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異世界がピンチらしいので元大学生理学部が救ってみる。~化学で世界を救うなんて?!~  作者: タルト


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No.8自由に空を飛ぶ鳥になりたい

こんにちは。タルトです。

この作品に出合っていただいて、そして読もうと考えてくださってありがとうございます。

いい作品に出合えたと思ってもらえるよう頑張って書いたつもりです。楽しんでいってください。

 「だから!!!!!!僕は魔王の手先じゃない!!!善良な一般市民だぁああああああああ!!!!!」

 僕の魂の叫びが目の前の警官に届いていると良いな。




***




 時は遡る。これは僕が汚染の塊を使ってあれやこれやと実験をしていた時だ。

 「コンコンッ。」

 ノックが鳴る。

 うるさいなあ。今忙しいんだって。こんなに楽しい実験は初めてなのだから邪魔しないでほしい。というか、この町を救う実験なのだから、邪魔しないでほしい。

 まったく、ヒーローを邪魔するなんて。はあ、分かってないなあ。

 適当に考えながら無視をする。

 すると……。

 「コンコンコンッ!」

 ちょっと強めに鳴らされた。

 はあ。うるさいなあ。もう。というかノックの三回はトイレだろ。一般常識もないのか、まったく。いや、逆だっけ?まあどうでもいい。二回ノックがトイレなら初めのノックが該当する。どっちにしろ一般常識はないな。

 無視を決め込む。

 

 「ドンドンドンッ!!!」

 

 「うっるさいなあ!!もう!!忙しいんだから!!!」

 そう言って開けるとそこには顔なじみの警官が……!!!




***




 はい、回想終わり。なんで異世界で警官なんぞに二回も顔を合わせなければならんのだ。

 そこからなんやかんやでまた取調室に入らされ、そしてなぜか僕が魔王の手先だとあらぬ疑いをかけられてるって訳。

 そして僕の魂の叫びがあって、今に至る。


 「いやさ、君。君がね?怪しいことをしてるっていうタレコミがあったわけ。そしたらほら、調査しないわけにはいかないじゃない?」


 「何がですか。まったく。僕は善良な市民ですよ。確かに前回お世話になったときは悪かったですよ?森が燃える可能性があったんだから。でも今回は森で火も使ってない。ちゃんと引火しないようにしましたって。何なら火の後始末もしましたよ?何が問題なんですか!」


 「うーん。まあね。今回は火じゃなくてさ。」


 「何ですか!まったく。いいですよ調べてくださいよ!何も怪しいことなんて出てきませんよ!!!」


 「いやね?君、汚染されてる水を売ろうとしてたみたいじゃないか。」



 ……………………。



 大やらかし。どうしよう。しちゃったよ。水売ろうとしたよ。


 「しかもね?そこにいた人が聞いてたみたいなんだけど、浄化なんてしてないですよって言ったでしょ?そりゃあさ、ダメじゃん?ただでさえこの町は水にピリついてるんだからさ。」



……………………。



 言ったなあ。だって汚染されてるなんて知らなかったし。

 どうしよう。考えろ。考えろ。俺はこの世界の化学者だぞ。何か、何か突破口があるはず……!!


 「しかもさ、君の泊まっている宿屋に怪しげなものがあってさ、鑑定士に鑑定してもらったのよ、これ。そしたら《汚染の塊》って出てさ。」


 そこには僕の研究の結晶である白い結晶が入った瓶が掲げられていた……!!!



 「違うんです。」

 僕はそう言った。


 「どう違うんだい?どこからどう見ても怪しい人だよね?というか普通に口きいてもらってるだけありがたいと思うんだよ。普通はもう牢屋じゃないかな?」


 「説明させてください。」

 僕は目に涙を浮かべながら消え入りそうな声でそう言った。





***




 僕はできるだけわかりやすく、研究の過程と結果を言った。

 「なるほどね?じゃあ君は汚染された水を浄化しようとしたのね?でもなんで?別にこの町に思い出なんてないんでしょ?最近来たらしいし。だしさ、普通はこんなやり方思いつかないのよ。浄化魔法の代わりにその、なんだっけ?蒸留?なんて考えないはずなんだけど。」


 そうなのだ。僕に足りないことは理由なのだ。まあしいて言えば魔王への恨みだけど、直接何かをされたわけじゃない。あくまで人伝……いや、神伝に聞いただけだ。しかも神に言われてから魔王が許せなかったですー、なんてありえないしなあ。というか言ったらメーティスに怒られそう。同じ(てつ)は踏まない。僕はそういう人間だ。



 …………ん。理由ならあるじゃないか。大層な理由が。



 「僕を信じてくれた人がいました。魔王の手先に汚染された水で大打撃を受けたのに、僕を信じてくれた人がいました。僕の水をのんで、美味いじゃないかって。次売るときは言ってくれって。そう言ってくれた人がいました。」

 「僕はその人に安全な水を飲んでほしかった。」



 「……。そうか。信じていいんだな?」



 「はい。神に誓って。」



 「ふー。そうか。なら、信じてやる。嘘は言ってないと俺は思う。だが、そのまま見逃す、というわけにもいかない。お前が浄化魔法なしで浄化が出来るという話、まずはそれを試させろ。」

 「おい!俺が責任を持つ!お前は調書に問題ないとでも書いておけ!」

 と、目の前の警官は僕の後ろの椅子に座っているもう一人の警官にそう声をかけた。

 どうやら地球と一緒でこの世界の取り調べも、取り調べを行う人と、後ろで調書を書く人とでの二人体制らしい。まあ、僕は地球で取り調べを受けたことはないのですべてドラマやニュースでの知識になるのだが。


 「そうと決まれば、今から俺はお前の宿についていく。まだ時間はある、今から宿に戻って準備をすればその技は見れるのか?」


 「はい!すぐにでも見せられます。ですが可能ならその鑑定士という人をも来てくれるとうれしいです!」




***




 「――ッ!!!!こっこれは!!!間違いないです!毒と腐食の効果が消えてます!!!」


 「――ッ!!!!そうか。すまなかったな。」

 どうやら僕の疑いはもうそろそろ晴れそうである。




 取り調べを受けた後、僕と警官は宿に戻った。そこで準備を済ませて、(より具体的にいえば蒸留するための水筒と管、魔法札二種類を持って)いつもの実験場に来たのだった。

 そこで鑑定士に水が汚染されていることを確認してもらって、いつものように蒸留して、その後の水を鑑定してもらった。もちろんその水は汚染されていない。

 それで鑑定した後の会話が、上のやり取りである。




 「水を綺麗にする前後でエレメントの揺らぎもありませんでした!つまり、本当に浄化魔法を使っていません!」

 鑑定士はそう言った。

 エレメントの揺らぎ?何だろうそれ。そんなもの感じたことはないが。

 「エレメントの揺らぎって?」

 「あぁ。エレメントの揺らぎとは、魔法を使った後の空気の変化、みたいなものです。魔法を使った後はそれ独特の空気の乱れのようなものがあって、それを揺らぎというんです。」

 「ありがとうございます。学びになりました。」

 ふーん?ほぼ何も分からなかった。エレメントの揺らぎは空気の乱れ、ねえ?まあ多分魔法を使ったら周りの魔力?みたいなものが影響を受ける。みたいなことなのだろう。いや、知らんけど。

 まあ今度誰かが魔法を使うところをまじまじと見よう。鑑定士にできるなら鑑定スキルと持っている僕にもできるはずだ。


 「そうか。変な疑いをかけてすまんかったな。サトシさんよ。」

 警官が初めて、名前を呼んでくれた。うれしいものがある。今までは壁を感じたからな。

 「すごいですよ!これ!これを使えばわざわざ王都から術師が来なくて済む!これは!希望ですよ!」

 テンション上がってるなあ。鑑定士の人。まあ怪訝な扱いされるよりは幾分かましか。

 「これは!町の人に一刻も早く伝えるべきですよ!そして王都にも伝えて!やっとおいしい水が飲める!!!」


 「いや、ちょっと待ってください。それはまだ早いです。」

 僕は止めに入る。

 「……え?何でですか?こんな素晴らしい功績!伝えるべきです!!!!!」

 「まだダメなんですよ。まず第一に浄化魔法ほど広範囲に効きません。そして持続力もないです。王都から月に何度か来るんですよね?術師の人は。これの欠点は毎回飲むときに毎回熱さないといけないことです。それは明らかに浄化魔法に比べて手間です。そして第二に適切な方法を知っておかないとダメということです。蒸留はただの煮沸とは違って、沸点の違いと水蒸気の収集が分かっていないとダメです。そしてそれを皆に伝えて、理解をしてもらった上で、蒸留器を町の人全員分用意することは不可能です。そして第三に、まだ成分特定が出来てないです。それが出来ていない以上、まだ完璧じゃない。」

 「…………?つまり?」

 専門用語使いすぎたか?そんなことないと思うけどなあ。まああれか、理科という学びがない世界だろうから、当たり前か。あまり分かってなさそうだしな。

 ふーむ。これは適当な理由をつけて逃げるか。いきなり説明して理解をすることは無理だろう。

 「まあつまり、この装置を毎回作って浄化するよりは、術師で一気にしたほうが効率がいいって話です。」

 「……まあ、そういうことなら。」

 いまいち理解してないなあ。この人言いふらしそうだなあ。困るんだよなあ。僕は成分特定をしたいから時間取られたくないし、適当に真似られて浄化できてませんでした、結果病気になりました、なんて嫌だし。というか王都にバレちゃったらじゃあもう行かないのでそっちで何とかしてね、なんてことになりかねない。

 「おい。お前言うんじゃないぞ?ここまで考えて動く人なんだ。何かあるんだろ。分かってるか?いいか?言うなよ?」

 おっと、まさかの警官さんが守ってくれてる。あぁ、守られる側ってこんなにも幸せなんだなあ。言い方があのお約束みたいでなんか嫌だが。この世界にはさすがに押すなよと言われて押すのが正解!なんて常識はないはずだ。さすがにね、うん。

 「う、うん。わかったよ。お前の頼みだ。仕方ない。」

 コクコクと鑑定士は頷く。

 仕方ない、ねえ?お前そしたら言うつもりだったろ。危ない危ない。話の分かる警官さんでよかった。

 というか、さっき名前で呼んでくれたんだ。こっちも知りたい。

 「お二人の名前は?なんてお呼びすればいいですか?」

 「俺はジャス。よろしくな。」

 「エストだ。」

 どうやら警官のほうがジャス、鑑定士がエストらしい。

 「さて、じゃあ、サトシさんは問題なかったってことで進めておくから。君はその研究とやらに勤しんでくれ。」

 「行くぞ、エスト。」


 「はい!あ、サトシさん!また発見があったら教えてください!!!」

 そういって二人は離れていく。



 ふーー。なんかドッと疲れた。随分な出来事だった。話の分かる人で良かった。もし話を聞かずに牢屋に入れられていたらと思うとゾッとする。まあ、そうなっていてもおかしくない位怪しかったが。そもそも天涯孤独で今までの経歴がない人なんて普通にしてても怪しいからな。

 次から実験は気をつけよう。そう心に誓う。

 さて、そうしたら次は成分特定に入ろうか。

 化学の力でこの世界を救うんだ!!!



 あれ、そういえば成分特定の難しさはちっとも改善してなくね?


皆様が読んだ感想を教えてくださると嬉しいです。

ダメだしや、誤字脱字などでも、教えてくださいね。


皆様の感想は全て読ませて頂き、今後に活かしたいと思います。

ここまで読んでくださった皆さん本当にありがとうございました。

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