見知りだと聞かされて驚く。アイシャの侍女たちは女神の代理人であるアイシャのことを認めず虐げていたと聞いていたのに、ルルネだけは今回も選ばれた。

「彼女は3年前唯一アイシャを丁重に扱っていたことが証明されている。アイシャの味方だった侍女なら、問題ないと判断しての採用だ」

「3年前にも」

虐げていた者たちとは違い、ルルネはアイシャを庇ってくれていた。いろいろと嫌がらせをされていても女神の感謝祭までアイシャが城で過ごせていたのは、数少ない味方がいたからかもしれない。

ルルネの顔をもう一度見たが、彼女と会った記憶は蘇ってこなかった。それでも、不思議と親近感が湧いていた。

彼女は3年前のアイシャが城で過ごしていた時間を知っている。アレスは報告を受けた内容をアイシャに教えてくれたが、ルルネなら実際に目にしたことを教えてくれるだろう。

アイシャを守ろうとしてくれたなら、どんなひどいことをされていたのか、聞けばはっきりとしたことを伝えてくれることだろう。

「アイシャが3年前に関わっていた人間をそばに置きたくないというのなら、別の者を選びなおすこともできるよ」

ロイナーが気を使ってくれたが、アイシャとしてはルルネと話をしてみたかったのでこのまま侍女としていてほしかった。

「大丈夫。このまま、いてもらいましょう」

ルルネが明らかにほっとした顔をした。残りの2人もなぜか視線を合わせてから軽く息を吐きだしている。

「メイドはこの3人になるけど、こっちはディラン以外の護衛騎士を紹介する」

次に3人の侍女たちの横に立っていた騎士2人の紹介をしてくれることになった。

1人は茶色の長髪をうなじで束ねて、青い瞳がじっとアイシャを見ていた。もう1人は女性騎士で、長い金髪をまとめている。同じ青い瞳は優しそうにアイシャを見ていた。性別は違うが2人の目鼻立ちがよく似ているため血のつながりがあるように思えた。

「2人は双子で、男の方がルーク=ジレン。女の方がキーナ=ジレンだ。ルークの方が兄になるが、2人とも25歳だ」

3年前の護衛騎士はアイシャが何をされていても傍観していたらしい。そのため処罰を受けて現在行方不明ということだった。

この2人がどんな騎士なのかわからない。

「ジレン伯爵家は代々騎士一家になる。騎士としての精神を幼いころから叩き込まれている」

3年前にはアイシャの護衛に選ばれることはなかったし、関りを持つこともなかったらしい。ディランは剣の腕を買われたが、2人は騎士としての忠誠心を買われたようだった。

侍女も騎士もアレスが中心となって選んだことをアイシャは知らない。今度こそ城の中で穏やかに生活できるようにと配慮があった。

「何か問題があればすぐに僕か、殿下に言えばいい。すぐに新しい者を手配するから」

そんなことを堂々と侍女と騎士の前で言うからには、ロイナーはそれだけの権限を持っているようだ。

アレスの側近だということは知っていたが、権限まであるとは思っていなかった。

ただ、今のところ問題を起こしそうな人たちではないと思うので、アイシャが何かを言うことはないと思えた。

「みなさん。これからよろしくお願いします」

アイシャが挨拶をするとメイドたちは慌てたように会釈をして、双子の騎士は胸に手を当てた。

これで顔合わせは終了となった。ここからアイシャの新しい生活が始まることになる。


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