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決着編 第五話 忍びの終焉

第五話 忍びの終焉

 山が、泣いていた。


 黒い霧に覆われた巨人――

 夜叉丸の成れの果て。


 無数の腕が蠢き、

 無数の目が、森中を睨みつける。


 その姿はまるで――怨念そのものだった。


「忍びは滅びん!!!」


 咆哮。


 衝撃波だけで木々が吹き飛ぶ。


 甲賀忍達ですら恐怖し、後退した。


「総帥……なのか……?」


「こんなの……人間じゃ……」


 蒼牙は歯を食いしばる。


「夜叉丸……!」


 だが、返ってきたのは狂気だけだった。


「戦えェェェ!!」


「殺せェェェ!!」


 巨大な腕が振り下ろされる。


 ドゴォォォン!!!


 地面が爆砕。


 蒼牙達は四方へ飛び退く。


 その直後――


 ヒュォン!!


 猿飛佐助 が突撃した。


「デカけりゃ強いって訳じゃねぇぞ!!」


 風を纏った蹴り。


 ズガァァァン!!!


 巨腕が吹き飛ぶ。


 だが次の瞬間。


 黒い霧が再生する。


「チッ……再生かよ」


 佐助が舌打ちする。


 すると――


 ドン!!


 炎が走った。


 服部半蔵 の火遁。


 巨大な炎槍が、夜叉丸の身体を貫く。


「ギャアアアアア!!!」


 夜叉丸が絶叫する。


 半蔵は静かに言った。


「核を断たねば終わらぬ」


 影丸が頷く。


 影丸 の瞳が細まる。


「胸だ」


「あそこに、本体がある」


 蒼牙が前へ出た。


「ならば――俺が斬る」


 綾乃が叫ぶ。


「頭領!無茶です!」


「無茶でも行く」


 蒼牙は短刀を握る。


 その背中を見て、綾乃は唇を噛んだ。


 そして。


 静かに印を結ぶ。


「……綾乃?」


「最後まで、お供します」


 次の瞬間。


 白い光が、綾乃の身体を包み込んだ。


 半蔵が目を見開く。


「その術は……!」


 禁術。


 命を燃やし、身体能力を極限まで高める術。


 使えば、助からない。


挿絵(By みてみん)



 蒼牙が叫ぶ。


「やめろ!!」


 綾乃は微笑んだ。


「伊賀の未来を……お願いします」


 そして。


 消えた。


 ヒュン!!


 白い閃光。


 綾乃が夜叉丸の腕を次々と切断していく。


「速ぇ……!」


 佐助ですら驚愕する。


 その隙に、半蔵が突撃。


「道を開く!」


 轟炎。


 爆炎。


 黒霧が裂ける。


 さらに影丸が動く。


「幻影縛」


 無数の影が、夜叉丸の動きを止める。


「今だ、蒼牙!!」


 蒼牙が走る。


 血塗れの身体で。


 何度も倒れながら。


 それでも前へ。


 夜叉丸が叫ぶ。


「なぜだァァァ!!」


「なぜ戦を終わらせる!!」


 蒼牙は吼えた。


「子ども達が笑える世を作る為だァァァ!!!」


 跳躍。


 黒霧の中心。


 そこに――夜叉丸の顔。


 蒼牙は短刀を握り締めた。


「これで終わりだ」


 夜叉丸が笑う。


 泣くように。


「終われば……忍びは消えるぞ……?」


 蒼牙の瞳は揺るがなかった。


「ならば――」


「最後の忍びとして、生きてやる」


 ズバァァァァッ!!!


 閃光。


 蒼牙の刃が、夜叉丸の胸を貫いた。


 静寂。


 次の瞬間。


 黒霧が崩れ始める。


「が……ぁ……」


 夜叉丸の身体が、人間へ戻っていく。


 その顔から、狂気が消えていた。


「……蒼牙」


「……何だ」


 夜叉丸は、小さく笑った。


「少しだけ……羨ましかった」


 そして。


 灰のように崩れ、消えた。


 風が吹く。


 黒い霧が、夜空へ消えていく。


 長かった戦いが――終わった。


 だが。


「……綾乃?」


 蒼牙が振り向く。


 綾乃が倒れていた。


 白い装束が、赤く染まっている。


「おい……」


 蒼牙が抱き起こす。


 綾乃は微笑んだ。


「勝ち……ましたね……」


「喋るな!」


「頭領……」


 その瞳が、優しく細まる。


「これからは……誰かを守る為に……生きて下さい……」


 蒼牙の目から、涙が落ちた。


「死ぬな……」


「命令だ……綾乃……!」


 だが。


 綾乃は、静かに目を閉じた。


 風が吹く。


 桜の花びらが舞う。


 誰も、言葉を発せなかった。


 半蔵は空を見上げる。


「忍びの時代が……終わる」


 佐助は笛を吹いた。


 どこか寂しげな音色。


 影丸は、闇の中へ消えていく。


 蒼牙だけが、その場に立ち尽くしていた。


 朝日が昇る。


 長い長い戦いの終わりを照らすように。

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