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116 熊の爪痕

遅くなりました。色々困難が立ちはだかって遅くなりました。具体的に言うと電車の中で書いてたら、電波が悪くなって突然文章が消える(二回)など、バイトと学校で忙しくて……

俺はイノシシの体に付いている傷跡を見ながらクシアに話しかけた。これは爪の傷?それにして……

「お前なんで精霊魔法を使わなかった?」

「え?使ってましたけど」

「攻撃には使っていなかっただろう、なんでだ?」

「いえ、剣の方を試してみたかったんです」

「さっき俺で試してたろ?」

「アルビオンさんは強すぎて修行相手には良いんですけど、……その、どれくらいの相手を出来るか分からなかったのでイノシシで試してんです」

クシアはそう言って血で汚れている剣を精霊魔法の水で洗い流し、綺麗にした。クシアは綺麗になった剣を見て、満足そうに頷くと鞘に剣を収めた。

「お前あのままあの一撃を貰っていたら、どうなったか分からない訳でもないだろう?」

「そうですね、アバラの骨と腕の骨は折れていてもおかしくは無いですね」

「精霊魔法だって」

精霊魔法は喋らなければ使えない。それは精霊魔法すぐにを使えないことを意味する。

「そうですね、精霊魔法もすぐに使えませんね」

「だったら!!」

俺は声を荒げてクシアの行動を責めたてるような口調になってしまった。

「いえ最悪アルビオンさんが助けてくれると思ったので」

「お前は……くっそ!!」

何か反論しようとしたが実際クシアの言う通り俺は助けに入ってしまったのだ。クシアが思った通りに自分が助けに入ったことが、何となく気に食わなくて悪態を付いた。

「今度は助けないぞ」

「どうでしょうね」

クシアは俺の態度を可笑しそうに見ているのに対して、言いたい事があったがめんどくさくなったのでやめて、再びイノシシの方に向いた。

「これは一体だれが……」

「傷口からして熊では無いのですか?だってこれ熊の爪痕ではないのですか?」

さすが森の民エルフその名は伊達では無かった、傷口を見ただけで熊の爪の後だと気づいた。だけど…

「どこの世界にこんなに指と指の間が三十センチも離れている熊がいる?」

俺は熊の爪と爪の間を指さした。

「熊の手の平としては大きすぎるだろう」

「…そうですね」

「熊の爪を武器として使っている奴がいると言う事だ。しかもこの森、そして俺たちの近くに」

クシアが気配を探るように視線だけを辺りに走らせる。こいつも気づいたようだ、このイノシシの傷を見る限り、さっき付けられた傷だ。それはイノシシを傷つけた奴が近くにいる事を意味する。数十秒の静寂。



「上だ」

俺が敵の攻撃を感知して声を上げる。クシアが上を向くと同時に木から飛び出す影が俺に向かって落下してくる。俺とクシアはその場から離れた。

「やっぱり近くに隠れていたか……」

さっきまで俺たちがいた所に着地すると迷う事無く俺の方に向かってきた。やっぱり様子を伺ってどちらから倒すか考えていたようだった。そして脅威になる俺から倒すようことに決めたようだ。手には熊の爪で作ったと思われるナイフ。服は毛皮の下に赤黒い服を着ていた。赤黒い髪はぼさぼさで伸びきっていた。背格好はクシアと同じくらい。


俺に向かってくるのと合わせて頭に回し蹴りがヒットさせようよ考えた。もちろん決まったら頭が一発で吹っ飛ぶ。そんな一撃だ。生かす気なんて全然無い。



それを……しゃがんでかわしただと!!



格闘技に関してスキルも持って無い素人の攻撃だが、早すぎて蹴りの予備動作などを見て避ける事なんて出来る訳が無い。


俺の蹴りは空を蹴り、相手に大きなスキを見せることになった。俺がそいつを見ると髪の間から見える瞳と視線があったような気がした。顔に視線が向いている、顔?狙われているのは、首か!!


くっそ、体が足に振り回されて、避けれない。ナイフは着実に俺の首に近づいてくる、避けれないなら。



あえて当たりに行く!!



俺は自分から体を傾けて、ナイフに当たりに行った。力が乗る前にナイフに当たられば俺のDEFを考えれば、肌に深い傷を作ることは無いはずだ。だけど……。


「グッホ!!」


確かにナイフでは肌が傷付く事は無かったが、打撃力が無くなる訳では無い、喉に思いっきり力が掛った。俺は余りの痛さに地面に転がりながら敵から離れた。



「ぐっそ!!むぢゃぐぢゃあいだかっだ(くっそ!!無茶苦茶痛かった)」


俺は喉の辺りを撫でながら、涙目で敵を思いっきり睨んだ。俺の手の平にはうっすらと血が付いていた。薄皮一枚斬られただけだったようだ。


「?!」


一方敵はそんな俺に驚いているようだった。力が乗る前に当たっていたと言え、浅い傷で済んでいることに驚いているようだった。


水球すいきゅう!!」


驚いている所を付く様に背後からクシアが攻撃を仕掛ける。手の平から頭一つ分ぐらいある水の玉が発射される。


よし、完璧に意表を突いた!!これなら当たる!!


敵は腕を頭の前にクロスさせて、水球が当たると同時に後ろにジャンプをした。たぶんダメージを抑えるためだろう。クシアは更なる追撃のために手の平を敵に向け追いかける。


「水球!!水球!!」


さらにクシアは水球を連射していく。このまま油断しないでクシアが攻撃してれば放っておいても勝てるだろう。と言うかクシア手加減してるな、水以外にも風や土小規模なら火などが使えるはずだ。なのにあいつ出来るだけ傷つけないで無力化するつもりだろう、全く。



「すいッ!!」



あと一発当てればノックダウンの所で、敵が下がるのをやめてクシアに接近して来た。敵もこのままじゃ負けることが分かっているので何かするだろうとは思っていた。クシアももちろん分かっている。すぐに対処をした。水球で使っていた手の平を掌底打ちにして、体に打ち込もうとすると敵はわずかの体を動かし、空を切った腕を脇に挟んで動けないように止めた。クシアが止められることに驚いてはいなくて、すぐに敵の顔を蹴り上げようとつま先を浮かせたが足を踏まれて蹴りも防がれる。それついてはクシアも驚いたが俺も驚いていた。クシアが驚いている所を突かれ頭突きをされて、体が離れた所を蹴り上げられる。クシアの体は地面に背中から無様に倒れる、そこをナイフをクシアに突き刺そうとジャンプしてくる。



俺は素早くクシアに近づくと咄クシアの首元を掴んで、その場から離した。

「大丈夫か?」

「ゴホッゴホッ、はい」

首元を付かんだことでむせたようだ。命が助かったんだから、これで済んで良かったと思って欲しい。

「アハハハハ」

「何が可笑しい?」

突然クシアが笑い出した事に驚いたが、敵から目線を逸らさないで聞いた。

「いえ、さっき今度は助けないとか言っていたのに。(バシッ!!) 痛ッ!!」

「ここからは俺がやる。お前寝てろ」

俺は照れ隠しとこんな時にそんな事で笑うクシアにムカついて、後頭部を叩いたのだった。

「何も叩かなくてもいいのに……」

「……」



俺はそんなボヤキを無視して敵を鑑定した。



マリア  

レベル19

HP50/415 

MP120/420


STR(攻撃力):1550

DEF(防御力):850 

INT(賢さ):600

AGL(素早さ):920

DEX(器用さ):950


短剣術2

HP増加1

暗視4

吸血2

生命力強化3

毒耐性3

魔眼(未来予測) 



色々興味深いスキルを持っているな。魔眼を持っているのか……しかも未来予測。それと吸血か。


吸血鬼?しかし既に吸血鬼は滅んでいるはずだ。


……まあいいや、それは。


取り敢えずこいつが何で攻撃を避けることが出来るか分かった、魔眼(未来予測)取り敢えず鑑定。


魔眼(未来予測)…筋肉・魔力の動きによって行動を予測する。見ている長さ・予測する長さによって魔力を多く消費していく。



これなら適当に戦って魔力を減らせば未来を予測できなくなって、普通に勝てると思うな。本気でやって勝てないことは無いと思うけど……変な事しないで地道にやって行くか。


蹴りはやめて拳だけで、大きく振らないで小振りに腕を振ってスキを作らないようにして置くことを念頭に。


バンッ!!ババっバン!!


俺の拳が敵を砕こうと放たれる。無理に当てる必要は無い。ただその場に留まったら当たるようにパンチをするだけで良い。狙うのは魔力切れだ。




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