二十八話目
王都の外に出ると、遠くの方でオーガの10匹程度の群れ相手に、ドレスを着た女50人が、チマチマと魔法で攻撃しているのが見えた。
…その女たちの後ろには、オーガの別のオーガの群れが迫っている。
女たちは、そのオーガの群れには気付いていない。
「……なんだってこう、魔物も下手に頭がいいんだか…。」
二手に分かれるという戦略をとっているオーガの賢さに溜息をつきながら、軽く地面を蹴って移動した。
なんというか、ナイトウルフを一晩中殺し続けた結果か、もうステータスを見ても、errorとしか表示されなかった。どうやら限界が来たらしい。
そんな世界の上限を超えるようなステータスを持っている訳なので、特に力を入れなくても物凄い速さで移動できる。
はっきり言って、無駄に疲れるだけだが。
あっという間に、魔法でオーガを倒そうとしている女たちのところに着いた。
「あーっ!チヒロ様!!」
一人が俺に気付くと、女たちは一斉に俺を見て、そのまま戦闘を放棄して俺に抱き着き始めた。
「きゃー!チヒロ様!」「私を妻にー!」「思っていたよりもかわいらしいですわー!」
え?何やってんの?というか今更だが、なんで俺の事知ってるんだ?
素で忘れてる訳では無いよな?俺がオーガを倒すって分かっててそんなことしているんだよな?
というか、オーガの群れがが思い切りこちらに来ているんだが。
二つの群れがこちらに来ているんだが。
そう言おうにも、うるさいので声が届かない。
どかそうにも、手を出すと、多分簡単に骨の何本か折れるだろう。
仕方なく、女たちにはそれぞれ魔力を二万程度叩きつけて、オーガには数百万程度叩きつけた。
ドサドサと音を立てて、女たちもオーガたちも崩れて行く。
「あー、気絶させたはいいが、どうやって運んだもんか。」
貴族というだけあり、女たちの顔は全員という訳でもないし完璧でもないが、ある程度は整っている。
下手に運ぼうものなら、そのままお縄にされてしまうだろう。
「…まぁ、先にオーガの処理をしておくか。」
オーガの肉って意外と旨いし。
そうして、辺りに倒れているオーガ(合わせて60匹程度)の首を切って、アイテムボックスにしまった。
…ナイトウルフの分も合わせて、ギルドに買い取ってもらおう。
ものの数分でオーガの群れを処理できたので、あとは女たちが目を覚ますのを待つことにした。
下手に触って貴族の反感を買ってしまったら面倒だからな。
もう既に、面倒なことになっているけど。
なんというか、いま気絶している女たちの思考回路が読めない。
自分で言うのも何だけど、俺冒険者だぞ?いつ死ぬかも分からない冒険者なんだぞ?
貴族の娘が未亡人っていうのは、おかしいことになるのではないのだろうか?
というかそもそも、戦闘中の相手から目を離すって…自分の命が懸かっているんだぞ?
これって、俺が戦えない奴だったら皆仲良くオーガに食べられてたぞ。
などとまぁ、色々と憤っていると、女たちは目を覚ました。
なんかワーワー騒いで鬱陶しいことこの上なかったので割愛。
まぁ我慢して、王都に連れ帰った。
移動中にパーティを早く終わらせたいと呟いたら、快く承諾され、急遽今夜パーティーを行うことになった。場所は、王城内だそう。
最初からそうしろ。
で、今はギルドでナイトウルフの死体と、オーガの死体を買い取ってもらうところだ。
ナイトウルフの数が膨大過ぎて、ギルド内では処理しきれないとのことだったので、ギルドの買い取り人の男と一緒に、広めの倉庫に移動した。
「ここの倉庫は、ドラゴンとかの巨大な体を持った魔物のために最近作ったんだけど……まさか最初に使うのが、ナイトウルフになるとはね…。」
なんて呆れられたのには、なんとなく申し訳ないと思った。
呆れるのも当然だろう。体育館のような大きさの屋内施設の3分の1が埋まっているのだから。
ナイトウルフの死体が、天井にまで積み上げられた状態で、だ。
「まぁ、なんというか。…ドラゴンを10匹だか20匹だかを討伐した実績は、伊達じゃないみたいだな。」
「じゃなかったら国の危機に呼ばれない。……しかし、俺の他にも冒険者はいるはずだろ。というかいるだろ?国の危機っていうのに、なんでわざわざ冒険者ランクBの俺しか指名されてないんだよ。せめてランクAぐらいは呼べよ。」
「さぁね、その辺は僕が知った事じゃないから。……しっかしまぁ、これだけ切っても断面がスッパリいってるのは、そうとういい剣つかってんのかな?」
買い取りの男の独り言に突っ込んでは愚痴って、その愚痴に男が反応して独り言を呟く。その独り言に俺が反応する、というループ体制が出来上がっていた。
現にしっかりと回っている。
「いいや?その辺の土塊を固めてるだけだ。いいも悪いも無いよ。……そもそも、その辺で売っている剣を使おうとすると、柄が潰れてそのまま持てなくなるんだぞ?そんなもん使うよりかは、自分で作ったほうがよっぽどいい。…もうちょっと頑丈なのがあればいいんだがなぁ。」
「剣の柄が潰れるって、相当な力の持ち主だね。どんなステータスしてたらそうなるんだ一体。……これ終わるのかい?結構検査してるけど、半分もいってないないんじゃないかこれ。」
「半分は越したと思うぞ。……なんだってこんなにも魔物は多いんだか…倒すこっちの身にもなって欲しいもんだ。」
「その倒された魔物を一体一体丁寧に見るこっちの身にもなって欲しいものだよ。……ギルマスもギルマスだよ。なんだってこんなに多いのを俺一人にさせるんだよ。確かにこっちは暇だけどさぁ?」
「暇ならいいじゃないか。こっちは休まる暇なんてないぞ?…貴族の娘なんぞ相手に、なんでパーティーしなきゃいけないんだ。」
「おい。貴族どころか、同僚にも、女冒険者にすら食事に誘われない俺に謝れ。むしろ貴族のほうがいいじゃねぇか。」
「それは済まない。でも、あんな自己中心的な奴らの相手なんて御免だ。」
「冒険者も似たようなもんだと思うんだけどなぁ。」
ナイトウルフとオーガの死体を勘定するのに、昼間から始めて日暮れまでかかった。
まぁ、それだけの魔物を倒したということで、金貨63枚、銀貨35枚、銅貨9枚を報酬で受け取った。
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