六十五話目
前回の話を改稿して、普段通りの文字数にしてあるので呼んでない方はそちらからお読みください。
「チヒロ君はどこに賭けるの?」
次のルーレットに行くと、ジェシカがそう聞いてきた。
「あのな、次も当たると思わないほうがいいぞ。」
「そう言うものの、なんだかんだで当てるくせに。」
「今回は0だ。……もう当てたくない。」
「じゃあ黒金貨一枚、0に賭けるわ。」
言葉とは難しいもので、俺は賭ける金額が0だと言ったのだが、ジェシカはルーレットが0と受け取ってしまった。
周りの目がジェシカに向く中で、ボールは黒の4へと落ちた。
茫然としているジェシカに、
「だから当たると思わないほうがいいって言ったんだ。……お前につられてここに来たが、本来は情報収集に来たんだ。聞いて回るぞ。」
「……ここで勝ちに勝って、経営者とかの富裕層から話を聞いたほうがいいと思うわ。」
「このカジノに来てる時点で、相当な富裕層ばかりが周りにいると思うんだが。……分かった。分かったからそう睨むな。」
ジェシカには一応案内役として来てもらってる訳だし、冒険者らしく報酬としての金でも稼がせてもらおう。
「それじゃ、赤の27に掛けさせてもらおう。黒金貨360枚だ。」
「……え?」
丁度賭けられるようになったので、賭けさせてもらった。バケツ一杯に入った黒金貨を。
ジェシカに引かれた気がするが、今更だ。
「馬鹿だ……馬鹿がいる……」「なんであんな金額を持っているんだ……?」等々、心情を吐露してしまっている他の客が俺を見る。
そのまま誰も賭けない。どうやら俺の結果が気になるようだ。
ディーラーは手の震えが抑えられないまま、ボールを転がした。開始点は、黒の35。
ボールは一周、二周、三周と難無く転がる。白い石を磨き上げたそのボールは、周りの目を反射しながら転がっていく。
転がるスピードは遅くなり、ボールは赤の27に入った。
その結果に、ディーラーの絶叫が、周りの客の絶叫が、そして何よりファミレの絶叫が、カジノ中に響いた。
本来上がる筈のない絶叫が上がったことで、警備員が一斉にこのルーレット台を囲んだ。20人はいるがどこに立ってたんだ……?
「何事だ!?」
「見ての通り、賭けが当たっただけだ。それ以上でも――
ここまで言ったところで、ディーラーが俺の言葉を遮った。
「こいつが!卑怯な手を使ってルーレットの目を当てたんだ!」
ディーラーが俺のことを指さし、180センチくらいある警備員が、俺に詰め寄る。
「……この子供がか?」
「その子供の隣の!そこの――――」
警備員は俺を疑問視すると、ディーラーが一瞬で主張を変えようとする。
……流石に見過ごせないな、これは。
「あ?……誰だ?俺じゃなくか?」
「ひぃ!?」
魔力を放出しながらディーラーに問いかける。数十万とかその辺まではいかないが、力むと魔力が漏れ出るようになったので威圧しやすい。
「まぁ、俺が卑怯な手を使ったか警備員さんにも見てもらおうじゃないか。なぁ?ディーラーさん、俺が卑怯なことをしたと言うなら、次にルーレットを回す時に教えてくれ。警備員さんもそれでいいよな?」
「あ、あぁ。」
周りの客がいつの間にかいなくなったルーレットで、俺とディーラーを警備員が数人で取り囲む形で始めることになった。
「俺は今から目を瞑る。出目が決まるまで目を瞑るから、ボールを転がしたら言ってくれ。」
見ようと思えば【神眼】で見えるが、別にそんなことをする必要はないだろう。
「分かった。さぁ、回せ。」
「は……はい。」
警備員が急かすと、ディーラーの声が震えている。緊張しているのか、後悔しているのかなんなのかは知らないが、ほとんどが自業自得で済むことばかりだろう。
「回したぞ。」
「……赤の27だ。」
「分かった。」
コロコロと転がる音、ディーラーの荒い呼吸が聞こえる。
「……目を開けていい。……出目は、赤の27だ。」
「さて、俺が卑怯な真似をしたと思うか?」
「……信じられないが……本当に純粋な運なんだろう。」
他の警備員も、渋々というか流されているという感じではあるが、納得してくれた。
だがまだディーラーは諦めない。
「そんな筈無い!!こいつがイカサマをしたんだ!!じゃないと賭けるはず無いだろ!!こんなバカげた額!!」
ディーラーが顔を真っ赤にして叫びながら、黒金貨の入ったバケツを指さす。
「黒金貨360枚が36倍になるだけだ。このカジノにそれくらいはあるだろ。ダメだな。……オーナーはいるか?」
「いるにはいるが……――――
「構いませんよ。」
すると警備員がサッと避け、先にはルーレットのディーラーがいた。
「……オーナー……なのか?」
「ええ。」
「まぁ、一ディーラーにしてはできすぎているとは思ったんだが、まさかな。オーナーが入口に一番近い場所にいるってあり得ないだろ。」
「抜き打ちでやるんですよ。どんな客がくるのか、ディーラーはちゃんとしているのか、とか。」
「抜き打ちである意味が、あるとは思わないがな。本題に入りたいんだが、いいか?」
「えぇ、どうやら配当が本題ではなさそうですしね。」
そう不敵に笑うと、オーナーは奥に歩いて行った。
「ジェシカ、行くぞ。」
「え?お金は?」
「………………先に行く。」
遅れてすみません……。




