六十話目
「あの話合いに俺の立会必要だったか?国の上層部だけで話し合いをすればいいと思うんだが。」
「デハミッシュ王国の勝利の決定打になったのは、明らかにチヒロさんでしたからね。しょうがありませんよ。」
俺とアルメリアは、わざわざ馬車でフェルケス領からザッドの街へと戻っている。
戦争が終わった翌日から、戦勝国であるデハミッシュ王国のフェルケス領にて講和会議が開かれた。
シャィオシー王国は、敗戦したこと、戦争を吹っ掛けてきたことを理由に、現国王ドルトス・グレイ・シャィオシーは退位し新たに、ダリエス・グレイ・シャィオシー第一王子が、新国王となることが決定した。
講和会議で決定したのはこれだけだった。
後に、新体制になったシャィオシー王国で友好に向けた話し合いを色々とするらしい。
そして何故だか、王族と宰相など内内で話を済ませればよかった所を、俺と【晴嵐の刃】全員も会議に招待された。流石に色々ルール違反をした覚えもあるので、素直に出席した。
その講和会議はデハミッシュ王国とシャィオシー王国の相互間で話を行うのではなく、雇われとはいえ中立の冒険者も交えた、三角会議(俺が命名する形になった。)になっていた。
机の配置が三角だったから「……三角会議だな」と呟いただけで、あれが円卓だったら「……円卓会議だな」と呟いて、そのまま円卓会議の名称が定着したと思う。
「まぁ、確かに鬼兵の存在ははっきりしておきたいだろうし、俺と【晴嵐の刃】の間でどういう戦いがあったのかを知るには仕方無かったんだろうが。」
「ちゃんと分かってるじゃないですか。」
「……いきなりああいう場に引っ張り出されるのは、中々落ち着けないものがあるぞ。いくら記憶喪失で常識を忘れてるからとはいえ、あそこまで気迫があるのはしんどい。」
「初対面で私を口説いて、初対面の国王の事を気絶させた人がよく言えますね?」
アルメリアが悪戯めいた笑みを浮かべながら、そんなことを言う。
いつかの仕返しをしたいんだろうが、俺には通用しない。
「そうかそうか。じゃあ俺がお前の前に一生現れることなく、お前はあのままでいたかったと。そういう訳か。なるほどなるほど。」
「いやいやいやいや!なんでそういうことに繋がるんですか!私は別にチヒロさんに助けてもらって……その……」
「そう、俺はお前を助けたんだよ。お前の事を口説いちゃいないし、バリドゲニア王を気絶させたのはお前を助けるための延長線上にあったことだ。別に嬉しいなんて思ってもらう必要はない。」
「私が嬉しいなんていつ言いましたか?!言ってませんからね!?」
「そう怒るなって、顔真っ赤だぞ。」
それ以降アルメリアは、馬車の外ばかりをずっと見ていた。
あの頃はこの世界に来たばっかりで、「ずっとこの世界に地に足をつけて生きていく」なんてことも考えずに「俺ツエーができる!」なんて馬鹿な考えで、無茶ばっかりやってたからなぁ……。
バリドゲニア王を気絶させたのと、アルメリアを俺に惚れるように誘導したことなんて最たる例だ。中学時代を振り返るよりもよっぽど恥ずかしい。
これからは冷静に行動していこう。
なんてことを延々考えてたら夜になり、野営も面倒なので、アルメリアの許可を得た上でザッドの街に先に帰った。
馬車を率いている護衛も、前に俺が召喚した奴らだし問題はない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「チヒロ君!?こんな夜に帰って来るなんて聞いて無いんだけど!?」
「落ち着け。何か連絡とかは来てないか?」
寝る前にとりあえず冒険者ギルドに寄ったところ、うとうとしていたファミレが、俺を見るなり急に叫んだ。
来てから思い出したが報酬の、冒険者ギルドで俺の討伐依頼の撤回がされてないか確認も兼ねている。
「相変わらずね……チヒロ君の討伐依頼は撤回されてあるわ。あと、ギルドマスター室に来るようギルマスから言われてるわ。」
「分かった。ファミレ、あとは帰ってもいいぞ。」
「待ちくたびれたし、ギルマスから何を言われるか気になるけどそうさせてもらうわ。」
さっきからファミレに笑顔が見られなかったし、本当に待ちくたびれたんだろうな。
とか思いながらノックして、ギルドマスター室に入る。
「おー、チヒロ君。早速だけど冒険者カード出してー。」
「……ああ。」
来客用のソファにうつ伏せになりながらマセルに言われて、威厳はないのかとか、少なくともギルマス用の椅子に座れとか、色々言いたかったがそれは我慢して、素直に渡した。
ランクBで黒、ランクAで白だった冒険者カードの色は、マセルが指でなぞるだけで金になった。
「はーい、これで今からチヒロ君もランクSねー。」
そう言いながら、カードを返してくる。
「何か心構えとか、やっておいたことがいいことはあるのか?」
「無いねー。もう眠いからー。じゃーねー。」
ため息交じりに聞くと、眠気交じりに返された。
「…………ああ」
まんま猫だなと言いたくなった気分を押さえ、部屋を出た。
「…………今度、マタタビでも探してみるか。」
チヒロ君アルメリア置いてザッドの街に先に帰ったけど、別にチヒロ君は常識的な行動をしようって思った訳じゃなくて冷静に行動しようって思っただけだから。
チヒロが召喚した奴らが護衛してるんだからチヒロが護衛してるようなもんだろ。(暴論)




