十九話目
いい加減ご飯食べたいわけなんだが、石畳をどうしたものか。
…いいや。放っておこう。
「まぁ、報酬はいいとして。護衛の依頼を受けさせてもらうよ。まぁ、まず宿で食べさせてくれ。」
「いいですけど…どうしてそこまで宿にこだわっているんですか?」
「せっかく料金は払ったんだ。そこで食べなきゃ勿体無いだろ?」
「…そういうものですか?」
「そういうものなんだ。さ、行くぞ。」
そう言って、俺は宿に向かった。
アルメリアは、少し呆然と立っていた後に、パタパタと足音を立てながら追い付いてきた。
宿に入る。
お、リッカだ。
「あ、リッカ。昼食頼めるか?」
「は……い。あの、後ろの人は?」
リッカは、俺の後ろにいたアルメリアを見て、一瞬だけ固まっていた。
「護衛対象だ。…オーガ肉定食を2つくれ。腹が減ってしょうがない。」
「……私も、それで。」
アルメリアは、控えめな声で注文していた。
数分して、席で待っていたところに、リッカが料理を持ってきてくれた。
アルメリアは、隣の席に座って来ていた。
「はい、チヒロさん。」
「おう。」
「あと、はい。」
「…ありがとうございます」
リッカは、俺に対しては自然な笑顔で料理を渡したが、アルメリアに対して不自然な笑顔で料理を渡していた。
アルメリアは、消え入りそうなか細い声で礼を言っていた。
…俺はアルメリアに【威圧】でもしたのだろうか。
十数分後
「あー旨かった。」
「えぇ。やはり、王城の料理とは違って温かみがあります。」
…アルメリアが正面に座っていてくれなくてよかった。
多分テーブルマナーの良さに驚いて、食事がまずくなっていたと思う。
「そういえばアルメリア、どこで暮らすんだ?ここに領主の建物なんて無いぞ?」
「…この宿に泊めさせて頂きます。」
「別の部屋に泊まるんだよな?」
「いえ、護衛をしてもらわないといけないので。同じ部屋に泊めさせて頂きます。」
自分で言ったこと覚えてるのか?
アルメリア、いて欲しくもないのに、側にずっと誰かがいた、って言って泣いたんだよ?
「さすがに…それは。」
「…私とは一緒に居たくないんですね?」
ずるいなぁ。その言い訳ずるいなぁ。
断れないじゃんか。
「分かった。一緒の部屋に泊まる。それでいいんだな?」
「はい。」
微笑みながら返事をするアルメリアが、可愛い。
…はぁ。これは多分、街のどこ行ってもついてくる奴だな。
「リッカ、旨かったぞ。」
そう言って宿を出た。
歩きながら言葉を交わす。
「どこに行くんですか?」
「ドラゴンの被害に遭った元領主の屋敷。」
ドラゴンの被害にあったというか、被害に遭わせたというか。
「確か跡形もなく、崩れ去っていたはずだ。」
「…それでは、近くの建物も崩れ去っているのではありませんか?」
「いや、それは無かった。前に俺がお邪魔させてもらった時に、ドラゴンの頭の中身ぶちまけて来たから、多分ドラゴンは、その匂いを嗅いできたんだろ。」
「…なるほど。仲間の仇討ということですか。」
「そうなんだろうな。」
身内って言ってたけどな。
「ドラゴンは、魔物の中でも知能が高いと聞きます。中には、人間と会話できるドラゴンもいるそうだとか。」
「へー。」
「チヒロさんが戦ったドラゴンの中に、話せるドラゴンはいたんですか?」
…これは、ちょっと逃げたほうが良いか。
本能が俺に言っている。
「あー、俺が戦う時は、周りがゆっくり動くようになるんだ。だから、話せるドラゴンがいたとしても、話せない。」
「すいません。周りがゆっくり動くようになるって、どういうことですか?」
「まぁ、戦う時は俺が早く動けるようになるんだ。じゃあ、ちょっと思い切り殴りかかってきて。」
「え?…まぁいいですけど。」
すると、護衛騎士団いらないんじゃないかと思うほどに、早いストレートパンチが飛んできた。
ぶつかるまであと10センチというところで、ようやく周りがスローモーションになる。
危なかった。普通に一撃貰ってた。
さぁどうやって避けようか。
まぁ、早く動けることを証明しなきゃいけない訳だから、アルメリアの後ろに回るか。
というわけで、アルメリアの後ろにまわった。
それと同時に、スローモーションが終わる。
「とまぁ、こんな感じで速く動けるわけだ。」
「私、それなりに力入れて殴ったんですが…。」
これでそれなりとか、王女様強すぎませんか?
本気出したらドラゴンと遜色ないと思う。
しょんぼりしているアルメリアを励ましながら歩いて、更地になった領主の屋敷に着いた。
そこは、やはり広い空き地だった。
「…ドラゴンが、全て壊したのですか?」
「あぁ。」
「…なんで、そう言い切れるのですか?」
「俺がここに来たら、ドラゴンが屋敷を壊していた真っ最中だったからだ。」
「…本当にそうなのですか?」
…怖い。どうしてこんなに追及してくるんだ?
「そうだよ。…何を怪しんでいるんだ?」
「…何も怪しんではいませんよ?ただ、領主がいなくなってしまった原因をはっきりさせないといけませんので。」
「そうか。」
アルメリアがこちらを見る目は、消化不良とでも言いたげだった。
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