三十四話目
え?今更?
…どうしたらいいんだこれ。
心なしか、国王も自信が無さそうに確認する。
「…ドベルト、それは本気で言っているのか?」
「心からの本音であります!」
「…この者は、この国がを救ってくれたのであるぞ?…大げさでも何でもなく、救国の英雄だ。」
「……では、その国を救った時のことを再現して頂けませんか?」
国王は、どうしたら良いか分からないようで、威厳の3割は消えたような声で、チヒロに聞いた。
「………チヒロ、再現できるか?」
…返答に困る。
正直、あの火の鳥自体は火の玉を幾つか空中に浮かばせればいい。
でもここでそう言うということは、自分一人で国を滅ぼせます、と言っていると同義な筈。
……仕方ない。
「…時間を下されば。」
その一言に、その場にいた貴族たちがざわめきだす。
…こんなことだろうと思った。
「今…なんと言った?」
「…時間さえあれば。」
「…一週間でいいか?」
正直今晩でもいいけどな…できればザッドの街にそろそろ戻りたくなってきた。
「はい。」
「なっ!?一週間!?それは長すぎる!」
俺の返答には、ドベルズが異を示す。
…わがままにも程度っていうものが無いか?
「…だそうだが、急げばどれくらいで出来る?」
「最速でやれば、今夜にはお見せできるかと…。」
「「今夜!?」」
俺の返答には、国王ですら驚いた。
……まぁ、急いだら今夜この国を滅ぼせますって言っているようなものだからな。
この反応は普通だろう。
「…まぁそこはいい。……場所はどこでだ?」
「……広い場所であれば、再現は可能かと。」
もはや俺の返答に返す言葉も出ないようだった。
…まぁ、時間と広ささえあれば国滅ぼせるって言ってるんだから何も言う気無くすだろうよ。
「…だとのことだが、ドベルズ異論はないか?」
「ここまで啖呵をきっておいてできませんでは、ただでは済まさんからな!」
ドベルズは、国王に質問されたのに、俺に返答をよこした。
…礼儀作法どころの話じゃないな。
「…ではチヒロ、下がって良い。ドベルズ、後で我の部屋に来い。腹を割って話そう。」
…国王陛下、お疲れ様です。
そんなことを思いながら、一礼してその場を離れた。
…あぁ、腹減ったなぁ。
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ファミレに今夜火の鳥の討伐を冒険者ギルドに行くと、ルットーが出迎えていてくれた。
「いやぁ、火の鳥討伐お疲れ様。まぁ、積もる話もあるから奥に来てよ。」
「あぁ、分かった。」
あの火の鳥ってのは、あまり実感は沸かないが、国の危機だったんだもんな。
そうして通されたギルドマスター室で、真っ白い冒険者カードを手渡された。
「はいこれ、冒険者ランクAの印。」
「随分と軽いな。」
「そんなに長引かせるものでもないだろう?本来なら、昇格試験を受けなければいけない訳なんだけどね。…今回ばかりは特例だよ?」
「今回ばかりになればいいんだがなぁ……。」
異世界に来た日にドラゴンに絡まれるような俺だ。多分これだけじゃ終わらないだろう。
そう思った矢先、狙ったようにトッシュがギルドマスターの部屋にノックもなしで入ってきた。
「ルットーさん!大変だ!火の鳥だ!火の鳥が王都の空を飛んでいる!」
そんなことを、真っ青な顔で叫んだ。
「…チヒロ君、どういうことだい?」
ちょっとルットーの顔が怖い。微妙に声のトーン下げてるから余計に怖い。
「いや、俺も薄々疑問だったんだ。俺が倒したのは、実体が無い、火そのもので出来た鳥。…もしかするとあれは偽物だったのかもしれない。」
我ながら一瞬にしてよく思いついた考察だ。これなら異論も何もないだろう。
俺の考察にルットーは頭を数秒働かせた後、笑顔で俺に言う。
「…なるほど、そういう見方もできるか……チヒロ君、討伐をお願いしてもいいかな?」
「あぁ。他に手は無いんだろう?」
「勿論。」
「笑顔で言い切られても困るんだけどな。…じゃあ行ってくる。」
俺はそう言って、ギルドマスターの部屋を出て、ゆっくりと外に向かった。
外では、人々が逃げ惑ったり、怒声をあげて騒いでいたり、この隙にと言わんばかりに盗みを働く者がたいたり。
そんな中で空を見上げると、何やら王都の端から中心に向かってドーム状に薄い無色透明のガラスのようなものが展開されていく。
その上空には、優雅に空を飛ぶ火の鳥がいた。
全体が見えるが、火の鳥の高度があまりにも高すぎるから見えているだけであって、おそらく羽を伸ばせば王都を包み込めるのではないかというほどの大きさにも思える。
誰かに聞こうにも冷静な奴はいないので、仕方なく久しぶりに【神眼】を使うことにした。
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魔力障壁
魔力を壁にしたもの
物理攻撃、魔法攻撃などありとあらゆるものを弾く。
込められた魔力によって、障壁の硬度は違う。
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なるほど。流石は王都と言ったところだろうか。
誤字脱字等があれば報告お願いします。
次回は3月中旬までには
はい。遅れたので、少し未来をば。
ネタバレになるので、気になる方はブラウザバックを。
は?
冒険者ギルドから出た俺は、目の前の光景を理解することができなかった。
「……なんだ…ありゃ。」
周りにいる奴も、ただ目の前で起きたことに対してそう言うしかできない。
それもまぁ当然の事だろう。
足の太さは一国の都市よりも大きく、その足の長さは地面から雲まで届き、胴と頭は雲に隠れて見ることができない。
巨大なんて言葉では表すことなどできない大きさの、白い魔物がいたからだ。
その魔物は、俺達に理解などをさせる暇なく動き出す。
歩くためなのか、方向を変えるためなのか、その魔物は足を上げる。
「…!?…まずい!あの足が地面についたら、衝撃波で軽く消し飛ぶぞ!」
俺がそう叫ぶ頃には、魔物は足を上げ切っていた。
足が地面につくまで、あと1分程度しかないだろう。




