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五十九話目



 「っふ!」

 「はぁっ!」

 

 俺が一割程度力を込めると、レイクスも力を込める。

 

 「なぁ、腕相撲でよかったの……かっ!?」

 「あったりまえ……だっ!!」


 フェイントで倒そうにも、同じ具合で倒してくるから結局変わらず。


 「そろそろ力を入れようか……なっ!」

 

 足で踏み込みをかけながら六割程力を入れても、あと数センチというところで、


 「なら俺……もっ!」


 レイクスが盛り返してきて、俺が劣勢になる。

 …………そろそろいいよな?全力でいっても。

 

 「そろそろ終わりだ。そぉぅれっ!!」


 加減無しで全力を込める。多分この世界に来て初めて込める全力だと思う。


 若干だがレイクスの顔が歪み、それと同じくしてレイクスの手の甲が机に着く――

 

 「終われねぇんだよぉ!!!」


 かと思ったところで、レイクスが顔を真っ赤にしながら真ん中まで戻してきた。


 「なっ!?」

  

 どうすればいい……今まで通り、魔力に頼るとするか。 

 

 回復魔法の時は細胞に魔力を流して無理矢理細胞分裂を再現してたから、今回の場合とはちょっと違うんだよな……。


 「らぁっ!倒れろぉお!!」

 「お前がなぁ!!」


 危なかった……。考えてて集中できなかったのもそうだが、踏み込み過ぎて足が地面にめり込むとこだった……。咄嗟に地面に障壁張れてよかった……。


 くそ、どうすればいい……。魔力を体のどこに―――


 「そんなの……腕しかねぇよなぁあああああああああ!!!これで最後だぁああ!!」


 俺がそう叫ぶと同時に、レイクスの手の甲は机にめり込んだ。


 「これは決まりだなぁ!勝者は、チヒロだぁ!!」


 バッケスが俺の勝利を高らかに宣言して、今まで黙っていたデハミッシュ側の兵士が歓声を上げた。


 「……完敗だ。」

 「ああ。本当、ランクSってのは強いな。」

 「嫌味にしか聞こえないからよせ。…………戦争が終わったら、チヒロをランクSに推薦しておく。」


 そう言いながら、俺に握手を求めてきた。


 「ああ、よろしく頼む。」

 「俺より強いランクAがいても困る。」


 そう言いつつ笑うレイクスは、張り合える相手ができて嬉しかったようにも見えた。 


 「レイジュ、エリナ、バッケス、撤収だ。今回は、チヒロの勝ちだ。戦争全体で見ても、チヒロのオニ達が勝ってる。今回の戦争は、デハミッシュ王国の全面勝利だ。ギルドにもそう言っておく。……チヒロ、次は勝つからな。」

 「悪かったわ……。素直に、私がランクSと驕っていたことを認めましょう。」

 「じゃーねー!チッヒロー!次会う時は私とも戦ってねー!」

 「お前の事、俺ァ気に入ったぜ!次会う時は女と一緒にいろよ!はっはっはっは!」

 

 【晴嵐の刃】は、言いたいことだけ言って、歩いて去っていった。 後ろ姿でも、仲良さそうに会話しているのが分かる。


 「仲のいいパーティだな。」

 

 俺も鬼達を撤収させたいんだが……どうやるんだ?普通に呼べばいいのか?


 「撤収だ、戦争はもう終了したといってもいい。呼びだした時同様、整列しろ。」


 試しに、鬼達が戦闘をしているにも関わらずそう言ってみる。


 すると、驚いたことに鬼達は次の瞬間には目の前に整列していた。召喚した際と違うのは、全員が俺に跪いていることと、武器の棍棒が赤くなっていることだけだ。

 …………しまった。今後どうするか全く考えて無かった。人とは大きさが違う訳だから、同じ場所で生活なんてできないし、かといって鬼専用の集落を作ったとしても、無知な奴がその集落を襲うかもしれないし。

 そもそも今後、この鬼達を使うようなことってあるのか……?


 「チヒロ様、我らはチヒロ様の魔力から生み出されたものです。ですから、再びチヒロ様の魔力になることもできますし、なんらかの魔石に、私共を魔力として保管することもできます。」 

 

 一番手前にいる鬼が、顔を上げてそう報告した。鬼に対して、まとめ役を指定して召喚した訳じゃないが、なんとかなってよかった。

 …………魔石だって無限に魔力を貯蔵できるわけじゃないしなぁ。俺の体に戻ちゃったら、召喚した証拠が残らないしな……。


 「そうだな、俺のローブに入ることはできないか?」

 「我々の魔力によって、その白いローブが赤く染まってしまうのですが……よろしいので?」

 「構わない。むしろ真っ白なローブだと、汚れを落とす時に大変だからな。返り血も浴びるし、赤い位でいい。」

 「では、そのように。」


 そう言うと鬼が一斉に赤い光の粒子となって、その奔流が俺のローブに向かってくる。そして十秒も待ったところで赤い光の粒子は無くなり、俺のローブは真っ赤に染まった。

 

 やっと一息つける……と思っているところで、俺のほうにデハミッシュ川の兵士が駆け寄り、胴上げを始めた。

 五回ほど飛ばされ、そろそろ終わるかなぁと思っていたところで、俺を飛ばす人が変わり、一通りの人が俺を飛ばすまで続いた。俺の殻が小さいから、飛ばす奴もそんなに疲れなかったのが響いたんだろう。

 

 あんまり酔うことのない俺だが、むしろ胴上げが終わって地面に立とうとした時のほうが気持ち悪くなった。

 


来年もよろしくお願いします。

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