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第20話 深森の王

五人は散開していた。


人型種のうち三人が前衛。


二人が後方から魔法を撃っている。


連携は悪くない。


相手が悪すぎる。


巨大魔物が首を振る。


枝角の一本が光った。


次いで、地面から木の槍が数十本生えた。


一人が貫かれる寸前、仲間が押し倒して避ける。


《外部魔力編成……いや、違う》


魔力が地中の植物へ直接流れ込んでいる。


周囲の森そのものを器官として扱っている。


欲しい。


反射的にそう思った。


同時に、今近づけば死ぬとも分かる。


俺は樹上へ移動した。


魔力感知を絞る。


巨大魔物の全身を観察する。


外殻は薄い。


代わりに、皮下を高密度魔力が循環している。


攻撃が当たる直前だけ、その場所へ魔力が集中する。


可変防御。


五人の魔法はほとんど弾かれていた。


一人が叫ぶ。


「退け! 森冠獣に勝てるわけがない!」


単語の意味が七割ほど分かった。


森冠獣。


これが名前か。


逃げようとした一人へ木の根が絡みつく。


俺は動いた。


高圧魔力砲ではなく、振動弾。


地面へ撃ち込む。


振動増幅。


根の位置だけを反響探知で拾い、地下から断つ。


拘束が緩んだ。


人型種がこちらを見る。


「何だ、あれは!?」


俺も知りたい。


自分が彼らから何に見えるのか。


森冠獣の頭が俺へ向く。


まずい。


枝角が一斉に光る。


俺は四脚へ戻り、全力噴射。


背後で森が爆発した。


木片が降る。


一発でこれか。


笑いたくなるほど強い。


《今は戦わない》


目的を忘れるな。


人型種を観察する。


可能なら生きて話す。


森冠獣は倒さない。


少なくとも、今は。


俺は五人へ向けて声を出した。


「ニゲロ。コッチ」


全員が固まった。


仕方ない。


黒い四脚の魔物が突然人語を喋ったのだから。


「ハヤク」


二度目で、ようやく一人が動いた。



森冠獣から逃げる五人と、俺。

奇妙な集団になった。


「お前は何だ!」


「ネクサ」


「そういう意味じゃない!」


走りながら会話するのは難しい。

後ろで木が倒れる。森冠獣は速くない。代わりに森全体が俺たちを邪魔する。


根。蔓。枝。地面の隆起。


俺は先頭へ出て、魔力感知で攻撃前の流れを読む。


「ミギ!」


全員が右へ。

左側から木槍が突き出す。


「トブ!」


地面が盛り上がる直前に跳躍。

少しずつ、彼らが俺の声に従うようになった。


逃走の途中、一人が脚を負傷した。

速度が落ちる。


俺は男の横へ寄った。


「サワル。ナオス、チガウ。ミル」


傷口の近くへ把持器官を当てる。

骨格。筋肉配置。腱。死体では分からなかった、生きた状態での動きが見える。


【人型生体構造解析:46%】


男が俺を振り払った。

説明不足だった。


「ゴメン」


「謝れるのかよ……」


逃げながら、人型構造と言語を同時に学んでいる。

悪くない。


やがて岩の多い地帯へ入った。

植物が減り、森冠獣の追跡速度が落ちる。


先頭の女が叫ぶ。


「谷まで行けば撒ける!」


反響探知で先を見る。

前方で地面が切れている。橋はない。幅、およそ十二メートル。


俺の噴射なら越えられる。

問題は五人をどうするか。


《運べる形を作ればいい》


身体の用途が、また一つ増えた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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