120 事件、事件、また事件 その3
まだ人型です。すいません
「村長が懸念していることは分かりました」
さっきまで騒いでいた男性エルフは冷静になり、席に着いた。この場にいるエルフが事の複雑性を理解したのだった。
「それでどうするんですか?」
「これに対処するには人間の考えを知らなければならない、人間の今の情勢なども。しかし私たちは知らない。だから長老と彼らを呼んだのだ。彼らはつい最近まで人間と関わっていた」
村長はそう言って俺たちに手を向けた。エリカたちと長老を呼んだことまでは納得できたが、俺まで呼びつけたのは意外だった。と言うか俺たちを呼び出したのは爺さんじゃ無いのかよ?!俺が爺さんに問いと驚きの視線を向けると素知らぬ顔で
「ワシが相談があるとは言った覚えはないぞ」
時々こんな悪戯をしておちょくって来るか腹が立つ。まあ良い。俺は自分の顎を触りながら口を開いた。
「そうだな、あんたらが俺に求めている物は分かったが……悪いがそう言った人間の情勢については疎くてな」
俺がそう言うとエリカもリリアナも首を振って分からないことを示した。そりゃそうだ、こいつらはほとんどの時を奴隷として過ごしていたのだ。知る訳が無い。俺たちの返事を聞いて周りのエルフたちは意気消沈した。
「だがどう言った事を懸念していることは理解した。そして一つの提案なら出来る」
「それは?」
「人間たちが難癖付けられないようにアリスを渡し、そしてアリスを渡したことで起こる危機を回避すれば良い。その方法はー」
「確かにその方法なら、何も起こらないで済ませられるかもしれない」
村長から最初の一票がが入れられる。村長が最初に反発してくるかと思っていたのだが。
「しかし、その方法を取った場合、彼女をどこに?」
顔を知ってる一人のエルフがその問いを投げかけて来る。あれは、確か今朝牢屋であったエルフの一人だ。
「宛ては有るが……言えない」
「言えない?!」
「ああ、言えない」
「それじゃ、困る。安心してその作戦を実行できないぞ!?」
確かにこのエルフの言う通りだが、言えない物は言えないのだ。俺が言わないことに対して苛立ちを覚えたエルフが、俺に詰め寄ろうとするが。
「そこまでじゃ」
長老がここに来て初めて口を開いた。そしてその一言でエルフの動きは止まる。
「私たちは関係のない者に相談をしたのだ。そう無理に聞くのは悪いじゃろ?ワシも今の彼以上の案があるとは思えない」
言った言葉は正論でしかも長老に言われたのだ、そのエルフは引かざるを得なかった。そして村長が俺の意見に対してフォローを入れる。
「それに今回訪ねてきた人間は15人程度、調べに行かせたが控えを入れても40人程度だ。対してこちらは9000人の村だ。その中で戦える者は少なく見積もっても7000人だ。いくら村を覆っていた魔法を消せたとしても強硬策を取って来る可能性は低いだろう。こちらが知らぬ存ぜんて通せばいい話だ」
おお、村長は相手の戦力把握までしている。スゲー有能じゃん、村長。
「とりあえずこの作戦で行こうと思っている」
「本気ですか?!こんな奴が提案した案を採用するんですか?!」
「なら代案があるのか?」
「クッ」
俺に詰め寄ろうとしたエルフが村長にそう言われ黙ってしまう。
「これで会議は終わりだ。彼女は牢屋に入れて置くんだ」
その場にいたエルフたちはその場から逃げるように立ち去って行く。エリカたちは長老と俺の顔を見て、どうするかと問いかけて来る。エリカたちには先に帰るように示して、長老にはあとで話があると視線で知らせた。
そして会議室にはこの家の主と俺が残された。
「なんだ?何か話したいことでもあるのか?」
「いや、なんで俺を呼び出したのかなと思ってな。嫌ってたろ?」
俺の言葉に口の端を上げて答えてくれる。
「確かに気に食わん、だがそれを仕事に持ち込むほど未熟な精神をしている訳でもない。それにー」
ふ~ん、プライベートと仕事はしっかりと分ける人間なんだ。
「私が我慢すればエルフの村一つ救えるのであれば安いものだ」
「意外としっかりと村長の仕事をしっかりやってるんだな」
その言葉を聞くと心外だと言わんばかりの顔をする。
「当たり前だ。それとお前もちゃんとしっかり仕事をしてくれよ」
「分かったよ」
村長の言葉は背後に俺は会議室から出て行った。俺は村長を見誤っていたようだった。村長は実に有能な人物だったようだ。
「ズズズズ、はぁ~。で話しとは?」
お茶を飲み終わると爺さんは俺に質問をする。先程話があるからと目配せしたことについて聞かれた。
村長との話が終わると俺は爺さんの家に向かっただった。
「爺さん確か魔族の国に行こうと思えば行けるんだったよな?」
「ああ、確かに行けるが……」
俺が最初にここに来た時に爺さんは、魔族の国に行かないかと言われた事があったのだ。あそこで魔族の国を出すことはプラスよりマイナス面の方が多いとは思えなかった、だから言わなかった。
「まさかお前あの子を!?」
「ああ」
爺さんの声は驚愕に満ちていた。
「しかし当てがあるのか?」
「ある、紙とペンを」
「?ああ」
爺さんは引き出しから紙とペンそれとインクを俺に渡してくれる。紙は上質なものでは無く、牛の皮で作られた紙だが、しっかりと書けるように平べったかった。ペンも羽ペンだった。俺は羽ペンにインクを吸わせて紙に羽ペンを走らせる。俺はある知り合いに紹介状みたいなを書いているのだ。
「ま、こんなものかな」
俺は書き終えると羽ペンを置く。俺はざっと手紙を読みかいして納得が行く文章が書けたと思う。取り敢えず爺さんに見せてみるか。
「爺さん、こんなもんで良いと思うか?」
爺さんに見せると困ったような顔をされる。どうしたんだ?
「悪いな、ワシには読めない」
「嘘?!そんなに汚い字だった?」
なんで?読めないほど汚く書いた覚えは無いんだけど。
「いやの字の汚さが問題では無い、たぶん字はきれいに掛けていると思うぞ。だがこの文字が読めないだけじゃ」
「あ、日本語か……」
俺は自分が書いた言語を思い出した。日本語で文章を書いていたのだ、これじゃあ、誰にも読めないはずだ。
「悪いな、これは前の世界の言語だった。こっちの言語で書きなおす」
俺は書き直そうと消しゴムを本能的に探したがそんな物は無い。俺が慌てていると爺さんが俺にナイフを渡してくる。
「これで表面を削るんじゃ。それで書き直せる」
俺はナイフを慎重に紙の表面を削って行く。インクが付いた部分を徐々に削り落として行く。
「よし」
俺は三十分ほどかけてすべて削り取ると、額の汗を拭った。意外と神経を使う作業だったが、これでやっと書き始められる。俺は再び羽ペンを持ったが手がそこで止まってしまう。確かに俺は異世界語を読めるようだが書けないのだった。感覚的に読めるけど書けない漢字を書こうとするみたいだ。
「爺さん、頼む変わりに書いてくれ」
「貸してくれ」
俺は爺さんに紙と羽ペンそれとインクを託して、手紙に書く内容を口に出して爺さんに書いてもらった。
「こんなもんで良いかな」
最初に書いた物とは少し文章が違うが、要点が伝わればいいか。
「この手紙はあんたが持っててくれ、失くすんじゃないぞ」
「分かっておる。それと一週間ぐらいでここに来るそうじゃ」
爺さんが言った言葉の意味が分からなくて、俺は首を傾げた。
「船じゃ、船」
それで爺さんが迎えの船の事について言っていることが分かった。
「一週間か、割と早いな」
「ちょうど船が近くまで来ていたようでな、早く来れるそうだ」
「そうか、一週間どうやって時間を稼ぐかだな」
俺たちの計画は抜かりなく進んで行くのであった。
最近忙しくなったので、二日一回投稿は無理になってきました。最低限一週間に一回は投稿しようと思います。投稿頻度は落ちると思いますが、これからも猫転をよろしくお願いします。




