第6話 見えない怪物
巨大な八脚生物は、俺の十倍以上あった。
反響探知で輪郭を取る。
低い胴体。
鋏のような前肢。
背中に厚い殻。
そして内部に、複数の魔力反応。
一個じゃない。
器官ごとに役割が違う。
《宝箱じゃん》
気づかれた。
前肢が振り下ろされる。
噴射。
横へ飛ぶ。
地面が砕けた。
今までの敵とは威力が違う。
魔力弾を撃つ。
弾かれた。
外殻が硬すぎる。
二発。
三発。
効かない。
相手の脚が横薙ぎに来る。
避けきれず、二本の脚を失った。
【構造損失:18%】
《強い》
逃げるべきだ。
そう判断できる程度には理性がある。
俺は後方噴射で距離を取った。
八脚生物が追う。
速い。
狭い裂け目へ逃げ込む。
相手は入口で止まる。
入れない。
助かった。
だが俺はその場を離れなかった。
壁越しに振動を拾う。
相手が歩く。
止まる。
地面へ腹をつける。
次の瞬間。
土の中を何かが走った。
衝撃波。
裂け目全体が揺れる。
俺の身体が壁へ叩きつけられた。
《遠距離もあるのかよ》
欲しい。
でも今は勝てない。
その事実を認める。
俺はさらに奥へ逃げた。
負けた。
能力も取れなかった。
だが一つだけ収穫がある。
格上がいる。
そして、俺の今の身体では通らない防御がある。
《次は、殻を抜ける攻撃が要る》
◇
八脚生物に負けたあと、俺は攻撃方法を見直した。
魔力弾は便利だが威力が足りない。単純に魔力を増やせば、発射管が壊れる。
なら壊れる前提で使えばいい。
一本の枝を今までより太く作り、内部へ何本もの分流経路を通す。根元に魔力嚢。先端は極端に細くする。
魔力を溜める。圧縮。さらに圧縮。
枝が膨らみ、限界直前で放つ。
岩に穴が開いた。
同時に発射用の枝は裂ける。
【高圧魔力射出成功】
《一発使い捨て砲》
悪くない。
自己補修と増殖がある俺なら、使い捨ての欠点を軽減できる。
分流。魔力嚢。噴射。増殖。
単独では地味な能力でも、全部つなげると岩を抜く。
何度も試射し、太さ、長さ、圧縮時間を最適化する。
撃つたびに枝が破裂するなら、発射管を複数作ればいい。
左右に二本。さらに一本。
三連装。
身体の形がまた変わった。
中央に暫定魔核。四本脚。後方噴射管。そして前方へ三本の長い魔力砲管。
生物というより兵器に近い。
《まあ、人外だしな》
次に八脚生物へ会ったら、殻を撃ち抜く。
そう思った時、地上側から聞いたことのない振動が複数近づいてきた。
二足歩行。一定間隔。金属音のような硬い振動。
一体ではない。三体。
そして、明らかに魔物とは違う魔力の動き。
俺は初めて、人間かもしれない存在を感じた。
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