十二話目
面倒だし、放っておこう。大軍って言ったってせいぜい20匹程度だろ。
正直、ドラゴンで街が滅茶苦茶になったって、俺を追い出した領主が悪いっていう風になるだろうし。
街に人が残っていればの話だが。
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時は少し戻って、ドラゴンの脳みそをぶちまけられ失神した所から、復帰したイラーエ。
「許さん…許さんぞ!あのような冒険者とかいう低俗な身分のくせに、よくも儂に恥をかかせてくれたなぁ!」
ドラゴンの脳髄と脳みそと血液まみれになった机を、叩きながらイラーエは憤った。
そこへ、セバスチャンが入ってくる。
「なっ!?如何なされましたか?!」
「あの、チヒロとかいう冒険者め…!ドラゴンを倒したからといって、良い気になりおってぇ…!」
だがイラーエは気付けない。
怒り故に。自分が冒険者によって失神したこと故に。
「チヒロ殿を…どうなさいますか…?」
「連れてこい!拒否したらこの街に二度と入れるな!」
「…かしこまりました。警備隊にはそのように。」
イラーエは、誰の問いかけかも分からずにそう答えていた。
それほどまでに、怒っていたのだ。
「…くそぉ…ドラゴンさえ来なければぁ…!」
イラーエが口にした言葉。それは、フラグだった。
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イラーエの屋敷の庭に入ったチヒロ
「なんか門番いなかったけど、ドラゴンに対応してるのか?」
そう呟いたと同時。
「GGYYYYYYYAAAAAAOOOOOOOOOO!!!!!!!!!」
その、勢いのいいドラゴンの咆哮が、俺の頭上で響き渡った。
その方向に驚いてみると、玉砕覚悟でこちらに突っ込んでくるドラゴンがいた。
「っは!いいぜ!受けてやるよ!俺の物理攻撃耐性舐めんな!」
俺は敢えて、ドラゴンを受け止めることにした。
一応このドラゴンのステータス見てみるか。
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テンペストドラゴン
魔物
レベル23
HP 85342
MP 59632
力 98639
物理攻撃耐性 86826
魔法攻撃耐性 96386
精神 78768
運 99999
スキル
【威圧】
『MPを減らして、相手の動きを止める。』
【念話】
『MPを使って、どんな相手とも意思疎通ができる』
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運高くね!?
【威圧】か。…あとで再現しとこ。
全身鎧とか冒険者に絡まれるのもう面倒だし。
とか思ってると、ドラゴンはこちらに突っ込んでくる。
あと20メートル。
踏ん張って、その攻撃を耐える。
反射で目をつぶってしまう。
…さぁ…来い!
………。
………。
………。
「え?あれ?来ない?」
そう思って、目を開ける。
するとドラゴンは、急激に上昇していた。
『やりおるわ人間よ!』
頭の中に、しわがれた男の声が聞こえてきた。
誰?そういやこのドラゴン【念話】ってスキル持ってたな。
それか?
「なんだ?できれば帰ってくれないか?」
『ふはは。人間のくせに生意気を言うわ。』
「あー、じゃあ頼みがある。この嫌に広い建物を、全てぶっ壊してくれ。」
『何故だ?お前は人間だろう?』
「人間にも色々あってな。ちょっと、恨みがあるんだ。」
『人間は大変だのう。……あい分かった。人間の、我の攻撃を受け止めようとする心意気に感動したわい。ちょっとばかし頼まれてやろう。』
「話の分かるドラゴンでよかった。できればこのまま森に帰って欲しいもんだ。」
『さすがに、自分の身内が殺されたら黙っておれんよ。…人間は違うようだがな。』
「人間は数だけは多いからな。さぁ、一気にやってくれ。」
『言われんでも分かっておるよ。』
因みに会話中、ドラゴンはずっと飛んだままだった。
会話が終わると、ドラゴンはイラーエの敷地にあるもの全てに突撃しては破壊する、を繰り返した。
でっかい屋敷が、豆腐みたいに崩れてくのには、乾いた笑いしか出なかった。
俺はよくあんな攻撃を受け止めようと思ったな…。
「ありがとー!そのまま帰ってくれー!」
『そうはいかんのが、悲しいところだのぉ。』
「…そうか。じゃあ突っ込んで来い。……互いに、自分の一撃に賭けないか?」
『なるほど。賭けるものは…』
「『自分の命』」
答えも一致したところで、始めよう。
名もないただのドラゴンのために、一騎打ちを。
『さぁ行くぞ!人間よ!』
「こっちのセリフだ!逃げるなよ!」
『「はああああああ!!!」』
さぁ決着だ。
ドラゴンはこちらに突っ込んでくる。
俺の視界は、全身鎧の時よりもスローな、スローモーションになる。
アイテムボックスから取り出した剣を構えて、素早く動き、両方の翼を切り落とす。
切り落とした翼を、アイテムボックスにしまう。
「悪い。」
そう言って、ドラゴンの首を切り落とした。
『…人間…強くなったのぉ。』
他の人間は、こうは強くないと思う。
「さて、ギルドに戻るか。」
ドラゴンの死体をアイテムボックスにしまってから、そう呟いた。
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