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第17話 人間の魔法を分解する

俺がリナと会う理由は、言葉だけではなくなった。


彼女は魔法使いだった。


以前、地下空洞で見た人間も杖から火球を出していた。


生物の器官なしで魔力を外側へ組み上げる技術。


ずっと気になっていた。


「見せて」


俺が頼むと、リナは警戒した。


「真似する気?」


「スル」


即答した。


ガドが頭を抱えた。


結局、弱い魔法だけという条件で見せてもらう。


リナが杖を構える。


魔力感知を最大まで広げる。


体内の魔力が腕へ。


杖にある細い線へ流れる。


そこで分岐。


空中へ放出。


ただの放出ではない。


一定の形を維持している。


「灯火」


杖先に小さな光が浮かんだ。


《器官じゃない》


魔力そのものへ命令のような構造を与えている。


俺の高圧魔力砲は、身体の管が形を作る。


人間の魔法は、身体の外に一時的な器官を作っているように見えた。


「もう一回」


「何回見るの?」


「ワカルマデ」


七回目。


魔力の流れに繰り返しが見えた。


杖の刻印。


指の動き。


発声。


三つが同じ順序を作る。


《魔法陣の代わりに、複数の入力で構造を固定してる?》


俺は自分の前脚を変形させ、細い魔力経路を表面へ描いた。


リナの杖と似た分岐。


魔力を流す。


外へ放出。


散った。


もう一度。


今度は発声器官で彼女の言葉を真似する。


「灯火」


一瞬だけ、白い点が浮かんだ。


すぐ消える。


リナとガドが黙った。


俺も驚いた。


【外部魔力構造の形成を確認】


【仮称:魔力編成】


完全な魔法ではない。


でも入口には立った。


リナが真顔になる。


「ネクサ。これ、人にはあまり見せない方がいい」


「ナゼ」


「魔物が人の魔法を覚えるなんて、普通じゃないから」


俺は自分の身体を見る。


黒い四脚。


可変器官。


人語。


今さら普通を心配する段階ではない気がした。



問題は、リナたち以外の人間だった。


森で会う回数が増えれば、当然誰かに見つかる。

その日はガドの知り合いだという二人が一緒だった。


一人は俺を見るなり剣を抜いた。


「魔物だろ」


言葉はほぼ理解できる。解析率は五十%を越えた。

リナとガドが説明するが、男は納得しない。


「喋る魔物の方が危険だ」


理屈は分かる。俺でもそう思う。

だから動かなかった。


「その手を見せろ」


把持器官のことらしい。

俺は前脚を三本指へ変形させる。


「気持ち悪いな」


《それは否定しない》


次に男が突然剣を振った。

俺の光感知器官へ向かっている。


把持器官で刃を掴む。

金属が指の間で止まった。


男が引く。離さない。

力を少し上げると、刃にひびが入った。


リナが叫ぶ。

俺はすぐ離した。


「コワス、ツモリ、ナカッタ」


力加減を間違えた。

まだ人間の道具を扱うには強すぎる。


ガドが呆れたように言う。


「手っていうより万力だな」


《万力》


悪くない。


帰り際、男が壊れた剣を見ながら聞いた。


「本当に人を食わないんだな?」


「タベナイ」


正確には食事自体が不要だ。


「コウゾウ、ミタイケド」


リナが顔を覆った。

ガドが笑い、男はさらに距離を取った。


言葉を覚えても、言わない方がいいことを覚えるには別の学習が必要らしい。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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