三十話目
俺は現在、王城の前にいる。
なぜかと聞かれれば、パーティーに参加するためだ。
いつものローブ姿だが、これ以外に着る服も無いので仕方ない。
王城の中に入ると、老年の執事に、ホールのようなところへ案内された。
そのホールには、貴族の娘の女たちがドレスを来て、立食パーティーのような形式でパーティーを始めていた。
男の姿は見えず、いたとしても料理を運ぶ人しかいなかった。
その貴族の女たちは、俺を見つけるや否や駆け出し、俺に抱き着いてきた。
「きゃー!チヒロ様―!」
「その強さとは裏腹にかわいいですわー!」
とかなんとか言われながら。
まぁ、別に女に抱き着かれることじたいは悪い気はしないので、そのままされるがままにしていた。
「あー、流石に何か食べたいんだが。」
10分程度しても、抱き着かれていたのでそう言うと、外側にいた俺に抱き着けていない女が色々と持ってきてくれた。
なんだろう。すごい偉い人になった気分だ。
持ってこられた料理は、コーンポタージュのような黄色いとろみがあるスープだったり、一口大に切られたレアステーキだったり、パセリ的な野菜が乗せられたスクランブルエッグだったり。
まぁ、分かってはいたことだが洋風そのものだった。
元の世界の時と料理の出来が遜色ないけど、調理設備はどうなってるんだ?
…まぁ気にしてもしょうがないだろう。
俺が女たちからチヤホヤされながら時間が経ち、俺に抱き着く女たちも離れて食事をとり、ある程度雰囲気も落ち着いた。
俺も、好きなように好きなものを好きなだけ食べていた。
だがしかし、ここは王城。ただのパーティー会場ではない。
だからこそ、何かあるとはどこかで心構えをしていた。
だからといって、普通国王と王子が出てくるか?
「おお、君が火の鳥討伐の依頼を受けてくれた冒険者か。デハミッシュ王国国王、ルマニゲ・デハミッシュだ。…あぁ、気は使わんでくれていい。今回は立食パーティーなのだからな。」
「こんなチビに何ができるんだ?…親父も堕ちたな。…なんだその眼は。俺は、この国の王子にて次期国王、カロゲン・デハミッシュだぞ?」
先ほど俺が入った扉から、国王らしき爺と、王子らしき青年が来た。
一瞬の硬直の後に、俺は自己紹介をした。
「名前はヨシダ・チヒロ。ヨシダが名字だから、チヒロとでも呼んでくれればいい。今回はこんなパーティーを開いてくれたこと感謝する。……一ついいか?」
「……ここが非公式のパーティーでなかったら、即刻死罪だったぞ?…なんだ?」
国王は俺の話を聞いて、王子は俺のことなど知った事かと、料理に向かっていた。
なんなんだよこの親子。正反対にも程があるだろ。
「火の鳥というのは、どれくらい危険度が高いのですか?」
「今更言葉遣いを改められてもなぁ…。調査団の話を信じるとするならば、大きい翼を持ち周囲を高温で近づけないそうだ。街…どころか、都市もいくつか無くなっているようだ。」
一冒険者に頼むことじゃないだろそれ。
「…お言葉ですが、今、パーティーをしていていいのでしょうか?」
俺がそう言うと、国王は深いため息を吐いた後に、こう言った。
「女を怒らせると碌な目に合わないからな。素直に言うことを聞いておいた方がいいのだよ。」
国王の目は、虚ろで何も見えていないのか、何かを思い出しているのか分からない。
だが、何かあったのだろうということは分かる。
だがそこで、俺が何か反応する前に、ガチャガチャという音を立てながら、騎士が走ってきて。
「国王陛下!火の鳥が!火の鳥がレケルト領に現れましたぁ!」
という報告を、パーティーを行っているホール全体にした。
「何!?レケルト領だと!?王都の隣ではないか!」
「はっ!その通りです!まだ3割しか燃えていないそうですが、早急に支援を要請するとのことです!」
国王は焦り出したが、王子の反応はというと。
「はー。この国ももうおしまいだぁ、今のうちに食える物食っておこう。」
落ち着いたものだった。
どこまで正反対になるんだこの親子。
「レケルト領?…って、お父さんの領地じゃない!!お父さんはどうなったの!?」
そんな風に、ヒステリックな叫びを、ある女が上げた。
レケルト領の領主の娘だったんだろう。
そして事態は何時ぞやの予想通りになった。
「…あなたが!あなたが最初から冒険者ギルドに居たら、こんなパーティーなんて開かずに火の鳥を討伐できたはずなのに!」
何ていいながら、危機迫る表情で俺のほうに女は走ってきた。
「そーよそーよ!」
「なんであんたなんかのために、こんなパーティー開かなかきゃいけなかったの!?」
周りの女もそれに同調する。
国王は俺が気付いた時にはもう居らず、王子はホールの隅で縮こまりながら俺をみて笑っていた。
…なんでこうなったのかなぁ。
俺がそう思う間にも、俺に向けられる罵詈雑言は増えて行く。
俺にMの趣味はないんだが。
なんて苦笑を浮かべた後に。
「やかましい!」
俺はそう叫んだ。
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