第2話 魔核を食べる方法
魔核へ触れるたび、俺の構造が焼ける。
自己補修。
分流。
また接触。
同じことを三度繰り返したところで、ようやく一つ分かった。
魔核は単なる電池じゃない。
周囲の魔力を吸い込み、内部で圧縮し、別の性質へ整えて吐き出している。
俺の魔導脈は、その完成した魔力を運ぶだけだった。
《発電所と送電線みたいな関係か》
なら、丸ごと奪うのは無理だ。
俺には器がない。
だが、仕組みの一部なら使える。
俺は魔核へ直接食いつくのをやめた。
代わりに、その周囲を覆う細い補助器官へ枝を伸ばす。
そこでは大量の魔力がいくつもの小さな部屋を通っていた。
圧縮。
整流。
放出。
一気に扱うから壊れる。
細かく分ければいい。
分流を逆に使う。
一本へ集めるのではなく、何十本もの枝で少量ずつ受け取る。
【分流構造の応用を確認】
【新規構造形成可能】
俺は魔核の周囲へ網を作った。
触れては離れる細い枝。
一本あたりなら耐えられる。
十本。
二十本。
三十二本。
流れ込む魔力が増えた。
初めて、自分の内部に余剰魔力が溜まる。
《これ、貯められないか?》
今までの俺は、流れてきた魔力を使うだけだった。
余ったら捨てるしかない。
そこで、増殖させた枝を丸めた。
袋状にする。
中へ魔力を送る。
膨らむ。
壊れる。
失敗。
もう一度。
今度は壁を二重にする。
また破裂。
三度目は、分流の細い経路を壁の内部へ這わせた。
魔力圧を逃がしながら溜める。
今度は持った。
【新規器官形成】
【仮称:魔力嚢】
《器官を……作った?》
拾った能力じゃない。
自分で作った。
その事実に、痛みを忘れた。
魔力嚢へ魔核の力が少しずつ蓄積される。
だが、その瞬間。
魔核の奥で何かが動いた。
まだ残っていた防衛反応。
細い針のような魔力が一斉に飛び出す。
俺の枝を切断していく。
《面白い》
死体の中なのに。
こいつは、まだ俺を拒絶している。
なら、勝って奪う。
◇
魔核の防衛反応は単純だった。
近づいた異物へ高圧魔力を撃ち込む。
それだけなら避けようがない。俺は固定されている。
だが、魔力の流れは見える。
発射前に魔核内部の一部へ魔力が集まり、そこから射線が分かる。
俺は枝を切った。自分で。
針が通過する直前、その部分だけを分離する。攻撃は空を切った。
《使えるな、これ》
身体の一部を失うことが前提なら、回避方法は増える。
俺は何度も枝を生やし、何度も切り捨てた。そのたびに魔核へ近づく。
やがて、防衛針の発生部位へ一本の枝が届いた。
接触。構造解析。
圧縮した魔力を瞬間的に一直線へ押し出している。複雑な魔法ではない。俺の魔力嚢と分流で真似できる。
《撃てるか?》
枝一本を真っ直ぐ伸ばす。魔力嚢から力を送り込み、先端へ集中して放つ。
枝そのものが破裂した。
同時に、細い魔力弾が飛び、魔核の殻へ小さな傷を作る。
【自作構造による魔力放出成功】
《威力は低い。でも、攻撃できる》
二発目。三発目。
魔力嚢が空になれば魔核から補給し、また撃つ。
魔核が自分で生んだ魔力を使って、俺が魔核を壊している。
十数発目。外殻に亀裂が走った。
防衛針が乱れる。
そこへ全枝を突っ込んだ。
内部構造へ接触すると、膨大な情報が押し寄せる。
処理できない。
全部はいらない。
欲しいのは一つ。
魔力を生み、溜め、流す仕組み。
【解析率上昇】
【進化条件の一部を満たしました】
進化。
その言葉が初めて表示された。
だが、確認する暇はない。
宿主の外側から、肉を引き裂く振動が伝わってきた。
死体を食っている。
別の何かが、俺のいる身体を。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
続きが気になった方は、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。




