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第22話 人型を観察する

集落の柵へ魔物が殺到した。


牙を持つ小型獣。


跳躍する甲殻虫。


蔓を伸ばす植物型。


種類が統一されていない。


森冠獣に追われ、逃げ道として集落へ流れ込んだだけかもしれない。


だが後方の巨大反応は動かない。


観察しているようにも見える。


まず目の前だ。


俺は二足形態で柵を越えた。


「ネクサ!」


セラが止める声。


聞かない。


試したい。


右腕へ高圧魔力砲。


左腕は把持器官。


脚内部に魔晶骨格。


背面へ噴射口。


一体目。


撃つ。


頭部を貫通。


二体目が横から飛ぶ。


左手で牙を掴む。


振動反転。


顎が砕ける。


そのまま身体を振り回し、三体目へぶつけた。


四体目。


背後。


聴覚膜と振動感知で位置を取る。


振り向かず、噴射で後方へ体当たり。


吹き飛ばす。


《二足、悪くない》


四脚より最高速度は落ちる。


代わりに上半身の自由度が高い。


器官再配置との相性がいい。


右腕を砲から刃へ。


魔晶骨格を先端まで伸ばし、薄い刃を形成。


魔力編成で表面だけ補強。


甲殻虫の殻を斬る。


【複合武装形態を確認】


戦うほど身体の使い方が洗練されていく。


敵の群れが減る。


灰角族も強い。


槍隊が正面を止め、弓と魔法が後方から削る。


俺一人で守っているわけではない。


最後の大型獣が柵へ突っ込む。


俺は真正面へ。


腕を一本の太い砲身へ変える。


魔力嚢二つを直結。


分流で圧縮。


魔力編成で砲口外に加速経路を形成。


発射。


白い線が獣の胸を抜け、その後ろの岩まで砕いた。


反動で俺も十メートル転がる。


【外部加速式高圧魔力砲:成立】


起き上がると、周囲が静かだった。


灰角族たちが俺を見ている。


ケインがぽつりと言った。


「人型になっても、やっぱり化け物だな」


「ソレ、ホメテル?」


「半分はな」


半分なら十分だ。


その時、森冠獣が遠くで咆哮した。


今度は明確に、こちらへ怒りを向けていた。



森冠獣は翌朝まで動かなかった。

集落は避難を始める。戦う選択はないらしい。

正しいと思う。本体が来れば集落は壊れる。


俺も勝てるとは思っていない。

でも観察はしたい。


「オレ、ノコル」


「馬鹿か?」


「ウン、タブン」


セラは本気で怒った。


「勝てないって分かってるだろ」


「カツ、モクテキ、チガウ」


目的は、最近急激に強くなった理由と、森を器官のように使う仕組みを見ること。そして可能なら何か一つ奪うこと。


最後の人々が離れた昼過ぎ、森が静かになった。

巨大な魔力が近づく。


木々の間から枝角、頭、胴体が現れる。

近くで見ると、さらに大きい。


皮膚の一部に、不自然な黒い結晶が食い込んでいた。


《あれは元からの器官じゃない》


森冠獣の魔力経路が、その黒結晶を中心に増殖している。

何かを取り込み、身体を変えた。


俺と少し似ている。


森冠獣が俺を見た。

知性を感じる目だった。


「オマエ、ナニ、トッタ?」


試しに話しかけただけだった。

ところが。


『――返せ』


意味が直接、意識へ落ちてきた。


俺は固まる。

声ではない。魔力経路を介した情報伝達。


それはシステム通知とも違う。

外部から俺の認識そのものへ触れてきた。

全身の魔力経路に薄いノイズが走り、思考が一瞬だけ遅れる。


『核を、返せ』


《核?》


俺の中央にある擬似生体核。その原型は、最初の宿主から奪った魔核片だ。


森冠獣はそれを見ている。

なぜ知っている?


問いを口にする前に、枝角が輝いた。


森全体の魔力が俺へ向いた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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