六十四話目
冗談でカジノのことを言ったのだが、ここアーシャリエではカジノが盛んに行われていて、中規模な酒場に入ってみると、ルーレットだけだがカジノになっているスペースがあった。
チップではなく、直接銀貨や金貨を賭けるらしい。
俺はルーレットにとりあえず、金貨20枚を賭けた。ディーラーや他の数人の客に憐憫の目で見られ、ジェシカにも「まずは銀貨からでしょ……」と呆れられた。
カジノのカの字も知らない日本人の俺からしてみれば、たまりにたまった王金貨や金貨を投げ捨てる場所には丁度いいと思ったのだ。
俺が賭けたのは黒の20の一点。
「チヒロ君はカジノに来たことが無いから説明するけど、そこ一点に賭ける場合は配当が36倍になるわ。」
「成程。」
正直外れてくれて構わないし、むしろ外れて欲しい。
だが、ボールが転がりが転がりに転がって落ちた結果は黒の20。大当たりだった。
「……デハミッシュ王国の金貨か。……シャィオシー王国の金貨で7200枚になるがいいか?」
「…………ああ、構わない。」
他の客が唖然とし、声も上げずに驚いている中、ディーラーは一瞬硬直したものの動いてくれた。
まさか当たるとは……とかここに金貨7200枚もあるのか……とか色々な思いが湧きだした。
了承すると、ディーラーがルーレットの下から、重そうに麻袋を1つ取り出した。
「この中には確か、5000枚はあったはずなんだがな……。悪いが、5000枚で勘弁してくれないか?」
「…………全額がここで受け取れないなら、他の所でここの分ごと儲かるだけだ。ここには用はない、他のカジノに行かせてもらおう。」
「……悪いな。」
後惜しそうに麻袋を見るジェシカを置いて、この酒場を出た。
よく考えればステータスの欄で、運もerror表示喰らってたからな…。そりゃ当たる訳だ。
「ねぇチヒロ君、本当に良かったの?」
「別にいい。あの酒場じゃ碌な情報も聞けないだろ。」
「そういうことじゃないんだけど……。」
「別に、俺は金には困って無いぞ。」
俺はそう言いながら、王金貨をアイテムボックスから取り出して見せる。
「これって……王金貨!?」
「道の真ん中でそんなことを言わないでほしいんだが……。」
「チヒロ君、一番大きいカジノに行きましょう!賞金は山分けよ!」
アーシャリエの中心部と思われる場所にある大通りに向かって、ジェシカは走り出した。
金に汚いエルフってのは、俺の中のエルフ観が崩れるから辞めて欲しいんだが……。
エルフの価値観が人間に近いものだから、イメージ内だとよくある迫害が起きないんだろうなと割り切って、ジェシカの後を追った。
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「ここならいくら賭けても大丈夫そうね。」
「王金貨10枚も賭ければ赤字になりそうだがな。」
大通りには、冒険者ギルドよりも大きいカジノがあった。運営元が貴族か大商会のようで、出入り口には警備員が立っている。
「ここのカジノは金貨からしか賭けられないが、問題ないか?」
「ああ、問題ない。」
入ろうとしたら止められたので、王金貨をちらつかせた。
「おぉ、久々に見た。これは失礼。それで……連れの方は?」
「もちろん問題ないわ。チヒロ君にたかるから。」
「はぁ……受け取れ。」
ジェシカは笑顔で言い切ったので、王金貨を10枚トスしてやった。
「えっ!?わわっ!いきなりやめてよ!」
「男前だな。」
「これから稼ぐんでな。10枚くらいどうってことない。」
地面に落ちた王金貨を集めるジェシカを尻目に、先にカジノに入った。
カジノの中には、ルーレットはもちろん、トランプにダイス、シンプルにくじ引きなんてのもあった。
「さてチヒロ君、何にする?」
「一番近いし、ルーレットだな。」
「2人しかいないし丁度よさそうね。」
入って左手すぐに、ルーレットがあった。
ジェシカは俺より先に賭けたいらしく、小走りでルーレットに向かった。賭けたのは黒。王金貨1枚を賭けたようだ。
「俺は……赤の23にするか。」
俺は赤の23に、王金貨10枚を賭ける。
ディーラーの動きが一瞬止まるが、ボールは止まらない。一周、二周、三周と回るにつれてスピードが落ちる。
そして、ボールは落ちた。赤の23に。
「ジェシカ、一点賭けの場合に配当は何倍だったっけか。」
「36倍になります。」
「そうか……となると、王金貨360枚か?」
「シャィオシー王国の黒金貨360枚になりますが、よろしいですか?」
「ああ、構わない。」
ジェシカよりも先に、ディーラーが応対してくれた。このディーラー凄いな。一切の動揺が見当たらない。……ん?一見男かと思ったが、男装なんだな。どうでもいいが。
ディーラーは、バケツに黒金貨360枚を入れて渡してくれた。かなり重い筈だが、一切力んでない。やっぱりこのディーラー凄いな。
このディーラーが凄いのか、このカジノのディーラーの接客がこのレベルなのか、気になったので他のルーレットに行くことにした。
お待たせしました。




