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異世界がピンチらしいので元大学生理学部が救ってみる。~化学で世界を救うなんて?!~  作者: タルト


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No.9リアカーなきK村を探したい。

「実験とは甘えである。」


 僕がもし偉業を成し遂げて、格言を求められたらそう残すだろう。

 なぜこんな脈絡もないことを言ったのかにはちゃんと理由がある。

 それは、成分特定が難しすぎるということだ。

 え?この流れ前も見たって?ごめんごめん。いや、地球の科学法則が使えることを証明したり、取調室を受けたりして忘れていたけど結局成分特定は何も進んでなかったからさ。初志貫徹ってことで昔の気持ちを振り返っていただけさ。

 さて、そんなどうでもいいことは置いておいて、特定を進めよう。


 とりあえず条件をもう一度見直そう。

 汚染の塊は、水溶性、人体に有毒、溶けても無色透明、常圧常温で固体、固体は白色。といったところか。

 絞っていこうとするが、まだ無理な気がする。まあ、水に溶けても無色透明ならまず金属ではないかな。大体溶けて有色なのは金属イオンだし。いっそ銅イオンが原因であれば楽だったのになあ。

 と、言うか、大体特異的な反応があるからこそ、特定が進むというもの。例えば炎色反応然り、呈色反応然り。特定するにはもう少し特異的な特徴が必要だ。

 んーーー。水に溶けるからイオンにはなってるのか?それだったら炎色反応が使える?炎色反応は特異的なイオンであれば、火であぶったときに炎の色が変わるというあれだ。


 ちなみに、炎色反応はリアカー(Li:赤)無き(Na:黄)K村(K:紫)、勝とう(Ca:橙)とするがあかん(Sr:紅)。馬力(Ba:黄緑)、動力(Cu:青緑)で覚えることが出来る。そして結構勘違いされがちだが、金属単体で火にかけても炎色反応は示さない。実はすべてイオン化していないと示さないのだ。これは世の中の結構な人が勘違いしていると思う。(斯く言う僕も勘違いしていた。)そう、なので銅板をあぶっても意味ないぞ♪


 さて、ともかく。もしイオン化しているのであれば、電気泳動を使ってイオンを移動し、分離が出来れば……。いや無理か、そもそも、電気があるかが分からない。また電離した陽イオンが炎色反応を示さないイオンであったら無理だ。

 ただなあ。手がかりがない今、一気に7つのイオンを分類できるのは強いんだよなあ。電気ねえ……。

 待てよ?この世界は別に電池のようなものがなくても電気を扱えるのではないか?もし、もし魔法の中に雷属性があれば、それで事足りるはず……!

 ふむ。一つの考えとして持っておこう。

 さて、他に判別する方法は……。

 pH測定かなあ。pHの値がもし7より低ければ酸性塩(さんせいえん)、7よりも高ければ塩基性塩(えんきせいえん)(アルカリ性(えん))になる。そうなればまだ条件を加えれるが……。

 ただ、pH測定器もなければ指示薬もないしなあ。

 そうだなあ……。実はpHを測る方法の中で、指示薬を使わなくても判別できる方法があるのだ。まあ、推奨はされていないが。それは舐めてみるということだ。ざっくりと酸性なら酸っぱく、塩基性なら苦い。(よいこのみんなは絶対にマネしないでね!!!)まあ、本当に最終手段だな。

 まあ実は僕、酸をなめたことがあって、その時は…………。まあ、その話は置いておこう。

 まあ無理かな。


 そうだなあ。他には……。

 あぁ、融点と沸点を調べるか。うーむ。沸点は難しいが融点はヒントになる。

 例えば無機物であった場合、300度より上じゃないと大体溶けない。もちろん例外はたくさんある。ここで有機物なら200度前後で溶ける、というか焦げることもある。

 まあつまり超加熱した末、ドロッと溶けたら無機物。焦げだしたら有機物ってとこだ。

 ただなあ。温度計この世界にないんだよなあ。たぶん。まあそのために温度以外に焦げるっていう指標があるわけなんだが。


 あとは、電気を通す、かな。水は通常だと電気を通さない。しかし、電離してイオンになるものは水に溶かすとその水溶液は電気を通すようになる。

 (ぜひ皆さんお手元の塩と水でやってみてください♪)


 他には……。まあアルコールに溶けるか、かなあ。有機溶媒に溶けるとなれば、条件を絞ることはできるが……。そもそもその液体が有機溶媒かどうか判別に困るしなあ。

 んーーーーーーーーーーー。

 ああでもない、こうでもないと思考をしてしばらくして。

 「よし、決めた。とりあえず火にかけよう。」


 僕は長い思考の末、そう結論付けた。




***




 さて、随分長い間思考をしていたが、(皆さんついてきてますか?)とりあえずの方針は決まった。とりあえず熱してみよう。

 抽出した個体を熱するとわかることは先に述べたように二つある。一つ目が炎色反応の有無。もう一つが溶け方だ。

 特異的な炎色を示すか、または焦げてくれるとありがたいんだが……。




 ちなみに、炎色反応は白昼では観察できないので、今回は真夜中での実験になる。

 いやー怖いね。ここは異世界。アンデットやゴーストが居てもおかしくない。周りには常に気を配って実験をせねば。と、言うことなので今回はいつもの場所とは違い、町の入り口が見える場所にスタンバって行う。いつでも町に逃げ込めるように、だ。


 いつも通りに魔法札の上に薪をくべ、炎を起こす。いやあ、炎は良いね。なんかこう、あったかくなるね!心も、体も!


 さて、そんなことを考えながら白い物体を炎にかける。




 ふんふん。今のところ炎色反応はなし。

 そうであるならばここから長丁場が予想される。たぶんこの物質、融点が高い。だって、水の沸点(100度)より高いしな。(この世界が地球と同じなら。)どうしよう。1000度とかあったら。まあ多分直火でそこまで温度は上げれないと思うが。

 「さーて。ゆっくり見守るかあ。っと……??」

 いま、かすかに炎の底がピンクに見えた気がする。




 最悪の可能性が脳裏をよぎる。

 「これってもしかしてカリウムイオン(K⁺)じゃね?」

 何が最悪なのかって?カリウムイオン(K⁺)の炎色反応はぶっちぎりで見にくい。いや、ほんとに、数多く炎色反応をしてきた僕でも、必ず判別できるわけではない。

 しかも、ここは異世界。カリウムイオン(K⁺)の可能性が出てきたのにその裏づけをしにくい。様々な実験の上、カリウムイオン(K⁺)の可能性が高いけど確証は持てない。なんてことになりかねない。

 「クソッ……!!!」

 無理だ。一回あきらめよう。さらに炙ってみたところでそれが炎色反応を示しているのかただの炎の揺らぎかは判断しかねる。

 

 火の後始末をしながら思考を巡らせる。

 カリウムだったらどうする。他の方法なんて……。

 いいや、違う。もっとポジティブに考えよう。カリウムかもしれないと思えただけ前に進んだだろう。




 そう考えながら、岐路につく。

 さて、明日は何の実験をしようか。

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