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三十一話目



 「やかましい!」


 すると、不思議なほどに静かになった。

 貴族の娘だから、怒鳴られるのには慣れていないんだろうか。


 なら好都合。言いたいこと言わせてもらおう。


 「なぁ、俺はお前らの人形なのか?お前達貴族にとって、街の人達は人形なのか?全ての命令を忠実に受け止める、何もできずに指示通りに動くことしか出来ない奴隷以上に可哀相な、人形だ、とでも思っているのか?」


 半数ぐらい俺が何言ってるのか分かって無いようだけど、話は続けさせてもらおう。

  

 「なっ…!!私たちは貴族よ?!そんな口を聞いていいと思っているの!?」


 話が分かったというより、上から何か言われてるのが気に食わない女が噛みついてきた。

 …無視だな。


 「貴族なら、人の上に立つ立場なのであるというのなら、然るべき態度と行動をとってくれよ。王都を走り回り、大勢で魔物の一匹も倒せない上に、俺に抱き着いてきたお前らが貴族?…笑わせるな。」


 自分で笑わせるなと言っておきながら、苦笑すらしていないがそこはご愛敬。

 

 俺が言ったことに何も言い返せないようで、皆下を向いている。


「貴族というのは、人の上に立つに相応しいのは、領民の生活を第一に考える真っ当な人間のことじゃないのか?お前らのような、私欲に塗(まみ)れ領民の奴隷のように扱い、自分は偉い存在で何をしても許されると思いあがっている様な奴が、貴族というのは信じたくない。」


 「耳が痛い話ですな…。」

 

 誰も反論も何もないのかなぁと一旦黙ると、ホールの外からそんな声が聞こえた。

 

 もしかしなくても国王に聞かれてたのか?


 「できれば、そろそろ火の鳥を討伐をして貰いたいのだが…。」

 「…悪い。完全に忘れていた。」


 俺は国王にそう言って、ホールの窓を突き破って外へ出た。



 そして、外に出てから気付く。


 「火の鳥ってどこだ?」

 

 まさか今から戻って聞く訳にもいかないしな…とりあえず高くまで飛んで、明るい方に行くか。

 

 とりあえず軽くジャンプをして、王城を超える高さまで上昇する。 

 

 すると、ある一方向だけ地平線がやけに赤くなっていた。

 その方向に火の鳥がいると信じて、空を歩いて移動した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 



 王城から火の鳥がいる場所まで、4歩で着いた。

 空中に自分の魔力を出し、それを固体化させて地面として、それを蹴った行為を、1歩とカウントした結果、4歩だった。


 まぁ火の鳥がいる場所とは言え、火の鳥の大きさを考えて4~500メートルの距離は取っている。

 

 火の鳥の翼を広げた時の横の長さは、300メートルはあるのだから。


 「これは国の危機にもなるか…。」


 さて、一体どうやって倒そうか。

 

 魔法で水を掛けてみるか?

 …なんかすぐに蒸発して終わりそうだ。

 

 魔法で風を作って煽ぐ?

 …待て、火に風って助長してるな。


 剣で切りかかってみる?

 …火を切ったところで何の意味もないか。


 

 ……ん?なんで火が、自我を持ってるんだ?なんで鳥という形をもっているんだ?

 


 なんて考えたところで、俺の体の半分は地面に埋まった。ズボッという音を立てて。

 

 馬鹿だな俺……。考えるのに夢中で空に留まるの忘れてた……。


 「な、なんだ!?空から人が!」

 

 初歩的なミスで地面に埋まったことで落ち込んでいると、後ろからそんな慌てた声が聞こえた。

  

 「あれ!?チヒロ君!?なんでここにいるの?!」

 

 どこかで聞き覚えのある声がしたので、その方を見るとジェシカがいた。


 「そんなことより、地面から出してくれないか?」

 「…そんなに埋まっているのによくそんなに冷静でいられるわね。…というか自分で出られるでしょ?」

 「お見通しか…さすがは【暗視】持ちだ。」

 

 俺はそう言いながら、なんでもなかったように地面から出た。

 転んだから起き上がる。みたいな雰囲気で地面から出た。


 周りには、逃げ惑っている人達と、その逃げ惑っている人達を先導したり運んだりしている人達がいる。 

 おそらく、レケルト領の住民だったり、冒険者だったり騎士だったりするのだろう。。


 「【暗視】は心を読むスキルなんかじゃないわよ。…で?なんでここに?」

 「火の鳥討伐の指名依頼が入ってな。そっちは?」


 俺がそう答えると、周りに沈黙が走った。


 「…色々と聞きたいことができたけど、質問に答えるわ。…私が自己紹介した時に貴方に流されたし、私も流した訳だけど、これでも冒険者ランクAなのよ。だから、避難する人の手伝いをしてるのよ。」

 「なるほど、【暗視】スキルも相まって大活躍か?」

 「まぁまぁね。…火の鳥討伐の指名依頼ってどういうことなの?」

 「言った通りの、火の鳥討伐の指名依頼だ。」

 「…あの火の鳥ってどうやって倒すの?」

 「さぁ?どうにかなるだろ。」

 

 一瞬ジェシカは唖然として、ため息を吐いた後に一言だけ言った。


 「馬鹿なの?」

 「そうかもな。逆に聞くが、火の鳥の倒し方なんて知ってるのか?」

 「…知らないわよ。」


 ジェシカは不貞腐れたというか、言い返せないことにいら立ちでもしたのか、不機嫌そうにそう返した。


 「まぁそう言う訳だ。…じゃあ避難でもしていてくれ。こっちは何とかするから。」

 「…一応私、冒険者ランクAなのだけれど。」

 「そうか、じゃあ好きなようにしてくれ。俺も好きなようにさせてもらう。」

 「分かった、好きなようにさせてもらうわね。……皆!この子が火の鳥が倒すらしいから、援護してあげて!勿論、魔法使いだけで良いわ!」

 

 この子って……確かに俺の背は低いけど……この子って……。


 流石は冒険者ランクA。俺がチビでも援護してくれるように周りの雰囲気を変えた。


 

 何故だか知らないが、火の鳥の翼の色が、一段明るくなったように見えた。


誤字脱字等があれば報告お願いします。



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