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四十五話目


 医務室といっても、普段は近衛騎士団や門番だけが使うと判断されているようで。明かりは蝋燭1つだけで、豪華とはいえないベッドに寝かされているアルメリアがいた。

 正確に、というか厳密にというか、医務室の外に先ほどの門番もいた。

 

 門番は、いきなりの事だったのと、彼我の身分差を考えて下手なことができないという考えで、アルメリアをベッドに寝かせた後は、医務室の外で番をしていたという。そんな彼でも、矢じりを足から抜き、包帯を巻く位はやってくれたようだった。

 

 「……アルメリアお嬢様。チヒロ様が、もしかしたら治せるかもしれないというので、連れてまいりました。」

 「…………さすがに、チヒロさんでも回復魔法を使う事なんてできませんよ。……先ほど門番さんから矢を抜いて、包帯を巻いて頂きましたが、痛みは変わりませんよ。」

 

 ……一体どんな気持ちなんだろうか。近衛騎士団という者がいながら、俺という護衛がいながら、が怪我をするというのは。

 なんて無神経というか、他人事のような考えを振り払う。

 

 「まぁ、俺だって回復魔法が使えるとは思ってないさ。ただ、やるだけやってみようというだけだ。……包帯を外すぞ。」

 「……はい。」


 細くて、白い足。戦闘とは無縁な、華奢な足。そんな足に巻かれた包帯を外す。止血も兼ねていたらしく、かなり強固に巻いてあった。

 そりゃ痛い訳だ。

 包帯を外すと、親指程はある大きさの傷口が現れた。

 

 ……さて問題はこれからだ。

 土の剣だったり、火の玉だったり、障壁だったり、イメージだけで魔法を使ってきた。

 今回の場合、イメージで治そうとすると、中身は伴わないで外側だけが治りそうな気がしてならない。 

 今までの魔法のように、上っ面だけ真似た魔法のように、アルメリアの足も上っ面だけになる気がしてならない。

 

 さぁ考えろ。


 魔法に頼らず回復するには、自然治癒力が大切な訳で。 そんな自然治癒力の正体は、俺はよく分からない。まぁ、素人考えで細胞分裂と仮定させてもらおう。

 で、回復魔法ってのは、細胞分裂を強制的及び、瞬間的に発動させているんだろう。

 

 つまりは、魔力で細胞分裂を発動させることが可能な訳だ。

 

 仮説はできた。あとは実践だ。

  

 「アルメリア、今から魔力を傷口に流し込む。何かあったら言ってくれ。すぐ止めるから。」

 「え?……え?」


 そんな戸惑う声を無視して、傷口を塞ぐように手を当てて魔力を流す。そして、細胞分裂が活性化されるのをイメージする。 

  

 「えっ……あっ……っん……ちひっ…‥。」


 困惑なのか嬌声なのかどっちつかずの声を上げるアルメリア。まぁ、名前を呼ばれかけたのだからとりあえず手を離し、魔力を流すのを止める。 

  

 手を離すと、そこには傷口なんてなくなっていた。痕跡すら見えない。

 

 「……いきなり魔力を流さないでください。いきなりチヒロさんの魔力が流れ込んできて、困惑しました。」


 暗がりでも分かるほどに顔を赤くしておきながら、困惑したとは、何を言っているんだとも思ったがこらえる。

 

 「まぁ、悪かった。それで、足のほうはどうだ?」

 「……治ってます。」

 

 執事さんは気まずくなったのかなんなのか、医務室から出て行った。

 後に続こうとしたら、アルメリアに呼び止められた。

 

 「チヒロさん、少し話しましょう。近衛騎士団についてです。」

 

 そんなことを言われては、話すしかない。

 

 「分かった。とはいえ、俺は近衛騎士団について知っていることなんてほぼ0に近いぞ。なにせ、今日初めて知ったしな。」

 「それは言い過ぎだと思いますが……まぁいいでしょう。」


 足が治ったことに対しての喜びは、もうほぼ見えなかった。真面目というか、なんというか。


 「仕事熱心だな、随分と。」

 「いえ、自己保身ですよ。……とりあえず、今馬車隊を率いているであろう近衛騎士団については、今ここでその任を解こうと思います。」

 「……え?本人たちがいないのにか?」

 「これくらいの決定権位、第二王女の私にだってありますよ。」 


 ……第一王女とかはどれほどの決定権を持っているんだ。


 「ん?それじゃあ近衛騎士団はいなくなるよな?」

 「はい。そこでチヒロさん。貴方に依頼があります。……近衛騎士団を創ってください。」

 「え?……え?」


 今アルメリアは何て言った?創れ?


 「容易に回復魔法を再現できるあなたなら、伝説ともいえる召喚魔法が使える筈です。」

 

 困惑している俺には一切構わずに、アルメリアはそんな風に断定する。


 召喚魔法が伝説になるっていう事は、昔使える奴がいたんだろうな。


 「……もし召喚できるとして、何を召喚すればいいんだ?」

 「任せます。」

 「…………異形の化け物でも召喚してやろうか。」 

 「……人、もしくは人型の化け物でお願いします。」

 「無理難題の幅を広げようとするんじゃない。せめて相手がどうやったらか達成できるのか、ということを考えて依頼を出すなりしてくれ。」

 「分かりました。」

 

 アルメリアって……こんな口調だったか?

 

 

誤字脱字等あれば報告して頂けると幸いです。



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