三十三話目
昨日は孤児院で寝た。
冒険者ギルドは、レケルト領からきた冒険者で一杯になっていて暫く静かになりそうになかったからだ。
いつぞやと同じように子供たちと遊んでいると、ジェシカが訪ねてきていた。
楽しそうに、たまに悲しそうに、シスターのミレニカと話をしている。
そういやジェシカはここの孤児院育ちだったか。
「チヒロ、ちょっと話があるのだけどいい?」
「あ?まぁいいが。ちょっと待っててくれな?」
子供たちにそう言うと、俺はジェシカについて行った。
長く使われていないような、少しくすんだドアノブの部屋の中に入った。
部屋の中は薄く埃が被っていたが、部屋の真ん中にある二人掛けのソファーだけは汚れていなかった。
そこに座る。
少し間を空けて座ったのだが、ジェシカは態々(わざわざ)間を詰めてきた。
「それで話って?」
「まぁ、少し聞きたいことがあってね。……この孤児院をどう思う?」
ジェシカの顔は酷く深刻で、切羽詰まっているというか、仲間が欲しいと思っていそうな顔で、俺の目を見つめていた。
「……無能な大人の被害を受けた、罪のない子供達の集まる場所ってところか。」
俺の解党にジェシカは目を見開く。
「…ねぇ、貴方ってよく後ろ指を指されたりしない?」
「…それはまたいきなりだな。後ろ指って、どういう面でだ?」
「…自覚が無いって怖いわね。…じゃあ、自分が後ろ指を指されるって分かったらどんな気持ち?」
後ろ指を指されてどんな気持ち……?
「後ろ指を指されるってのは、基本的に俺の後ろにいる奴が俺のことを指さすわけだろ?それはつまり、俺はそいつらよりも前にいるって訳だ。だからこそ、こう思う。後ろ指を指されるのは、俺に負けた奴の負け惜しみが積み重なっているだけであって、なんとも思わない。」
ジェシカは俺の回答に呆れたように首を振った。
そして、心底不思議そうな顔をして俺の目を覗き込んで聞いた。
「貴方、一体何を体験してきたの?」
「さぁ?知らないさ。記憶が無いんだからしょうがない。…それに、何かを見たとしても誰かさんから見れば、俺は子供らしいからな。」
長い沈黙のあと、ジェシカは短く「そう。」とだけ言ってソファーから立ちあがった。
すると、ドアがノックされた。
「チヒロさんチヒロさん!なんだか王城の人が来ています!」
ドアが開くと同時に、ミレニカが大慌てで叫んだ。
「あぁ、そうか。分かった。」
おそらく…確実に火の鳥を倒したことだろうな。
この後、豪華で細部まで煌びやかな馬車に乗って、王城へと向かった。
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暫く馬車に揺られ、パーティーの時とは全く違う雰囲気の王城へと入って行った。
王城の中を、執事に案内されながら進み、謁見の間の前の大きな扉に来たところで執事に「ここで待機をお願いします。」と言われたので、立って待った。
こういうのは普通、別室とか控室とかで待たされるものだと思ってたので、意外だった。
数分ほど経ち、盛大なファンファーレと共に扉が開かれた。
扉の奥には、謁見の間の玉座に座っている国王のルマニゲ。その脇には騎士だか近衛兵だかがいていた。
謁見の間の両端には、貴族と思われる男たちがずらりと並んでいた。
「前へ出よ。」
流石は国王。たった4音で人を強制させる。…雰囲気に流されているだけだとは思うが。
ゆっくりと歩を進め、ある程度進んだところで、ルマニゲから「跪け。」と声が掛かる。
跪き、ルマニゲを見上げる。
「…冒険者、ヨシダ・チヒロ。この度の国の危機に際し、火の鳥を倒したこと。褒めて遣わす。…持って来い。」
ルマニゲは、俺に形式的な儀礼を済ませると、脇にいた騎士だかに何かを持ってくるように言った。
数分後、騎士が二人がかりで麻袋を持ってきた。
「報酬だ。光金貨300枚がそこの麻袋にある。」
……何か言ったほうがいいのだろうか。
「お心遣い、感謝いたします。」
そう言って、麻袋をアイテムボックスにしまった。
「……アイテムボックスか。…確認しなくても良いのか?」
「国王ともあろう方が、報酬を少なくするという行為をするはず無いと、信じておりますので。」
「……成程。…他に、何か欲しいものはないか?」
ルマニゲのその一言に、周りの貴族は動揺を隠しきれなかったようだった。
それを口に出すほど場違いな者がいる訳では無いが。
「…では、無礼を承知で一つ。……孤児院への出資をお願いしたいです。」
「…ほう、何故だ?」
「私は、子供は国にとっての宝だと思っています。…未來を将来を担っていくのは、今の子供です。ですので、孤児院には出資して頂きたいと思っています。……これは私の戯言であり、自己満足ですので、別にして頂かなくても結構ですし、取り合ってくれなくても構いません。」
「自己満足…とは?」
そこに疑問を持たなくてもいいだろ。
普通に返答に困るんだが。
「…目の前にいる人を救った。これに尽きます。目の前の誰か一人を救っても、目の前では無いところでは誰かが困っている。目の前の誰かを救って自分は人を救ったと思う。…これを自己満足と言わずして何を言いましょう。」
「…成程、承知した。……もう下がってよい。」
やっと終わる…ここまで敬語使うはめになるとは思わなかったぞ。
俺が内心ほっとしたところで、ある貴族が我慢でもできなくなったのか声を上げた。
「陛下!このような者に光金貨300枚など、多すぎではありませんか!?」
……え?光金貨の方?
誤字脱字等があれば報告お願いします。
すいません!お待たせしてしまいました!
今月中にもう一話出せるかどうかになります。ご了承ください。
お詫びに、少し未来の話をば。
(以下ネタバレにつき、見たくない人はブラウザバック推奨です)
『さぁさぁさぁさぁ!やって参りました!冒険者最強決定戦ン!いよいよ今日は決・勝・戦!』
その司会のアナウンスで、会場の雰囲気は最高潮まで盛り上がり、歓声は鼓膜を破きそうなほどに大きかった。
『さぁ、西入口からでてくるは、冒険者ランクSパーティ【晴嵐の刃】のリーダー!その二つ名は【闘神】!冒険者最強の座に輝いたのは、両手の指では数えきれない!最難関ダンジョンを最奥まで踏破し、ドラゴンの群れの単独討伐を成し遂げること21回!もはやソロでもいいのではないかと思えるほどの活躍ぶり!その名も、レイクス!!今回も最強の座に輝けるのかぁ!』
闘技場の西入口から、そう紹介されたレイクスが入場する。
そして、再び歓声が上がる。
『さてさて皆さまお待ちかね!冒険者ランクAまでの最速到達記録保持者!戦争でその名を轟かせ、冒険者ランクS。その二つ名は【鬼神】!冒険者ランクGにしてドラゴンの群れ数十匹を叩き潰す!空を舞う火の鳥を吸収する!戦争で見せたはオニの軍団!記憶喪失ながらにして見せたその強さは、伝説として世界の記憶に残るでしょう!ヨシダ・チヒロ!!今日も期待の新星は、伝説を創り上げるのか!!」
そう紹介された俺は、入場した。
歓声が大きすぎて、観客の喉を心配したい。




