二十二話目
「火の鳥?」
「そう、火の鳥だ。別名、フェニックス。」
「…場所は?」
「あー、ここから馬車で2週間の辺境だ。」
「…報酬は?」
「光金貨30枚。」
光金貨は、デハミッシュ王国で言う王金貨と同じらしい。
「分かった。出発は?」
「…報酬はいいのか?」
「むしろ、有り余ってるから無料でもいい。」
「…いつかそんな風に言ってみたいな。出発は、こんなに早く来ると思っていなかったし、1週間以内とだけ。」
「分かった。ギルドに泊まってもいいか?」
「何故?」
「圧力。」
「…了承しよう。今回だけだが。」
「悪いな。宿に金を使いたくないんだ。」
「…宿で何かあったのか?」
「とある宿に、光金貨1枚分払ったからな。勿体無い。」
ルットーは、目を見開いた。
スキンヘッドが目を見開くとこうも面白いのか。
「…豪快だな。随分と。」
「自分でもそう思うよ。おかげで10年以上はあそこに泊まれる。」
ルットーと会話していると、トッシュが急に立ち上がって叫んだ。
「ちょっと待て!さっきから色々とおかしいだろ!」
「気持ちは分かる。あーそうだトッシュ。せっかくだし、摸擬戦をしないか?」
「摸擬戦?なんで?」
「体が鈍る。…ルットー、ギルドにいる冒険者に声を掛けてきてくれないか?正直、この背格好じゃ何回舐められるか分かったもんじゃない。」
適当に理由をつけて黙らせる。
「……なるほど、賢いな。」
ルットーは納得してくれたようで、先に部屋を出て行った。
「伊達に冒険者やってないんでな。」
「待て!勝手に話を進めるな!」
「ギルドの裏で待ってるからな。」
「だから!」
その後もうるさいトッシュを放っておいて、俺はギルドマスターの部屋を出て、そのままギルドの裏に出た。
ファミレが可哀相だが、ちょっとくらいは許して欲しい。
数分程度経って、俺はギルドの裏にある訓練場にて、トッシュを待った。
ルットーの声掛けもあって、周りには十分なギャラリーが集まっていた。
と、そこへ。
「おい!そんな大口叩いて、負けたら承知しないからな!」
トッシュが、三下のようなセリフを吐きながら、槍を持ってこちらに向かってきた。
その後ろには、審判でもしてくれそうなルットーがいた。
「さぁ!よく皆集まってくれた!今から、冒険者ランクBのチヒロ君と、副ギルドマスターのトッシュが決闘をしてくれるそうだ!」
ルットーがノリノリで、それにつられてギャラリーの冒険者のテンションも上がった。
あれ?俺、決闘じゃなくて、摸擬戦って言った気がするんだが。
「始め!」
ルットーは、いきなりそう言った。
まぁ、初手は譲ろう。
トッシュは、力任せに俺に向かって槍を突く。
俺にあと20センチというところで、俺の視界はスローモーションになる。
土の剣で、槍の穂先をずらす。
すると、スローモーションは終わった。
「おわぁあ!」
トッシュは力任せに突いたその槍に引っ張られ、そのまま前のめりに倒れた。
「どうした?」
敢えて何事も無かったかのように、トッシュに話かける。
「この野郎!」
トッシュは立ち上がると、槍をまたも力任せに突いてくる。
スローモーションになる視界の中で、槍の穂先をまたずらす。
すると今度は、槍に引っ張られた体を回転させて、俺に回し蹴りを仕掛けてきた。
その蹴りを、後ろに下がって躱す。
回し蹴りによって、こちらを向けていないトッシュに、ゆっくりと土の剣で斬りかかる。
スローモーションの動きの中で普通に動くと、周りからはすごい速度で動いていることになるから、それをなくすために、ゆっくりと斬りかかる。
俺が斬りかかっていることに気付いたトッシュは、すぐさま槍で俺の顔を狙う。
「顔は無いだろ。」
そう言いながら、土の剣をしまって、槍を手刀で叩き折った。
スローモーションの視界は、元に戻る。
槍を折られたトッシュは、ただ茫然と槍の穂先があった場所を見つめている。
「まだやるか?」
「…これ以上続けろってか?」
「お前ならできそうな気もするがな。」
そう言って、ルットーにアイコンタクトする。
「勝者!チヒロ!これで、摸擬戦は終わりだ!」
そのルットーの宣言と同時。
悲鳴は聞こえてきた。
「ナイトウルフの大群が商隊を襲ってる!!早く冒険者は来てくれ!」
その声に、周りのギャラリーが反応した。
「おいおいおいおい!もうすぐ日が暮れるんだぞ!」
「夜にナイトウルフと戦えってか!?」
「おい!一か月前に群れはどうにかしたんじゃなかったのか!」
などなど。
「トッシュ、ナイトウルフって?」
ルットーは、すぐさまギャラリーの冒険者を宥めてナイトウルフ討伐に向かわせた。
ナイトウルフの情報を聞きたいので、とりあえずトッシュに話しかけてみた。
「王都周辺にいる狼の魔物だ。奴らは賢くて、常に3匹以上で行動している。この王都の冒険者が、腕利き揃いなのは、このナイトウルフが王都の周りにうじゃうじゃいるからだ。」
「なるほど。ナイトウルフを倒せるような冒険者でないと、王都には来れないのか。」
「そういうことだ。…さ、お前はナイトウルフの討伐に行ってこい。」
「…そうさせてもらう。ファミレには事情を説明しておいてくれ。」
「分かった。」
そう言って、地面を傷つけないようにしながら走って、王都の外を目指した。
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