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第7話 二本脚の生き物

三つの反応は地下空洞の入口で止まった。


何かが光ったらしい。


俺には見えない。


だが魔力が一定範囲へ広がった。


その直後、声が聞こえた。


正確には、音そのものではない。


地面と空気を通る振動。


意味は分からない。


でも会話している。


「――――」


「――、――――」


懐かしい。


内容は一つも分からないのに、誰かが喋っているだけで妙に胸の奥が動いた。


俺には胸がないけど。


《人間か?》


近づきたい。


同時に、今の自分を考える。


四本脚。

管だらけ。

中央に光る魔核。


どう見ても魔物だ。


声も出せない。


近づけば殺される可能性が高い。


俺は岩陰から反響探知だけを飛ばした。


三人。


二足歩行。


装備を身につけている。


一人が杖のようなものを持つ。


その先から魔力が放たれた。


空中で形が変わる。


今まで見た生体能力とはまるで違う。


魔力が身体の外で組み替わっている。


《魔法》


見たい。


もっと近くで。


俺は少しずつ距離を詰めた。


そのとき、三人のうち一人が振り向いた。


俺の方へ。


魔力が集まる。


気づかれた。


「――!」


鋭い声。


次いで、火球が飛んできた。


俺は噴射で逃げた。


岩が爆ぜる。


《やっぱり撃つよな!》


逃げながらも、俺の意識は火球の構造を追っていた。


生物の器官なしで、どうやって炎を維持している?


知りたい。


だが二発目が来る。


俺は地下の狭い裂け目へ飛び込んだ。


追っては来なかった。


しばらくして振動が遠ざかる。


初接触は失敗。


会話もできない。


それでも一つ、次の目標が増えた。


《いつか、あれと話す》


そのためには声が必要だ。


人の姿はまだ遠い。


まず、音を出す器官が欲しい。







人間らしき三人が去ったあと、俺は地上付近へ出た。


反響探知だけでも歩けるが、空間が広くなると精度が落ちる。地下では壁が近かった。外では反射が返ってこない方向が多い。


《不便だ》


初めて、視覚が本気で欲しくなった。


周囲には草、木、石。魔力反応も多い。だが色も遠景も分からない。


しばらく探索していると、頭上から小さな反応が急降下してきた。


翼。

俺は噴射で避ける。爪が地面を掠めた。


鳥型の魔物。空を飛んでいる。


《翼も欲しいけど……》


もっと気になるものがある。

頭部に二つ、微細な魔力反応。感覚器官。目だ。


鳥型魔物が再び降下する。

俺は高圧魔力砲を一本だけ構え、近づくまで待つ。


爪が届く直前、噴射で横へ。

すれ違いざまに魔力砲を撃つ。


翼の付け根を貫いた。

魔物が地面へ落ちる。


俺は即座に飛びつき、目へ枝を伸ばした。


光を受ける膜。焦点を合わせる透明体。神経に似た魔力伝達束。

複雑だ。丸ごとは作れない。


【感覚器官構造を解析】

【特性候補:光感知/遠距離焦点/動体認識】


俺は『光感知』を選んだ。一番基礎だからだ。


枝の先に小さな透明膜ができる。

次いで、白い何かが飛び込んできた。


眩しい。

情報が多すぎる。


俺は反射的に感覚を切った。


《これが……見る、か》


もう一度、恐る恐る光感知器官を開く。

ぼやけた世界があった。色も輪郭も滲んでいる。


それでも、空が見えた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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