117 勝利
二次選考 通りました
人型から始まります
そろそろ魔力が切れるな。逃げられないように魔力が切れたら速攻でしかけよう。魔力の減り具合を見る限り後二回ぐらいだろう。
拳を敵のボディに向かって拳を放つ、それを敵は危なげなくかわす。これでラストだな。最後は
「我が手の平に収縮して放たれろ、水球!!」
俺は敵に逃げられないように、あえて魔力を一回分残した。たぶんこいつは森の中に逃げるだろう。追いつけないことは無いが、森の中まで追いかけに行くのはめんどくさいし、捕まえられるときに捕まえておこうと考えたからだ。
敵は俺の攻撃を魔眼で見たようで、避けようと体を動かしたが既に遅い。さっきまで接近をしていたのだ、そんな近くから水の塊を発射したから、避けるのは難しいだろう。それに俺が放った水球はクシアの水球よりはるかに大きく、俺と同じくらいの水の塊だ。既にこいつの動きでは避けきれないだろう。
敵は俺が放った水の直撃を受け、背後の木に叩き付けられた。一応HPも残っている。
「す、すごいですね。あんな大きな水球を作るなんて……」
「あれくらいはどうって事は無い。技術が無い魔力を籠めただけの力押しだ」」
俺は倒れている敵に近づくと前髪を上げて顔を確認した。
「女の子ですか?」
クシアが俺の肩から顔を出して戸惑いの声を上げてくる。
名前から何となく察していたが、やはり女の子だったか。
「どうするんですか?」
「ここで殺す」
「え?!」
こんな所でうろついている吸血鬼?とかと関わったら碌なことは無い。このようなトラブルの種は早々に摘み取って置くことがベストだ。
「待ってください!!アルビオンさん、女の子ですよ!!」
「だから何だ?」
クシアが俺の手にしがみ付いて来る。
「アルビオンさんは僕と同じくらいの、しかも女の子を殺すなんて!!」
「お前は自分を殺そうとした者を生かす気か?」
「それは……」
「それに捕まえたとして俺はこいつの面倒見るのはいやだぞ。それにこいつを連れて帰ったらこいつを入れて置く部屋、それと食事、風呂」
「でも、一応村長に伝えなければいけませんし……」
「そうか、なら好きにしろ。お前が自分で連れて行け」
これは村の決まりだ、俺がどうこう言う事では無い。だが少しだけサービスをしてやろう。フレッシュ。
俺は少女に手を置いて魔法をかけた。少女の体がさっきとは見違えるほど綺麗になる。赤黒かった髪はスカーレット色になり、毛皮の下に着ていた服は赤色から白色に。血ですべてが汚れていたようだ。髪もぼさぼさだったのが、今はサラサラだ。
「ほら、そいつ背負え。行くぞ」
「はい」
「じゃあ僕はこれで」
「ああ」
村の前の門に着くと俺は先に村の中に入っていた。クシアは門番のエルフ兄さんと話をしている。たぶんあの少女の事だろう。手はクシアが持っていた紐でしっかりと結んで、クシアの肩に担がれている。魔法は使えないからあの程度の拘束で大丈夫だろう。
俺は近くの川で体の汗を流そうと思った。別に汗を流すだけならフレッシュで流せばいいけど、体の火照りを冷ましたっかのだ。
川岸の地面はすでに乾いていて泥は無かった。たぶん川の水によって早い段階から雪が流れていたんだろう、雪が減ったことで早く地面を太陽の下に晒されたから他の地面より早く乾いたんだろう。川の水を掬おうと両手を入れる。
「冷たっ!!」
川に流れているのは雪解け水なのだ、冷たくて当然だ。
「まあ、温かいよりはマシだけどな」
そう呟くと川の水を両手で掬って顔を冷やした。
「マジで冷たい」
こんな冷たいので体の汗を流したら風邪をひいてしまうな。後は飲むだけでいいや。
俺はさっきと同じように手で水を掬うと口の中に水を注ぎ込んだ。水が口の中に入り喉を通り胃に入って行くことが分かるほど冷たい。
「体が潤う~……」
体が潤ったところで爺さん(長老)の所に行ってみるかな。聞きたいこともあるしな。俺はそう考えるとこの川の上流にある爺さんの家に向かった。
「おい爺さん、生きてるか?」
「心配するな、まだ寿命は有り余っておる」
玄関から出て来た爺さんは串焼きにした魚を片手に玄関から顔を出した。
「魚焼いてるのか?俺にもくれ」
「上がれ上がれ、魚は有り余ってる」
家の中心の囲炉裏で魚がすでに二匹焼かれていた。
「これ貰うぞ」
その中の一本を取ると口に含んだ。昔食べたアユの塩焼き(塩なし)みたいな味がする。ぱさぱさした感じで不味くは無かった。
「塩だ、付けてみろ」
おそらく岩塩から作った塩だろう。近くに岩塩のような白い石もある。軽く塩を振ると
「美味いな」
「魚は丁度この季節取りやすくなる、余ったら塩漬けにするつもりだ」
爺さんはそう言って一匹串に刺すと囲炉裏の中に突き刺した。
「でアルビオンよ、お主が春明早々にここに来たのは何も魚を食べに来た訳では無かろう」
「察しが良くて助かるぜ、聞きたいことがあって来た」
「ほお~で聞きたいこととは?」
「吸血を持っている種族は吸血鬼以外にいるのか?それとこの本に書いてあることは全て真実か聞きたい」
俺はアイテムボックスから本の角を見せる。教会の禁書置き場から取ってきた本だ。
「吸血を持っているのモンスターもいる、前にも言ったがその本に書いてあるものは本当」
「吸血は人型に限定してくれ」
「それならばいない、それにしてもどうして急にそんな事を?」
「今朝、俺がエルフの少年と森に行ったら吸血を持った女性に襲われた」
「……吸血を持っていると言う事は吸血鬼だと言う事じゃが……」
「この本には吸血鬼はすでに絶滅していると書いてある」
「……」
爺さんは俺の言葉を聞いて魚を口にはこんでいる手を止めて、目をつぶって沈黙する。このような事態になる場合を考えているようだ。
「……可能性とすればその少女が転生者ぐらいじゃな。吸血鬼が絶滅した後にこっちの世界に来た。だが女神様にはそのような報告は……」
「そうか」
爺さんの答えを聞いて、俺は串に刺さっている残りの魚を一気に食べると席を立った。
「どこに行くんじゃ?」
「本人に直接聞きに行く」
俺はそう言うと家から出た。少女がどこにいるかは知らないがクシアに聞けば分かるだろう。




