第5話 初めて狩る
裂け目の奥には、小型生物が三匹いた。
反響探知で位置は分かる。
一匹目は細長い。
二匹目は殻が硬い。
三匹目は、体内に妙な魔力袋を持っている。
三匹目が欲しい。
俺は近づいた。
今までの戦いは全部、襲われた結果だった。
今回は違う。
俺が狙っている。
少しだけ躊躇した。
相手が敵かどうかも分からない。
だが、魔力袋の構造を知りたい。
《……行く》
魔力弾を撃つ。
外した。
相手が逃げる。
速い。
俺は四脚で追う。
狭い裂け目を曲がり、岩を越える。
相手は壁を登った。
俺の脚では追えない。
なら作る。
脚の先端を細く割り、壁の隙間へ差し込む。
固定。
登る。
途中で一本抜ける。
落ちる。
再び登る。
追いついた。
今度は魔力弾ではなく、枝を直接伸ばす。
相手の身体へ巻き付ける。
体内の魔力袋が膨らんだ。
次の瞬間、熱が来た。
炎。
俺の枝が焼け落ちる。
《火を出せるのか》
痛い。
でも嬉しい。
欲しかったものが、予想より面白い。
俺はあえて距離を取らなかった。
もう一度炎を受ける。
魔力袋が圧縮される。
内部で魔力の性質が変わる。
出口で空気と混ざり、燃焼。
《なるほど》
三発目が来る前に、魔力弾を袋の付け根へ撃ち込んだ。
相手が痙攣した。
炎が止まる。
俺は接触する。
【熱変換器官の構造を解析】
【特性候補:耐熱/魔力加熱/噴射】
また三つ。
全部欲しい。
今回は選ぶ前に考えた。
単体ではなく、今ある能力と組み合わせたら何が化ける?
俺は『噴射』を選んだ。
◇
噴射は単純だった。
魔力や気体を後方へ勢いよく吐き出し、その反動を使う。
俺には口も肺もない。だが魔力嚢がある。
そこから細い管を後方へ伸ばし、魔力を一気に放出する。
試す。
飛んだ。
正確には、壁へ激突した。
【構造損傷率:12%】
《速っ》
痛みながらもう一度。
今度は四脚で姿勢を固定し、後方噴射。
身体が前へ跳ねる。脚で着地。転がる。
失敗。
何度も繰り返す。
脚は走行用。噴射は加速用。反響探知は進路確認。
三つを同時に使う。
やがて裂け目の中を一気に駆け抜けられるようになった。
【複合運動制御を確認】
俺は楽しくなって、必要もないのに何度も往復した。
生まれた時は一ミリも動けなかった。今は走れる。
この変化がたまらない。
そのまま地下空洞を探索する。
小型生物、鉱石、細い地下水。触れるもの全部が新しい。
ただ、体格の問題が出てきた。
能力を使うほど魔力を消費し、暫定魔核だけでは回復が遅い。
外から魔力を取り込む方法が欲しい。
選択しなかった『吸収』が頭をよぎる。
《でも、選ばなかったから今の増殖がある》
全部取れない。
だから面白いのかもしれない。
空洞の奥から、大きな振動が来た。
小型ではない。さっきまでとは別格。
八本脚。太い外殻。地面を叩くたび、俺の身体まで震える。
そしてそいつは、俺が倒した生物の死体を一口で食った。
《……あれなら、何を持ってる?》
逃げ道を確認しながら、俺は近づいた。
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