十一話目
「お前がチヒロだな!?」
……またこのパターンかよ。
後ろを振り向くと、やはり全身鎧がいた。
「何の用だ?」
「お前を領主反逆罪で連行させてもらう。」
「断ったら?」
「この場で殺す。」
全身鎧は、腰にかけている剣を手にしながら言った。
さて、さっそく性能テストだ。
「分かった。断る。」
「…死にたいようだな。」
全身鎧は、剣を抜いてこちらに向ける。
俺は、スイッチが入ったように周りがスローモーションになった。
戦闘になるとこうなるの面倒だな。
さて、土の剣でどれだけ切れるか。
駆け寄って、剣を横から右に薙ぎ払って腹に一発いれる。
そのつもりで剣を振るうと、全身鎧の剣はあっさりと切れた。
なんかもう、半分くらいそんな気がしていたので、とりあえず足を蹴った。
「ぐぅ!?」
メキャッ!という金属がつぶれる音と、骨が軋む音が辺りに響く。
そして全身鎧には、膝とくるぶしの間に新しい関節が出来たようだった。
「…帰るか。」
足の痛みに悶えている全身鎧を放っておいて、ギルドに戻った。
指名依頼でなくても、なにか依頼がしたい。
「……ただで済むと…思うなよ…。」
後ろから、そんな風に言われた。
「手も足も出せずにくたばった奴が、何を言ってる。」
そう残して、街の中に入ろうとした。
すると、門番に止められた。
「すまない。お前を街の中に入れることはできない。」
「え?」
「…本当に済まない。上からの命令なんだ。…できれば、あいつのようにはなりたくない。許してくれ。」
門番は、俺が足を蹴った全身鎧を指さし、震えながらそう言った。
「あー、なるほどな。上ってのはどこだ?」
「…聞いてどうする?」
「聞いてから決める。…ああなりたいか?」
「…分かった。話そう。…この街の領主であるイラーエ様だ。」
予想はしてた。
「分かった。じゃあ、俺はお前に免じてこの門からは入らないことにするよ。」
そう言って俺は、ちょっと助走を付けてジャンプした。
そう、ジャンプだ。
ドラゴンの飛行高度とほぼ同等の高さまで飛べる、ただのジャンプだ。
防壁程度、簡単に飛び越せる。
何事も無かったように、通りの真ん中に着地する。
変な目で見られるけど気にしない。
さぁて、ギルドにでも行くか。
奇異の眼で見られながらも、ギルドに入る。
すると、またファミレが受付から身を乗り出した。
「ちょっとぉ!?なんでいるの!?」
…本当に、俺が来るたびに受付から身を乗り出さなきゃいけないのか?
「いちゃいけないのか?」
「さっき、冒険者ギルドに警備隊の人が来て、チヒロ君の討伐依頼が出されたのよ!」
てことはつまり…
「悪いなチヒロ!金のために、ここで死んでもらうぜ!」「ファミレちゃんの恨み!」「恨みは無いんだ金のためなんだ!」
ギルド中の冒険者が、こちらに向かってくる。
それと同時に、俺の視界もスローモーションになる。
……ちょっと脅すか。
アサルトライフルを取り出して、冒険者に向ける。
弾の向きを逆にしてアサルトライフルに込める。
そして一人の冒険者の、耳の横を通るように発射。
パァン!という銃声のあとに、バゴン!というギルドの壁に穴が空いた音がする。
その2つの音に、冒険者たちは騒然とする。
「やるか?」
俺が、またアサルトライフルを構えてそう言うと、冒険者たちは降参した。
……というか、何事も無かったかのように酒場で乾杯していた。
俺が安堵していると、ファミレが騒いだ。
「ちょ、ちょっと!今の何よ!?というかそれは何よ!?一体どうしたらこうなるの?」
「あぁ、魔法をいじってたら勝手にできてた。頭では忘れてても、体では覚えてるのかもな。」
「…あぁ…そう。」
あれ?冒険者ギルドの人間は、冒険者の素性に干渉しないんじゃなかったっけか?
それ言うとなんか言われそうだし辞めとくか。
「なぁ、俺の討伐って言ってたけどさ、俺って魔物扱いなのか?」
「い、いえ!ギルドとしてはそんな認識ではありませんよ?あの、依頼を出した人の言い方ですので。」
「…へぇ?やっぱり、イラーエだったりするのか?」
「っは、はい。そうなります!」
一体何を緊張しているんだか。
「そういえば、その今手に持っているものって、何で作ったんですか?」
「土。」
「土!?え!?土!?」
「あぁ普通の土じゃないがな。」
「でしょうね!爆発する魔法に耐えるような土なんかないですもの!」
「じゃあ、ちょっと話し合いをしてくるよ。」
「え?誰と?」
「決まってるだろ?領主さまだよ。」
「チヒロ君?気付いてないと思うけど、頬がヒクヒクしてるからね?」
なんと。俺は相当イラついているんだろう。
「じゃ、行ってくるよ。」
ファミレは、別に止めることは無かった。
ギルドを出ようと、後ろを向くとそこには、酒臭くなったサビダがいた。
「…俺と、決闘しろ。」
「断る。色々と、話したい相手がいる。」
「…頼む。…上からの命令なんだ。」
「上から上からって、言われたことしかできないのか?それに、宿の女将さんを人質に取るような人間と、戦うなんて真似はできない。」
「…頼む。」
酒臭いサビダは、頭の鎧をとって、俺に頭を下げた。
「断る。いくら礼儀正しくしても遅い。お前は宿屋に何て言った?」
「…………………。」
何も言い返せないようだ。
俺は行かせてもらおう。
ギルドを出ると、先ほどの門番が走りながら叫んでいた。
「ドラゴンの大軍だぁあ!!!逃げろぉぉ!!」
……このパターン多くない?
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