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第24話 森そのものと戦う

地面が消えた。


そう錯覚するほど大量の根が飛び出した。


俺は垂直噴射。


上へ。


空中で身体を四脚型へ縮める。


枝が横から迫る。


砲撃。


一本を砕く。


次の十本が来る。


《多すぎる》


森冠獣本体を狙う以前の問題だ。


周囲数百メートルが敵。


俺は魔力感知を最大まで広げた。


植物へ流れる魔力経路。


すべてが森冠獣へ直結しているわけではない。


一度、地中の節点を通って分配されている。


《神経節みたいなものか》


なら切れる。


着地。


前脚を地面へ突き刺す。


振動増幅。


反響探知。


地下構造を一気に読む。


三十メートル先、深さ四メートル。


大きな魔力節点。


高圧砲を地中へ。


撃つ。


地面が吹き上がった。


同時に周囲の木々が止まる。


当たり。


森冠獣が咆哮する。


俺へ突進。


本体が来た。


速い。


巨体に似合わない。


俺は避けず、直前まで観察した。


皮下魔力が前頭部へ集中。


防御と突進を同時に成立させている。


あと一メートル。


噴射。


横へ。


角が胴体を掠める。


【構造損傷:22%】


一撃でこれ。


笑える。


俺はすれ違いざま黒結晶へ把持器官を伸ばした。


届いた。


接触。


情報が流れ込む。


魔力増幅。


生体接続。


成長促進。


そして、もっと古い何か。


解析しきれない規則。


【未知構造を検出】


【既存世界生体構造との一致率:低】


《異物?》


森冠獣が身体を振る。


俺は吹き飛ばされた。


黒結晶の表面だけが一本、俺の手に残る。


森冠獣の怒りが跳ね上がった。


『盗むな』


「オマエモ、トッタダロ」


返事はない。


でも確信した。


あの黒結晶が、森冠獣を変えた。


そして俺の魔核と何か関係がある。



勝てない。

黒結晶へ触れた時点で、それははっきりした。


森冠獣の魔力量は俺の数十倍。周囲の森まで使える。火力も防御も範囲も上。


だから勝利条件を変える。


生きて帰る。

黒結晶片を持ち帰る。

可能なら、もう一つ観察する。


それで勝ちだ。


俺は二足形態へ移行する。

右手に黒結晶片。左腕を砲へ。


走る。

地面から根。左腕で撃ち、前方の木を倒す。倒木へ乗り、噴射。枝を掴んで振り子のように身体を飛ばす。


《これ、楽しいな》


逃げているのに、新しい動きが増える。


背後から魔力が集まる。

枝角攻撃。


俺は振り向いた。

一度見たい。どこまで圧縮される? どんな経路で放つ?


危険だ。

だから見る。


光線が来た。

避けきれない。

右腕と胴体の三割が消える。


【構造損傷:58%】


黒結晶片を落とし、反射的に左手で拾う。


《危な》


もう観察は十分だ。

逃げる。


四脚へ戻す魔力が足りない。

二足のまま走る。


魔晶骨格で身体を支え、腕を振り、重心を前へ送る。

速度が上がった。


【独立二足高速移動:成立】


谷まであと二百メートル。百。五十。

背後で枝角が再び光る。


撃たれたら終わる。


残った魔力嚢を脚へ直結し、全量噴射。


跳ぶ。

谷を越える。


着地と同時に両脚が砕けた。

動けない。


だが森冠獣は谷の向こうで止まった。


勝ってはいない。

それでも生きた。


左手の中には黒結晶片がある。


《十分》


負け方としては、悪くない。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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