↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

第21話 身体を橋にする

谷幅十二メートル。


俺の増殖だけで橋を作るには長すぎる。


構造強度も足りない。


なら全部を作る必要はない。


俺は谷の両側を見る。


片側に太い岩柱。


向こう側に倒木。


把持器官を二本の長い索状器官へ変える。


一本を岩柱へ固定。


もう一本を噴射しながら向こう岸へ伸ばす。


届かない。


途中で限界。


《あと三メートル》


魔力編成。


身体外へ細い仮設経路を作り、増殖器官の先端を一時延長する。


不安定だ。


それでも倒木へ巻きついた。


【複合構造:外部支持索】


俺の身体を一本の張った索にする。


「ツカマレ」


五人が俺を見る。


「これを渡れって?」


「ハヤク」


説明している暇はない。


最初の一人が恐る恐る掴んだ。


重い。


人間型一人の体重で内部魔力路が軋む。


二人目。


三人目。


俺の損傷率が上がる。


【構造損傷:17%】


後方で森冠獣が岩場へ出た。


枝角が光る。


「イソゲ!」


四人目が渡る。


最後は負傷した男。


途中で索が切れかけた。


俺は自分の脚二本を分解して補強材へ回す。


移動能力を捨てて、橋を維持する。


男が向こう岸へ転がり込んだ瞬間、木槍が飛んできた。


俺の中央胴体を貫く。


【構造損傷:43%】


痛い。


だが核は外した。


俺は支持索を解除。


こちら側の固定を切る。


身体が谷へ落ちる。


その勢いを利用して噴射器官を最大出力。


弧を描いて向こう岸へ。


着地失敗。


岩へ叩きつけられた。


「ネクサ!」


さっきまで警戒していた連中の一人が俺の名前を呼んだ。


妙な感じだ。


俺は残った器官で立ち上がる。


「ダイジョウブ」


森冠獣は谷の向こうで止まった。


こちらへ来ない。


深森の王にも縄張りがあるらしい。


全員が生き残った。


俺は自分の壊れた身体を見る。


橋にもなれる。


《人型になる前に、ますます人型から離れてる気がする》


でも、それでいい。


形は用途だ。


本質ではない。



谷を越えた後、五人はようやく武器を下ろした。

完全ではない。俺へ向けていた刃先が地面へ向いただけだ。十分だ。


先頭の女が名乗る。


「私はセラ。灰角族の斥候だ」


灰角族。彼ら自身の種族名らしい。

残りはトウマ、イェル、バル、負傷したケイン。死んだ六人目はロウという名だった。


俺は少し黙った。


さっき解析した死体にも、名前があった。

当然なのに、その事実が遅れて刺さる。


「ロウ。シッテル」


空気が変わった。


「どこで見た?」


「シンダ。キタ、ミチ」


「触ったのか?」


「サワッタ。カラダ、シラベル」


武器が再び上がった。

言い方を間違えたらしい。いや、内容そのものも問題か。


「アルク、シクミ。ホネ。カンセツ。シラベタ」


沈黙。

ケインが小さく笑う。


「こいつ、本当に化け物だな」


否定できない。


「ウン」


今度は全員が変な顔をした。


話し合いの結果、彼らは俺を敵とはみなさないことにした。助けたから。ただし信用もしない。

合理的だ。俺も同じだ。


彼らは深森北側の小集落から来たらしい。

森冠獣は昔からいる。だが最近、急激に強くなり、枝角の数まで増えているという。


《進化してる?》


俺と同じように。


セラが俺を見る。


「お前も変わるのか?」


「カワル。ジブンデ、ツクル」


「……似たもの同士かもな」


それは嫌だ。あんな巨体になる予定はない。たぶん。


彼らの集落まで同行することになった。

理由は二つ。


人型構造をもっと観察できる。

そして森冠獣の情報がある。


どちらも断る理由がなかった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


続きが気になった方は、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。