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鬼神王覚醒  作者: 森豆太郎
92/109

第92話 ◇そんな奴もいるよね◇ 01/23

◇そんな奴もいるよね◇ 01/23


 弘前駐屯地正門ゲートにやって来たが、隊員たちが、かなりピリついている。


 「私は、早矢刺と申しまして兎山師団長から話を通していただいているはずなんですが、どなたか責任者の方はおられますか。」


 「私が、弘前駐屯地司令で1等陸佐の矢外(やがい) 彰浩(あきひろ)です。

 先ほど兎山師団長から矢臼別演習場への移転命令を受領しました。 が、どういう事なんですか?」


 「それは良かった。青森駐屯地の皆さんは、既に矢臼別演習場への移動が完了しましたので、次はこの弘前駐屯地の皆さんの番です。」


 「そんなことより、あなたの後ろに居る緑色の小さな人たちは、何なんですか?」


 「この人たちは、私の眷属で、皆さんの手助けをするために連れてきました。」


 「眷属?とは何なんですか。」


 「私の一族としてつながる者たちです。」


 と話しているうちに【瘴気感知】に反応が、”ピッ”と現れてかなりの速度でこちらに接近している。


 「あのーすみませんが、このままのんびり話しているわけにもいかないので、中に入れて貰えませんかね。話はそれからという事で。」


 「あなた達、明らかに怪しいんですよ。そんな人たちを兎山師団長から無線を聞いたとしても安易に駐屯地内に立ち入らせることは出来ませんので、このまま聞き取りを続けます。」


 この人、かなり頭が固いというか、困りましたね。

 この反応は、例によって悪魔犬(ヘルハウンド)らしい。

 獄卒たちに指示を出す。


 「前衛3人は、防御態勢を取り射線に入り次第、殲滅。」


 というと、3人がMINIMI機関銃を中学校側の道路に向けて射撃姿勢をとって銃弾を薬室に送り込んだ。


 それを見て96式装輪装甲車の隊員が、我々に向けて機関銃を構えるという一瞬でカオスな現場となってしまった。


 別に駐屯地に向けて構えているわけじゃないのになんで、こうなるかな。


 万が一に備えて、自衛隊員には【思念伝達】で、”動くな”と強制を掛けておいた。


 やって来たのは、悪魔犬が1匹だったが、姿が見えた途端に獄卒たちの銃弾を浴びてミンチになり果てた。


 「殲滅ご苦労だった。」


 と獄卒たちに声を掛けてから、隊員たちに話しかけ【思念伝達】を解くと。


 「あなた方は、こんな市街地で、5.56mmのMINIMIを発砲するとは、何を考えているんだ。」


 そう言えば、この隊員たちには何も見えないんだった。

 [感知眼鏡]を渡そうと近寄ろうとしたら


 「止まれ!!。それ以上近づくんじゃない。」


 「それは困りましたね。この状況を確認していただくために、この眼鏡をお渡ししたいだけなんですが、だったらどなたかが、取りに来ていただけませんか。」


 と答えると、車両の間から隊員が、1名小銃を構えながら近づいてきたので、[感知眼鏡]を10個ほど【無限蔵】から取り出して手渡した。

 隊員が持ち帰った[感知眼鏡]を矢外とかいうのが、様々な角度から疑いの目で見ている。


 「さっさと眼鏡を掛けて道路を見てみたらどうですか。」


 と言ってやると、毎度おなじみの反応が返って来た。


 「なんだ!あの黒いものは。」


 「あれは、一番弱い悪魔犬という主に偵察要員の魑魅魍魎です。普通の人には見えませんし、普通の武器では倒すことも出来ません。」


 といつも通りの説明をするんだが、どうもこの矢外と言う人、頭が固いし疑り深い性格みたいで、未だに眼鏡を掛けたり外したりしているよ。


 「とりあえず、正面ゲートに居る隊員さんが持っている弾薬に奴らを殺せる付与できますが、どうしますか?」


 と聞いてみても、不要だという。


 このままでは、無駄に時間が過ぎるだけなので、兎山さんを連れてくることにして、幼稚園の方に向かって歩き始めた。


 「おい、どこに行く。戻ってこい。」


 こんなところで無駄に時間を使ってられないのにまったくもって、使えない。


 「うるさい。お前が役に立たないから兎山師団長を呼んでくるんだ。黙って見ていろ。」


 と怒鳴り返してそのまま幼稚園の方に向かって、見えなくなったのを確認してから矢臼別演習場へ【瞬間移動】した。


 兎山さんを探し出して状況を説明して同行してもらうことになったので、さっさと【鬼動】で戻ることにして、矢外とかいう1等陸佐の対応をお願いした。


 「矢外1等陸佐。何故、私が指示した通りに出来ないんだ。」


 ほうら、怒られてやんの。


 「兎山師団長に敬礼!!」


 「矢外君そんなことは良いから、何で私の指示に従わないんだ。」


 「そ、それは、こいつらが怪しい行動をとるからであります。」


 ムカ!!


 「ほう、私がいつどんな怪しい行動をしたんですかね。」


 「いきなり、発砲したじゃないか。」


 「それは、そこで死んでいる悪魔犬を掃討するための銃撃だったんでしょ。早矢仕さん。」


 「そうですね。そのように説明もして[感知眼鏡]も渡して確認するよう説明したんですが、理解できなかったようです。」 


 「だそうだが、何かあるかね。」


 「そんな説明は、聞いていない。」


 兎山さんは、[感知眼鏡]を掛けているんで、この状況を理解している。


 「矢外1等陸佐を拘束せよ。」


 と発令されると、隊員たちが矢外をあっという間に拘束すると質問が飛んできた。


 「あのーすみませんが、この黒い靄みたいなものに触れても大丈夫なんでしょうか?」


 そうなんです。この矢外というひと瘴気人間だったんです。


 「大丈夫ですよ。その黒い靄みたいなものは、周囲に対して悪意を持っていると体からにじみ出てしまう瘴気というものですが、短時間であれば何の問題もありません。


 よく言うでしょう。”朱に交われば、赤くなる”って。

 その瘴気に長期間触れていると影響を受けて周囲に悪意を向けるようになるんですよ。」


 「えっ!!私たちは大丈夫なんでしょうか。」


 「大丈夫ですよ。お互いの姿を見ても普通に見えてますよね。安心してください。」


 「早矢仕さん。この眼鏡は本当にすごいものだね。

 実は矢外1等陸佐については、ハラスメント等の申告が出ていて、本当だったら昨年末に査問会が開かれるはずだったんだが、富士山噴火とその後の被害対応などをしているうちに、孤立してしまいそのままになっていたんだ。本当に申し訳なかった。」


 「いえいえ、御足労頂いただけで十分です。

 それで、この後はどうしたら良いですか。」


 「第9後方支援連隊長の神太麻(こだま)1等陸佐を呼んでくれ。とその前に中に入ろう。そして、ここに居る部下たちの銃弾に例の奴を頼む。」


 「りょーかいです。」


 という事で、駐屯地に入るついでに、正門ゲートに居る隊員たちと装甲車の弾薬に【属性付与】を掛けた。


 「しばらく待つと隊員が1名走って来た。」


 「神太麻1等陸佐、お呼びによりまいりました。」


 「悪いが、これから弘前駐屯地の指揮を任せるので、よろしく頼む。」


 「矢外1等陸佐は、どうしたのでしょうか?」


 「彼は、規律違反が判明したので拘束し監房に入れた。

 次は、駐屯地内の掃討ですね。神太麻1等陸佐フル装備で隊員を50名、参集させるように。」


 「あっ、すみません。兎山さん。ここは、45名でお願いします。」


 「了解した。45名だそうだ。」


 「了解しました。」


 「兎山さん。今後の事もあるんで、眷属を手配してくるんで、少し待っててもらえますか。」


 「わかった。気を付けて。」


 「ありがとうございます。」


 と断りを入れてから札幌避難所の久久能さんの所に【瞬間移動】して久久能さんを探し出した。


 「久久能さん。悪いんだがもう一人武装した獄卒(ホブゴブリン)を借してもらえますか。」


 「わかりました。一応予備でもう5人準備してましたけど、一人だけで大丈夫ですか?」


 「うーーーん。準備してもらっていたなら5人お借りしても良いですか。」


 流石は久久能さんだ。本当に助かる。

 目の前に拳銃H&K USP9と5.56mm機関銃 MINIMIで武装した5人の緑獄卒が並んだので、


 「それでは転移するので、身体の接触を保て。」


 と獄卒5人を連れて弘前駐屯地に【鬼動】で戻ってきた。


 兎山さんは、経験済みなので普通にしているが、周囲に居た隊員たちは”ギョッ!!”としているのが分かった。


 獄卒を補充するなら50人で良かったかと思ったが、このままの45人9部隊で終わらせることにした。


 「神太麻1等陸佐さん。用意していただいた部下の方に、私の配下を貸し出して同行する自衛隊員たちの保護と魑魅魍魎の発見を手伝いますので、見つかった魑魅魍魎を【属性付与】した武器で殲滅していただきます。」


 と説明してから集まった隊員に説明を始めた。


 「皆さんご苦労様です。今回、避難をお手伝いすることになりました、早矢仕と申します。


 記憶力の良い方は、覚えていらっしゃると思いますが、クリスマスイブに皆さんに向けて注意喚起の声を届けたのは、私です。


 今回は、この弘前駐屯地を避難させることになりましたので、集まっていただいた皆さんは、5名ずつに分かれていただき、私の配下でここに居る眷属9名の指示に従って9部隊に分かれて行動していただくことになります。


 これには、ここにおられる第9師団長兎山陸将や弘前駐屯地司令の神太麻1等陸佐さんの許可を頂いております。


 作戦内容は、この駐屯地内に入り込んだ、魑魅魍魎の発見と殲滅です。

 そのために、これから敵である魑魅魍魎を見ることが出来る[感知眼鏡]を私の眷属が配りますので、まずは眼鏡を掛けてください。」


 と言って【無限蔵】から出した[感知眼鏡]を5個ずつ獄卒に渡して、それぞれの列で配らせている間に、隊員たちの間を回って弾薬や銃剣に属性を付与していった。


 「皆さんが持っている弾薬や銃剣には、奴らを倒せるように【属性付与】を行いました。


 皆さんと共に行動する獄卒は、魑魅魍魎の発見と皆さんを守るための結界を張って補助しますので、駐屯地内を巡回して奴らを殲滅してください。

 よろしくお願いします。」


 と言うと隊員たちが、駐屯地内に散っていった。


 俺の【瘴気感知】には、13の反応があったので、ここでもそれぞれが、良い経験となるだろう。


 この間を利用して、兎山さんには、行き違いが無いようにもう一度、秋田駐屯地司令、岩手駐屯地司令、八戸駐屯地司令に徹底をお願いした。


 暫くすると各所から激しい銃撃の音がし始めたので、一般人たちが司令部前に集まって騒ぎ始めた。


 「皆さーん。初めまして。私は北海道の方からやってきました、早矢仕と申しまーす。

 今日は、皆さんを北海道の自衛隊が集結している矢臼別という所に安全に避難していただくためにやってきました。

 ただいま、自衛隊員の皆さんにお願いして、駐屯地内に入り込んで人間を殺しまわっていた敵を掃討してもらっているので、銃声がしていますが、皆さんに危害が加わることはありませんのでご安心くださーい。」


 と話していると俺の【瘴気感知】から魑魅魍魎の気配がすべて消えた。


 「それでは、掃討が終わったようなので、話の続きを話します。


 どうしてもこの地に残りたいという方は、無理強いしませんが、この弘前駐屯地は施設毎、矢臼別に移転しますから駐屯地から外に出てください。その場合、命の保証はありません。


 矢臼別に行くという方は、特に何もしていただかなくて大丈夫でーす。」


 いつものようにザワ、ザワッ、ザワ、


 「こごさは、御先祖やかがの墓があるはんで、そう簡単さ逃げるわげにはいがね。どうすたっきゃいど思いますか。」


 「お墓を守りたいという事でよろしいですか」


 「そうだ。ここに残りたいけど、本当に命の危険があるんですか。」


 「この駐屯地の中は、先ほど隊員さん達が掃討してくれたので安全になりましたが、外に出たら10分と経たずに殺されるでしょう。


 地上から敵を一掃したら戻ってこれますから、避難は、一時的なものと考えてください。」


 「そいだば一緒についで行ぐごどにするべ。」


 その他にも食事がどうとか、荷物がどうとか、子供がどうとか、と話しているうちに基地内の掃討が終わった隊員たちが戻って来て、神太麻1等陸佐に報告した。


 「駐屯地内の掃討、終了です。この眼鏡と銃弾があれば、奴らに対抗できそうです。」


 と報告している隊員たちから獄卒たちが離れて、俺の元に集まり報告が始まった。


 「報告します。敵は悪魔犬(ヘルハウンド)10頭と吸血蝙蝠(きゅうけつこうもり)が3匹居ましたが、全て殲滅しました。」


 「ご苦労だった。」


 「駐屯地内の掃除が終わったので、そろそろ矢臼別に移動しますが、よろしいですか。」


 と兎山さんに確認すると頭が縦に振られたので、


 「それでは、皆さんを北海道は矢臼別演習場へご案内しま~す。」


 と言って弘前駐屯地一帯を【鬼動】で矢臼別演習場へ転移させた。





 「はい、到着でーす。兎山さん。後のことはお願いします。残りの駐屯地に行ってきますが、塙田さん、鞍月さん、新宿さんは、このままここに残って転移してくる各駐屯地のフォローをして、【属性付与】していない弾薬等は、1カ所に集めて、保管してある【属性付与】済みの弾薬と交換する手配をしてください。ノーマルな弾薬は、いつものように後で回収します。


 私との連絡は、それぞれに獄卒を一人付けますので、何かあったら彼らを通じて私に連絡してください。」


 「了解です。」


 「それでは、獄卒11名は戦闘準備。次の秋田駐屯地司令に[転移ゲート]を繋げます。」


 と弘前駐屯地正門前のホームセンター駐車場に12人で出て【瘴気感知】を使ってみたが、目の前に悪魔犬が居たので、条件反射で大包平を抜くと首ちょんぱしてから血振りした大包平を納刀して、正面ゲートを見ると96式装輪装甲車から上半身を出していた隊員が、”ギョッ!!”とした顔でこちらを見ていたので、笑顔で大きく手を振ってみた。


 そのまま、96式装輪装甲車で封鎖してある正面ゲートに向かって歩いていくと


 「誰だ。」


 と誰何する声が拡声器から聞こえて来たのだった。

この小説を見つけ出して読んでいただけた皆様、ありがとうございます。

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