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二十話目



 いろいろあって、1か月程度は過ぎただろうか。


 アルメリアの住む屋敷は、2週間程度でできた。

 やはり、魔法という建築技術があるのは大きい。


 イラーエの時とは違って、屋敷は要塞のような形となり、ドラゴンが来た時に対応できるようになっているらしい。


 屋敷ができるまで、一緒の部屋でアルメリアと寝るのは厳しかった。

 さすがに、手は出していない。王女に手を出すほど、身の程を弁えていない訳では無い。


 アルメリアが俺を気にしているのは、一過性のものだろう。

 

 現に、屋敷ができてからは、一回も俺を訪ねてくることはなかった。護衛の依頼も出なくなった。

 つまりはそういうことだろう。

 


 その一か月の中で、俺は正直働かなくても一生暮らせるような金を持っているわけだが、一応依頼をこなしたりはした。


 盗賊の退治だったり、オーガの群れを木っ端微塵にしたり。


 国王陛下が、冒険者ギルドに俺の討伐を依頼したようで、毎日俺の命は狙われるようになった。

 報酬がおかしい額で、王金貨1000枚だとのこと。

 

 なぜ王家はそうも、王金貨を多用できるのか分からない。


 剣で斬りかかられた時は、その剣を土の剣でボロボロにしたり、弓矢で狙われた時は、弓矢が飛んできたほうに弾を投げたり。

 その結果毎日必ず20回位は、攻撃が来るせいで視界がスローモーションになる。


 

 さて、今までを振り返ったところで、今日も依頼を受けにギルドに行くとしよう。

 

 

 ギルドの扉を開けると、いきなり剣が突き付けられた。

 もういつものことなので、特に驚きもしない。


 スローモーションになる視界の中で、剣を突きつけてきた奴の顔を見ると、どこまでもイケメンだった。爽やかなイケメンだった。

  

 突き付けられた剣を、いつも通りに土の剣で千切りにして、切られた剣の破片をアイテムボックスにしまう。

 

 視界が元に戻ると、イケメンは顔を歪めた。


 「なっ!僕の剣を、よくも台無しにしてくれたな!」

 「「「「「「よくもダルコス様の剣を!」」」」」」

  

 イケメンの周りには、取り巻きの女が6人いた。

 それぞれが美人なのだが、俺に対しては顔つきが鬼そのものだった。

 

 「やかましい。」


 イケメンと女6人に、魔力を数万程度叩きつける。


 すると案外簡単に気絶したようで、地面に倒れた。

 …こういうのは黙らせておかないとうるさくてしょうがないんだよな。


 「あーチヒロ君。その真ん中の、ダルコスて人は冒険者ランクAよ。」

 「どうせ、やれやれ…どうして皆、たかだか冒険者ランクBのガキ如きも殺せないんだい?とか言ってたんだろ?」

 「…よく分かったわね。一言一句違って無いわ。」

 「この手の顔が良い奴は大体そう言うのだからな。」

 

 最近では、ギルドで待ち伏せしていた奴を、俺が打ちのめして、ファミレがその解説をする。という一連の流れができてしまっている。

 

 今日の依頼はどれにしようかと、悩んでいるとダルコスが目を覚ましたようだ。 


 「よくも…よくもこの僕を!」

 「どうした負け犬。そのまま寝ておけばよかったのに。」 

 「なっ!?負け犬!?今、僕の事を負け犬と言ったのか?!」

 「そうやってすぐに吠えるから負け犬って言ってるんだ。」

 「僕を舐めるな!」


 うるさい。酒場の奴も迷惑しているようだ。

 もう一度魔力叩きつけるか。今度は十数万程度で。


 ダルコスは気絶して、綺麗に前のめりで倒れた。

 自慢の顔に傷が付いてないといいんだけど。


 「……ファミレ、指名依頼来てないのか?」

 「まだ来て無いわね。」

 「おー、チヒロ君。丁度いいときに来てくれた。君に、お隣の国から指名依頼が入った。」


 マセルが、急に現れてそんなことを言った。


 「なんで俺なんだ?」

 「…さぁ?ドラゴンを倒した功績が評価されたんじゃないの?…場所は、セランディカ王国の王都。さ、行ってらっしゃい。」


 本当に分からないらしい。

 …セランディカ王国なんて知らないぞ。


 「せめて方向だけ教えてくれないか?」 

 「あー、ここから真東だよ。頑張ってね。」


 マセルは俺をここから追い出したいのか、もう既に笑顔で手を振っている。

 見送る気満々である。


 ファミレがそう言ってくれた。

 なんで、ちょっと顔赤くなってるんだ?

 なんでマセルはニヤニヤしてるんだ?


 「…チヒロ君、良ければ案内しようか?…セランディカ王国なら、行ったときはあるから。」 

 「仕事は…俺の専属だったな。さて、行くか。」

 「え?どうやって?」 

 「空を飛ぶ。俺に捕まっていてくれ。案内は任せるから。」 

 

 そう言って、ギルドを出た。

 ファミレはその数秒後にギルドを出て、俺に抱き着いた。

 

 捕まれとは言ったけど、体に腕を回せとまでは言ってないんだが…。


 「…準備はいいか?」

 「…えぇ。いつでも。」


 ファミレの吐息が耳にかかる。

 …ちょっとくすぐったい。


 「3、2、1、0。」

 「え!?わ!ちょっと!」

 

 0と言って、飛び上がる。

 すると、ファミレが悲鳴をあげる。


 「口を開かないほうが良いぞ。舌が噛み切れても保証しないからな。」

 「んー!」


 それを肯定と取っていいのかは、分からないが、とりあえず進むことにした。


 「なんかあったら叩いてくれ。とりあえず全力で進むから。」

 「ん!」


 

 東に向かって飛んで行ったら、30分程度したところで、ファミレが吐いた。

 

 揺れ過ぎたらしい。




誤字脱字等があれば報告お願いします。



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