二十四話目
ナイトウルフを切り続け、ジェシカを守り続けること数時間。
どうしてジェシカは呆然とするだけで数時間も突っ立っていることができるのか不思議になったが、気にしたらナイトウルフにやられるので、深く考えないようにした。
夜が明けると同時に、ナイトウルフの戦闘は完全に終わった。
ナイトウルフの全滅で。
いつからかアイテムボックスにナイトウルフの死体をしまうのを忘れていたのか、辺りには数十匹のナイトウルフの死体が転がっている。
あとはいないかと辺りを見回して気付いたが、俺は周りの冒険者から囲まれていた。
囲まれているというのは、20メートル程度離れている場所でだ。
ナイトウルフとか、脅威になる魔物を平然と倒せる奴を、遠くから観察するということは冒険者として普通というか、上を目指そうとする冒険者は大体していることだ。
上を目指す冒険者の場合だが。
「おうおうちょっとそこの坊主!お前その剣見せてみろ?どうせ、剣に頼ってるだけなんだろ?」
そんな風な声が、周りの冒険者の内の中から聞こえた。
こいつは冒険者として上を目指す、というよりは、上でありたいという奴だろうか。
「いいぜ。」
そう言って、そいつに向かって剣を投げる。
土の剣は、放物線を描くように飛んで行って、そいつの足元の地面に突き刺さる。
周りの冒険者の視線は、その投げられた剣に向かっていた。
「気前がいいな!」
そう言って、男は突き刺さった剣を引き抜こうとする。
が、抜けない。
顔を赤くしてまで力を入れるが、抜ける気配は一向になく、むしろその男の足が、僅かながらに埋まっていく。
当たり前だ。その剣の質量は、その辺の土の1000倍なのだから。
「あー、それやるよ。血吸ってちょっと脆くなってそうだから。」
実際は血など、液体が入り込むすきなど一分も無いように圧縮している。
ので、脆くなることなど無い。要するには気分だ。
「おい!この剣抜けないぞ!どうなってんだ!」
俺の投げた土の剣を抜こうとしている冒険者の言葉を無視して、前作った時同様に、一辺が10メートルの土の立方体を地面から取り出して圧縮する。
ギチギチギチギチィという甲高い音が耳に響くが気にしない。
そして小さくなった土の塊から、長さ60センチ程度の片手剣の部分をイメージして、その部分を塊から抜き取る。
周りの冒険者のざわめきが大きくなるが、そもそも囲まれているので今更それくらいどうということは無い。
余った土は放置した。必要ないから。
そうしてできた剣の先を、必至に抜こうとしている冒険者に向けて、こう言った。
「ただの土の剣だ。そんなものも抜けないのか?」
なんて言って、ナイトウルフの死体をアイテムボックスにしまう。
すると、周りで見ていた冒険者たちは一斉に、武器を構えて俺に襲い掛かってきた。
…今まで来なかったのは、ナイトウルフの死体が邪魔だったからということなのか?
「おい!こいつを殺しても山分けだからな!」
「んなこと分かってるよ!」
「こいつを殺した奴には5割でもよさそうだけどな。」
襲い掛かってきた冒険者にそれぞれ、魔力を三十万程度叩きつける。
するとあっけなく気絶した。
草原に男たちが武器を持って寝転んでいる姿は不自然だったので、剣を作る時にできた穴に入れた。
…しかし、ナイトウルフの死体を全てアイテムボックスにしまった訳なんだから、俺が死んだら誰も手柄を取った事にはならないと思うんだが。
「……えっと…?あの…あれ…?」
ジェシカは、ようやく正気に戻った。
よく数時間も呆然と立ち続けていられるものだ。
「……何があったの?」
「ナイトウルフが全部こっちに来たから処理したまでだ。さ、ギルドに戻るぞ。」
「……そうね。もうナイトウルフも冒険者もいないようだし。」
俺とジェシカは、適当な距離が空きながらだが、一緒にギルドに向かった。
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ギルドの扉を開ける。
すると、またもやファミレが受付から身を乗り出した。
なんで受付にいるんだとか、なんで毎回毎回飛び出すんだとか、なんでギルドはすっからかんなんだとか、なんでルットーとトッシュが出迎えをしているんだとか、色々と聞きたいことはあったのだが、まずそれよりも。
「疲れた、寝る。」
そう言って、何故か出迎えをしているルットーとトッシュを流して、ギルドの奥に向かった。
何せ夜が明けるまでずっとナイトウルフの首を切り落としてきたんだ。
さっきまでは何とも無かったが、王都の街の中に入ってちょっとしたら眠気が襲ってきた。
…ここまで眠くなったのなんて、夜勤のバイトが夜が明けるまで長引いた時ぐらいだろうか。
「…え?チヒロ君?報酬は?」
ファミレが受付から唖然としながら俺にそんな声を掛ける。
「まず…寝かせてくれ。…あ、まずい。」
俺は、ファミレに言葉を返そうとしたが、その時にはもう眠気が限界を超えてまで襲ってきていた。
15歳の体には、戦闘での徹夜はきつかったかもしれない。
そんな事を考えながら、俺はギルドの床とキスをした。
誤字脱字等があれば報告お願いします。
更新できなかったお詫びに、未来の話をば。
(ネタバレ嫌いな方は、この時点で引き返すことをお勧めします。)
アルメリアは、俺に土下座するような形で、謝罪と依頼をした。
「…俺は、アルメリアに謝罪して欲しいんじゃない。国王と、それを止められなかった連中の心からの謝罪が欲しい。」
無理だろう。
だって、国王は俺にそこまでする価値はないだろうから。
何故なら俺は、世界中が認める大犯罪者になったからだ。




