No.12福利厚生って素晴らしい!
こんにちは。タルトです。
この作品に出合っていただいて、そして読もうと考えてくださってありがとうございます。
いい作品に出合えたと思ってもらえるよう頑張って書いたつもりです。楽しんでいってください。
シアン化カリウム(青酸カリ)の特定が出来ました。ということで現在は警官を訪ねています。
いやあ、警官が来ることは大概緊張したが、こっちから訪ねるというのは気が楽だ。僕は地球でかの有名な安心安全の町''日本,,生まれだ。何度も落とし物を拾っては近くの交番に届けていた。つまりこちらから出向くことは慣れっこなのだ。
まあ、善良な市民であれば、国家権力を頼ったり、使ったりすることはあっても、お世話になることは少ないはずなので、大体の人は慣れっこではあるのだが。
とにかく、今は警官を訪ねています。もちろん、自分は魔王軍の手先なんです!なんてことを言いに来たわけではない。というか実際違うしな。
わざわざ善良な一般市民であるところの僕がここに足を運んだのは、汚染の原因とその対処法が分かったからだ。現在僕が頼れるのは国家権力である警察しかないので、そこに浄化の手伝いをしてもらおうというわけだ。
原因は特定したけど対処まではやってないじゃないかって?甘いねえ、うん。この前の紺青法とは、シアンを検出する方法でもあるし、シアンの無毒化をする方法でもあるのだ。
と、言うことで。
「たのもー、たのもー。」
うーん。呼び鈴やインターフォンがないのは随分不便だなあ。異世界の人はどうしているのだろう。明らかに日本よりは治安悪いはず。ならばドアを開けたら魔法が!!!みたいなこともあるんじゃないか?
日本だって、開けたら強盗が!みたいなことがあるぐらいだし……。ま、暇だったらインターフォンを作るか。
……出ないな。
はあ、全く。国家権力様だろ?年中無休で働けよ、全く。
徒労に終わり、やるせない気持ちを悪態でカバーする。
まあ、そうだなあ、また来るかな。うん。というか二回とも会いに来られただけだから会う方法が分からないんだよなあ。また来てもダメだったらいやなのだが。
「お、サトシさんよ。何してんだ?今日は交番休みだぞ?」
後ろから聞きなれた声がする。この声は何度もお世話になった警官のジャスさんじゃないか。
「お!ジャスさんじゃないか!休みって?」
いやいや、休みってなんだよ。交番って休んでいいんだ。この間に何か起こったらどうするのだ。日本では24時間勤務だろ?見習えよ。ローテーションだの3交代制だのでやればいいのに……。
いや、そうじゃない。交番ってなんだよ。めっちゃ日本式じゃん。
いや、だから違う。そうではないって。勤務形態とか、名称にツッコむな。今するべきことは一刻も早く成果を伝えることだろ。
「――そう。休み。警察は福利厚生が強い公務員さんだからな。平日は9時5時で休日は休みだ。」
ええ?なんか日本の公務員が歪曲されてねえか?今日日9時5時で休日休みの公務員なんてレアだろ。というかこの世界って休日なんかあるのか?聞いてみようか。
「休日っていつなんだ?」
「休日って言ったら週の初めと終わりだろ。1日目と7日目だよ。何言ってんだ?」
「週の初めと終わりってなんだよ。」
もしかして、日月火水木金土みたいなシステムがあって日を1、月を2……土を7としてるってことか?わかりやすいことこの上ないのだが……。
「1と7の週って言ったら……。まずほれ、一年って336日だろ?で、それを12で分けたら28になる。それが一月の日数。で、28を7で分けたものが週ってやつだろ?その週の一日目と7日目ってことだよ。今日はだから4の月の3の週の3日目だろ?」
「はあ……。」
ええ?なんかキモくね?なんで一年が336日なんだよ。いや、336って4×7×12なのでキモくはないのだが……。なんだかなあ。プラスで19日足して365日にしたり、プラス20日して366日にしたりすればいいのに……。いや、地球式だから疑問を持つのであって、何の事前知識もない時なら、一月が28日だったり31日だったりするカレンダーと一月が必ず28日のカレンダーだったら後者の方がきれいか。
絶対このシステム地球からの輸入だろ。
ってかそもそも地球の一年の概念って公転の話だろ?この星も回ってんのか?
週は地球から見た星の名前だし……。この星には太陽も月も火星もないだろ。いや、厳密に言えば太陽みたいな日中光る星はあるし、夜に空に輝く月らしいものはある。だけど、その名前は絶対に太陽や月じゃないだろ。
まあ、でも、分かりやすい。例えば日本での2026年6月1日だとすれば6月の第一週の一日目だが、日曜日ではなく、月曜日だ。(ちなみに週の初めが日曜か月曜かで議論があるが、僕は日曜派だ。)
しかし、この世界では6月1日であれば、6月の第一週の一日目で日曜日。だから何月の何日と言われたときに第何週なのか何曜日なのかが分かりやすい。日本ではそうはいかないからね。だって月の初めが水曜日だったりするのでね。
「まっまぁ。とりあえずはわかった。うん。慣れ親しんだシステムだよな!もちろん知ってたさ!」
「いや、そんなことはどうでもよくて、よく来てくれたジャスさん!僕やっと汚染が何かを特定したんだよ!!!」
「?!?!ええ!!!!すごいじゃないか!サトシさん!!!早速教えてくれ!!!」
「とりあえず宿にきてくれ!」
***
僕は嬉々としてついてくるジャスさんと一緒に宿に戻り、濃い青色に輝くガラス容器を前に説明をした。
「――というところから、これはシアン化カリウムという物質で間違いない!!!」
「…………。」
あれ……?なんで何も言わないのだろう。何か間違えたか……?出来るだけロジカルにしているはずなので、評価されてもいいはずなんだが。スタンディングオベーションしてもいいぐらいだ。
「……まあ、うん。理解できた、とは言わん。しかし、凄まじい熱量で解決しようとしてくれたことはわかる。ありがとう。これで解決なのだろう?よかった……。」
あぁ、違う。この世界では初めてのことばかりなのか。それは言葉を失うな。これは僕が足りなかったな。
警官とはこれで三回目のイベントだ。森の中で火を起こして怒られたのが一回目、汚染の塊で実験をして魔王軍の手先と疑われたのが二回目。そして三回目は僕の素晴らしい知識によって感動させることが出来た。
もう、この世界を恨むのはやめよう。いい言葉が日本にあるじゃないか、二度あることは三度ある、終わり良ければ総て良しと。うん。今思えばいい世界じゃないか。
魔王とか、警官とかそんな物騒なものに巻き込まれても、いいじゃないか。
「それで……。サトシさんよ、これを使えば汚染はなくなるんだよな?もう浄化魔法を使わなくてもいいんだよな?」
「…………あー。忘れてたあああああああああああ!!!!!!!!!!」
そう、残念ながらこれは実験ではない。求められることは物質特定ではなく、水をきれいにしてこの街を救うことだ。
さて、この街の近くにある川を、何リットルもある水を、どうやってきれいにしましょう?
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