三十五話目
障壁で守ったとしても、居座られたら意味が無いわけだし、倒すとしよう。
同じ手で倒せば一週間後に再現するとかいう面倒な事なんてする必要がなくなるわけだし。
一回軽く飛び跳ねると、あっという間に火の鳥の前まで届いた。
俺と火の鳥は向かい合っている。
ここまでくると力加減難しくなるから、いい加減身体能力低下の何か欲しくなってくるな……。
「……前よりも鳥っぽくなったな。」
目の前にいる火の鳥は、嘴と顔の部分、翼と尾の部分、それぞれ細部まで火の色が違っていた。
前回のは、ただ火で鳥を創っただけの張りぼてのような感じがしていた。
『矮小な人の子よ、我の血肉になることを光栄に思うがよい。』
いきなり脳内に男とも女ともつかない中性的な声が聞こえてきた。
この火の鳥は【念話】でも持っているんだろうか。
思い出して欲しいのは、俺はただジャンプしただけであるということ。
特に落下しないように足元に俺が元々使っていた疑似的な障壁を張っているわけでもない。
俺が何を言いたいのかというと、俺はすでに落下を始めていて、火の鳥が話し終わった時、火の鳥の前に俺は居ないということだ。
このままだと火の鳥が哀れな気もするので、とりあえず駆け上がって、火の鳥の前へと移動する。
「……色々と言いたいことはあるが、まず一つだけ言わせてくれ。…お前に血肉無いよな?」
『……我が分身を倒したのも貴様のようだ。』
スルーとくるか。
とか思っていると、火の鳥が俺に体当たりしようとしてきた。
一旦下がって、前回同様火の玉で魔方陣を空中に作り出す。
『…成程、火にはさらに温度の高い火を…か。だが、私は火に特化した存在。そんなものが効く筈が無い。』
とか言いながら、火の玉の魔方陣を寧ろ吸収して更に大きくなりながら俺に体当たりしようとしてくる。
火に特化した存在ってなんだ?何?どんな状態でも燃え続けられるのか?
…まぁこういうのって大概、自分の事を過大評価しているに過ぎない場合が多いもんな。
「なら、消えるまでやってみるか。」
青い火の玉4028個使って一個の魔方陣を作り上げ、それを16個重ねる。
その結果は火の鳥に吸収されてお終いだった。
『言った筈だ。私は火に特化した存在だと。やはり人の子は人の子のようだな、学習するということができない。過ちを繰り返す。』
……その通りだからこそなんか腹立つな…。
鳥らしく鶏舎にでも閉じ込められてりゃいいのに。
…閉じ込める…障壁で閉じ込めてみるか。箱みたいにして。
「…こんなことしたら、魔力の無駄遣いとかって言われるんだろうなぁ…。」
とかなんとか呟きながら、適当に魔力を込めて障壁を張る。
全長数百メートルおも越す火の鳥の大きさに合わせて障壁も大きくなっていく。
…王都のほうに張ってある障壁って無色透明だったんだが、俺の張った障壁がなんかうっすらと赤い。
その赤さも、障壁が大きくなるにつれて段々と濃くなっていく。
『……どうやら、障壁に私の魔力が溶け込んでいるようだな。所詮は人の子の張る障壁だ。我に影響されて当然かもしれんがな。』
…そうかそうか。しれじゃあ魔力追加してやろう。どうせほとんど減らないし。
するとまぁ、当然のことながら障壁の色が透き通ってきた。
ガラスのように透き通った頃には、火の鳥を障壁が包み込んでいた。
『…閉じ込めたぐらいで、どうこうできると思うなよ?』
そう言われると同時に、障壁が段々と赤くなっていく。
「結構な魔力流したはずなんだけどなぁ……。まぁ、追加するか。」
そうして、障壁は透き通っていく。
『…人の子の魔力にしては随分と多い気がするが……それでも我には勝てまいよ。』
火の鳥がそう言うと、障壁は再び赤くなる。
…くっそ、埒が明かないな。障壁を縮めてでもしてやろうか。
そう思ったところ、目に見える速さ、具体的には一秒につき数メートルで障壁が縮み始めた。
『…なるほど、障壁を縮めるか。だが障壁を壊せばその意味も無くなるだろう。…人の子は考えるということをしないな。』
……一々癪に障るなこの鳥。
などと憤っている間に、障壁はみるみるうちに赤くなっていく。今までと違って、透明度も無くなっていく。
魔力追加したうえで、収縮速度を速める。
すると、障壁によって鳥の翼は徐々に強制的に折れ曲げられていく。
十数秒もしたところで、火の鳥は直径数メートルの球体になっていた。
『…人の子よ、我を球にしたところで、我が滅びる訳では無いぞ?』
言葉だけ聞けば、げんなりしそうな言葉だが、口調が少しだけ弱弱しくなってきていた。
弱弱しい声のせいか、炎の勢いも弱くなっているように思える。
…まぁ、火に特化した存在が、押し込められた位でどうにかなるんじゃあな。…あれ、これってただの魔物なのか?
さて、お詫びを兼ねて、次章の展開をば。
「ファミレ、指名依頼は来てるか?」
「…あぁ、その…この街の領主様からの依頼が…。」
「…そうか、内容は?」
「…王都までの護衛…報酬が…ハァ!?王金貨50枚!?」
ファミレの悲鳴にも近い報告は、ギルド中の視線を浴びる原因になった。
まぁ原因が俺だと分かればすぐに静かになったが。
「…アルメリア、一体どういう神経してるんだ?」
「領主さまであり、第二王女であられる方の名前を呼び捨てのチヒロ君だってどんな神経しているの!?」
最初に会った時のファミレの大人しさはどこへ消えたのやら。




