第96話 ◇第1師団◇ 01/27
◇第1師団◇ 01/27
新しい朝が来た。
希望の朝になって欲しいと思う。
さて、今日は、自分たちの担当区域の住民を守るからここには来れないという第1師団の大場陸将が居る練馬駐屯地からスタートだ。
なんだか、気が重い。だって第1師団の練馬駐屯地の総意ならそのまま、放置で良いんだけど、どうも師団長の大場さんの独断みたいなんだよね。
そりゃそうか、練馬で籠城したって、良いことないってみんな理解はしている筈なんだよ。
だって、孤立無援だよ。突撃喇叭を鳴らした騎兵隊が応援に来てくれることなんてないんだから、どんどん尻すぼみで消耗して、最後は、露と消えるしかないんだから。
おまけに自衛隊の総本山である市ヶ谷と音信不通じゃあね。だからこそ面倒臭そうなんで、第1師団を最後にしたんだけど、嫌だなぁー
という事で、今日も獄卒10名と共に矢臼別演習場の十三桜さんの所にやってきました。
「十三桜さん。おはようございます。」
「早矢仕さん。休みなしだね、本当に申し訳ない。そしてありがとう。」
「いえいえ。乗り掛かった舟ですから。やれるだけのことはやりますよ。」
「それで、今日は練馬の大場さんの所だよね。」
「そうなんですけど。面倒臭いんで練馬は放置して良いですか?」
「いやいやいやいや。それは勘弁してもらえませんか。」
「やっぱり、そうなりますよね~。ハァ~」
「そんなこと言わないで、私たちにできる事なら何でもしますから。」
「(^▽^)/そうですか。何でもしてもらえるんですか。それなら」
「チョ、ちょっと、待ってぇー。何ですかその笑顔!何考えてるんですか!?」
「いやー、十三桜さんに何でも手伝ってもらえるって言って貰ったんで、やる気が出ましたよ。」
「悪い予感しかしないですね。失敗したぁー」
「いえね、どうやら大場師団長ってかなりの堅物で面倒臭い人みたいじゃないですかぁー。そこで、十三桜さんと兎山さんと馬頭さんの3人でこちらへの移転を納得させてもらいたいんですよぉ。
だって、そんな偉い人を納得させるまで、説得するのなんて面倒じゃないですかぁ。ね!!」
「それについては、私たち自衛隊側の問題ですからご一緒して説得しましょう。」
「ありがとうございます。」
「それでは、二人を呼びますので少々お待ちください。」
暫く待つと、兎山さんと馬頭さんが、それぞれ車でやって来たようで、指令室に入って来た。
「早矢仕さん。おはよう。」
「おはようございます。馬頭さん。兎山さんもおはようございます。」
「おはようございます。早矢仕さんのその笑顔の裏には、何があるんでしょうかね?」
「なにもありませんよ。十三桜さんからお話があるそうですよ。」
「「何ですか!?」とにかく来てくれと言うから来ましたが、一体何があるんですか。」
と兎山さん。
「大したことは無いんだ。」
「大したことじゃないんなら私は帰らせてもらって良いかな。」
「兎山さん。そんな、嫌がらずとも好いじゃないですか。今日は、これから早矢仕さんと一緒に3人で練馬の大場の所に行って、首根っこを押さえて、ここまで連れて来ようという話なんですよ。」
馬頭さん頭を抱えて一言。
「そりゃ思いっきり面倒臭い案件じゃないですか。」
そんなことじゃないかと思っていたけど、一応ね
「馬頭さん。大場さんってそんなに面倒臭い人なんですか?」
「面倒臭いも何もあいつは、頭の中身が化石化しているかと思うくらい、実直だが頑固一徹で、自分の意思を曲げないもんだから、第1の石部金吉金兜と言われるくらいなんですよ。
そんな彼が、”自分たちの担当区域の住民を守るから動かない”と言っているんであれば、それはもう梃子でも動かないと思いますよ。」
「そんな何ですか。でも、考えようによっては、住民を守れれば、良いって言う事ですよね。」
「それは、まあ、そういうことになるのか?な。」
「それなら、何とかなるんじゃないですか。だって、駐屯地に集まった住民丸ごと、ここまで安全に転移できるんですから。ね!!」
「そう言われて見れば、そうなのかも。十三桜さんどう思いますか。」
「そうだな。その線ならありかも知れん。それで攻めてみようかね。」
「それじゃ、早速、練馬駐屯地に[転移ゲート]繋いで良いですか。」
「頼みます。」
練馬駐屯地の辺りは、昔、バイクで良く通ったところなんで、[転移ゲート]は、川越街道沿いのディスカウントストアだったところにつないで、後は歩いていく事にした。
川越街道を歩いて正面ゲートまで進むと片側のゲートを閉鎖して、もう片側には、軽装甲機動車が並べてあった。
先頭を歩いていた十三桜さん、兎山さんと馬頭さんの3人を見て隊員たちが敬礼をしているが、後ろに居た獄卒たちが持っているMINIMIを見て、一瞬、小銃や車上のMINIMIを構えようとしたが、すかさず十三桜さんから声を掛けた。
「そのまま。危険はない。私は第2師団長の十三桜で、こちらが、第9師団長の兎山陸将と第6師団長の馬頭陸将だ、大場陸将か愛園陸将補に面会したいので、取り次いで欲しい。」
「かしこまりました。」
と無線機に話しかけ始めた。
暫くすると、1台の軽装甲機動車がやって来て、中から2名出て来た。
お互いに顔見知りなんだろう。手を上げて挨拶している。
「お三方がお揃いとは、一体どういう事でしょうか。」
「大場陸将。お久しぶりです。まずは敷地内に入れていただけませんか。」
「あなた方3人は、問題ないが、その後ろの方たちは、一体どういった方たちなのかな?おまけに、我々自衛隊のMINIMIを持って武装してるようだが。」
どうやら、この人が問題の大場という師団長みたいだ。融通が利かなそうな人だと一目でわかるってどうなんだろう。
十三桜さんガンバレ。
「勘違いしないで欲しいのだが、この方たちは、我々に味方して助けてもらっている民間組織の方たちだ。こちらに居るのが、代表の早矢刺さんだ。後ろの10名は、護衛だ。」
「民間組織だか何だか知らないが、武装しているような一般人を駐屯地内に入れることは、避難してきている住民たちの安全を守る為にも許可出来ん。お帰り頂こう。」
「大場さん。そんなことを言っている場合だと思っているのか。現状を正しく認識したらどうだ。」
「まあまあ。十三桜さん。認識できていない人に、そんなことを言っても理解できませんよ。
大場さん、初めまして、北海道の方からやってきました、早矢刺と申します。そして後ろの10名は、私の眷属である獄卒です。特殊な能力で皆さんを守ることが出来ます。
まずは、この眼鏡を皆さんで掛けてみていただけませんか。」
と[感知眼鏡]を20個ほど出して、手渡した。
「なんだ、この防護眼鏡は?」
「まあまあ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。少しだけ見えるモノが増えるだけですから。」
「なんだ。見えるモノが増えるというのは。」
「そんな事を言っていては、何も始まりませんから、まずは掛けてみてください。」
「なんだ、変わらないじゃないか。」
もう、本当に面倒くさいなこの人。
「いいですかー、そのまま道路の反対側の信号機の下をよーーーく見てみてください。何か見えませんか。」
「うーーん、なんだか黒いものがあるようだが。」
「眼鏡を外してみてください。」
「うむ、あれ、何でだ。おかしい。」
と[感知眼鏡]を掛けたり外したりして見比べ始めた。
「少し待っていてください。」
と言って腰のH&Kを抜いてセイフティを解除して”パーン”と一撃で仕留めたのは、吸血蝙蝠だった。
獄卒に行って、落ちた死体を持って来てもらって、見せることにした。
「大場さん。こいつらが昨年末に富士山噴火と一緒に地上に出て来た魑魅魍魎です。普通の人間では、見る事すらできません。その魑魅魍魎を見られるように改造したのが、お渡しした[感知眼鏡]です。裸眼と見比べてみてください。」
「本当だ、眼鏡をかけると見えるようになる。何故だ?」
「それは、こいつらが瘴気を纏っているから人間の目に見えないんです。こいつらが昨年末から人々を殺戮している人類の敵です。私はその魑魅魍魎から人間を始めとした地上を守ろうとして、避難所を開設したり奴らを殲滅する市民組織を運営しています。自衛隊の皆さんもお助けしたいだけなんです。」
「大場さん。私たちも早矢仕さんに助けてもらって、今は矢臼別演習場各駐屯地ごと避難しているんだ。この第1師団も一旦は、矢臼別演習場に避難しませんか。」
「この眼鏡があれば、住民たちを守ることが出来るのだろう。だったら、避難する必要はないではないか。」
もう!!本当に面倒くさい。
「あっ。因みに皆さんの持っている武器じゃあ、傷すら与えることは出来ませんよ。」
「それは、どういうことだ。さっきあなたは、その腰の拳銃で射殺したじゃないか。」
「この中に入っている銃弾には、特殊な加工がしてあるから倒せただけです。皆さんの持っている銃弾では、傷付けることも出来ません。」
丁度、先ほどの銃撃を聞いて悪魔犬が、環八から曲がってやって来たので、試してもらうことにしよう。
「大場さん。そこに黒い犬みたいな奴が見えますか。試しに撃ってみてください。」
「そんな。犬を撃つことなんてできるわけがないだろう。」
もう!!本当に面倒くさい。
「良いですかぁー。眼鏡を外すと見えないのは、魑魅魍魎です。放置すると殺されますから、さっさと撃ってください。」
パン。パッパパン。ダダダダダダ。と拳銃、小銃、機関銃で銃撃するが、全く傷つく様子も無くこちらに向かってくる。
仕方がないので、ホルスターからH&Kを引き抜いて、パン、パン、パンと3連射して仕留めて見せた。
「本当に銃撃しても傷すらつけられなかった。一体どういうことだ。」
「その辺は、気にしても始まらないんで、通常弾では有効な攻撃が出来ないと認識していただくだけで結構です。
で、どうします。避難しますか?」
周りの隊員たちを見てみると、先ほどの銃撃が全く効果なかったのが、余程ショックだったのか、呆然としてしまっている。
パンパンと手を叩いて注目させる。
「皆さんの撃った銃弾では、効果がありませんでしたが、私たちには皆さんの銃弾などが、魑魅魍魎を打ち倒す効果を付与することが出来ますから安心してください。その辺について少し中で、コーヒーでも飲みながらゆっくりとお話ししませんか。大場さん。」
「そうだな。皆さんを中にお通ししてくれ。相薗さん会議室の準備をお願いします。」
「了解しました。」
と近くにあった自転車で走り去っていった。
自転車って微妙、
「それでは、みなさんを師団本部にご案内します。」
「その前に、警備して居る隊員さん達の弾薬に効果の付与をしても良いですか?」
「是非是非。お願いします。」
隊員たちと軽装甲機動車に装備されているMINIMIの弾薬に【属性付与】を行いながら隊員に説明する。
「裸眼で見えないのは、全て敵ですから近づく前に殲滅してください。死体は、奴らの体の中には、集めておくと瘴気の影響を受けた人を回復する材料になる瘴石というものが、腎臓辺りにありますから、それを集めてから、燃やしてください。燃やさないで放置すると、ゾンビ化することがあるんで、焼却してしまう事をお勧めします。
瘴石を抜いていない死体の近くで、瘴石化する前の瘴気袋が破壊されると死体の瘴石に瘴気が取り込まれてゾンビ化することがありますから、注意してください。」
と言ながら、先ほどの吸血蝙蝠の死体を手渡すと、そのまま渡した隊員が動かなくなった。
「大丈夫ですよ。そいつの瘴石は、私の隊員が取り出し済みですから、燃やしてしまえば問題ありません。」
と話していると馬頭さんから
「あんまり隊員たちを揶揄わんでくださいよ。」
だって、面倒くさい人の相手で疲れちゃったんだもん。これくらいの息抜きさせてくださいよ。
と皆で、師団本部に向かって歩き始めたのだった。
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