十三話目
『レベルが上がりました』
その声が聞こえたのは、ドラゴンを倒して数秒後だった。
いつもだったらノータイムで聞こえるはずなんだが。
そう思いながら、イラーエの敷地を出た。
……人の動きが遅い?
さっきも、『レベルが上がりました』の声が遅れて聞こえてきた…てことは、まだスローモーションは終わってない?
「嘘だろ…まさかドラゴン全部倒すまで終わらないのか?」
俺の口から零れたその一言を肯定するように、俺の上で、ドラゴンが咆哮をあげた。
「GGGGYYYYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!」
その咆哮すらも、ゆっくりだった。
「耳に響くんだよ馬鹿野郎!」
地面が凹もうが関係ない。
思い切り踏み込んで、ジャンプする。
あっという間にドラゴンの上まで飛ぶと、ドラゴンの頭を土の剣で切り落とす。
まず一匹。
周りを見渡すと、ドラゴンがざっと見て50匹はいた。
…よく滅んでないなこの街。
「はっ!一々弾込めなんてやってられっか!このまま投げてやる!」
そう言うと、アイテムボックスにしまってあったアサルトライフルの弾を適当な数握って、ぶん投げた。
群れで飛んでいるドラゴンに向かって。
投げ終わった後に、『レベルが上がりました』という声が聞こえる。
そして、切ったドラゴンをアイテムボックスにしまう。
くっそ、空歩けたらな。もう滞空時間終わりか。
しょうがないので着地して、石畳を一枚一枚破壊しながら走って、ドラゴンの方へと跳躍する。
ほぼ斜め45度に飛んだ俺は、ドラゴンの群れに突っ込む形になる。
その状況で俺は、さっきのようにドラゴンに向かって弾をいくつか握って投げる。
それを繰り返して、ドラゴンがハチの巣になったのを確認しながら、地面に落ちていく。
地面に着いた頃には、『レべ『レべ『レべ『レべル『レベルが上がり『レベルが上がりま『レベルが上がりました』と、重複して聞こえてくる。
はっきり言ってウザい。
そして、ハチの巣になったドラゴンをアイテムボックスにしまう。
その結果、空にドラゴンはいなくなり、ようやくスローモーションが終わってホッとすると、数秒して街中から歓声が上がった。
さて、ギルドに行くか。
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騒がしい街を歩いて、冒険者ギルドの中に入る。
すると、やはりというか、おなじみというか、ファミレが受付から身を乗り出していた。
「来た!やっと来たわよ!主役の登場よ!」
…?何を言っている?
ファミレがそう叫ぶと、酒場から、というかギルド中から歓声が上がった。
…あー、ドラゴン倒したのが俺って言うので盛り上がってるのか。
「いやー、やってくれるとは思ったけど、一瞬でやるとはさすがだぜ!」
「最初に見た時チビとか思っててすいません!」
「なっはっは!流石はドラゴンを槍だけで倒したことはあるぜ!」
「さぁて野郎共!宴だぁ!」
「酒持ってこーい!」
「チヒロー!またおごってくれよー!」
おい最後のほう。
もうお前ら酒飲みたいだけだろ。
「今回の報酬ってどうなるんだ?」
とりあえず、騒がしい冒険者たちを無視してファミレに聞いてみた。
「えっと…今回だと、ドラゴン一匹が金貨10枚だから……64体いたから、王金貨6枚と金貨40枚になるわね。」
「…数えたのか?」
「まぁ、昔からの癖でね。」
「…そういえば、前回は王金貨10枚貰った訳なんだが?」
「……お金がなくなっちゃったみたいです。」
「前回で終わりだと思ったからか?」
「まぁ、そうだと思うわ。…あ、ギルマスがさっき呼んでたわよ。」
「…今回も俺が倒すって思ったんだろうな。行ってくる。」
「はいはい。」
もう既に酒臭いギルド内を移動して、ギルドマスターの部屋に入る。
「待ってたよー。」
ソファーにだらしなく寝ているマセル。
もうただの猫だ。着ている服もなんかふわっとしていて、色々と見えそうだ。
「で?何の用だ?」
「ちょっとねー、貴方の名前をー、世界中の冒険者ギルドに回していいかの確認してほしかったんだー。」
「あぁ、いいぞ。あぁそうだ、俺の討伐依頼はもう出す意味がないと思うぞ。」
「なんでー?」
「イラーエのところに行ったら、ドラゴンがイラーエの建物を全てぶっ壊してた。」
「……は?」
マセルの素が出たな…。
目を見開いた。
「俺が前回お邪魔させてもらった時に、ドラゴンの脳みそぶちまけたのがいけなかったんだろうな。」
「…そっかー。分かったー。あの依頼は消しておくねー。」
「報酬は?」
「…正直ー、もうここのギルドじゃ出せないから―、国のほうから出してもらうことにするよー。」
「…どうやって?」
「まー、私もこのギルドのマスターだからねー。ここの街はー、強いモンスターばかりだからねー、他の街よりもー、権力は強いのさー。」
「成程。じゃ、王金貨6枚と金貨40枚。」
「…はー、どーぞー。」
おい、今どこから出した。
確実に胸元から出したぞ今。谷間の無い胸から出したぞ今。
「受け取った。他に用はあるか?」
「ないよー。後でー、王都に行ってもらうからー。覚悟はしといてねー。」
「分かった。…今回は何枚消えるかな。」
「大変だねー。」
…あれ?ここの酒場ってギルドが運営してんのか?
だとしたら、俺はもうギルドに王金貨2枚もやってんのか?
「…おごるのは別の店にするか。」
「に゛ゃっ!?」
…やっぱりここに入ってたか。
「…王金貨2枚追加だ。」
「ふーふふーふんー。」
鼻歌下手糞だな。
「猫被ってんじゃねぇぞ。」
早速【威圧】の再現である。
相手に、自分の魔力を叩きつけるイメージをする。
「…てへっ。」
マセルは手を頭の上にのせて、小さく舌を出す。
お前猫の獣人で、猫耳ついてんだから、手のせる必要なくね?
とかツッコミたい。
だがまぁ、俺の金がかかってる。
この辺はしっかりしよう。
更に魔力を叩きつける。
「ほら。追加2枚、王金貨で。」
「……ぐぬぬ。仕方ない。ほれ、王金貨2枚。」
「ありがとうございまーす。」
ダメだ。口元がニヤける。
「じゃあ、国からのほうの報酬にも期待しておきますね。化け猫さん?」
「…猫を被ってただけさ。化けてなんかない。」
「そういう事にしておくよ。」
そう言って、俺はギルドマスターの部屋を出た。
さて、もう飲んでる冒険者にはどう説明しようか。
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