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第8話 空の色

青かった。


たぶん。


俺の未熟な感覚器官では色の区別が曖昧だ。


それでも上には広い何かがあり、明るい。


木々が揺れている。


地面には土。


自分の身体も初めて見えた。


《……ひどいな》


半透明の管が絡み合った塊。


中央に青白く光る魔核。


四本の脚。


背後には噴射管。


前には三本の砲管。


どう見ても化け物だ。


だが嫌ではなかった。


これは全部、自分で作った身体だ。


一本ずつ意味がある。


俺は自分の脚をしばらく眺めた。


見えるだけで楽しい。


その平穏は長く続かなかった。


森の奥から、見覚えのある巨大な影が出てきた。


宿主の死体を食っていた捕食者。


狼に似た四足獣。


ただし口が縦に二つ裂け、前脚が異様に長い。


あの時は逃げるしかなかった。


今は違う。


相手が俺を見つける。


唸る。


初めて音として聞こえたわけではない。


地面の振動と、視覚が同時に入ってくる。


捕食者が走る。


速い。


俺は正面から待った。


高圧魔力砲を三本展開。


一発目。


相手が避ける。


二発目。


肩へ命中。


皮膚を抜けたが浅い。


三発目。


撃たない。


相手は最後の射線を警戒して進路を変える。


そこへ噴射。


俺自身が突っ込む。


砲管を槍として口の中へ差し込んだ。


至近距離で発射。


頭部が跳ねる。


俺の砲管も吹き飛んだ。


捕食者が倒れる。


《勝った》


あれほど怖かった相手に。


しかも、新しい能力ではなく、今まで作ったものの組み合わせで。


爽快だった。


だが俺はすぐ死体へ寄った。


勝利より気になる。


《お前、どうやって俺を見つけてた?》


頭部へ枝を伸ばす。


そこには嗅覚でも視覚でもない、奇妙な感覚器官があった。







捕食者の額の奥には、小さな結晶体があった。

周囲の魔力濃度を方向ごとに感じ取る器官。俺の構造解析に近いが、接触がいらない。


【特性候補:魔力感知/追跡/濃度識別】


光感知も反響探知もある。感覚ばかり増やしても戦闘力は上がらない。

それでも俺は『魔力感知』を選んだ。


理由は単純。人間が使った魔法を見たいから。


新しい感覚器官が中央部に形成される。

開く。


世界がまた変わった。

空気中に薄い魔力。地面の下に流れ。植物にも微弱な反応。遠くの魔物は輪郭のある光として見える。


光感知と重ねると、普通の景色の上に魔力の景色が重なった。


《すげえ》


捕食者の死体を見る。

筋肉、骨、魔力経路。今まで接触しなければ分からなかったものが、ある程度なら外から見える。

ただし詳細解析はできない。便利だが万能ではない。


俺は捕食者の筋肉を少し切り取り、自分の擬似収縮構造と比べた。

本物の方が遥かに効率がいいが、そのまま移植はできない。規格が違う。


そこで、魔力で収縮率を変化させる仕組みだけを真似て脚へ組み込む。


走る。

以前より速い。噴射なしでも十分な速度が出る。


【擬似収縮構造を強化】


古い能力がまた一つ更新された。


その夜。

森の中で、遠くに規則的な魔力の光を見た。


何十。何百。

自然の生物とは違う配置。壁のように並ぶ光。その内側に、多数の人型反応。


《街……?》


人間社会が、思ったより近くにあった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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