16聖剣②
親方がやって来たので、交渉に入る。
「待たせたな。俺は、ここの指導者をしている、イッテツという」
「俺は、圭。こちらが、陽花と英治と言います」
俺達はぺこりと会釈する。こういう時は、毎回圭が主に話す。やはり、勇者は、俺達の顔役なのだ。
「で?要件はなんだ?」
「はい、ここにある、聖剣を譲っていただけませんか?」
「ああ、別にいいぞ」
「え?そんなに簡単に譲っていただいていいんですか?」
「ん?なんだお前ら、知らないのか?アーティファクトの一部は、使うのに条件があったりするんだよ。例えば、一定以上のステータスがあるとか、指定の称号を持っているとかな。聖剣なんかは、勇者という職業の人間しか使う事が出来ない。俺達が持っていても仕方が無いんだ」
「なるほど……じゃあ、今まで、なんでもっていたんですか?」
「そりゃお前、武器を管理するなら俺ら以上の適任はいないだろ。他のやつに任せたらいつの間にか錆びてたりするかもしれん。そんな事、鍛冶師として許せる筈が無いだろう?」
「確かに……では、早速、聖剣を譲って頂けますか?」
「いいや、ちょっと待て、条件がある」
「条件、ですか」
「ああ、俺達には使えねえ代物だが、今まで管理していたのも俺達だ。何か見返りを求めたっていいだろ?」
イッテツは、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「まぁ、俺に出来ることなら」
「なぁに、勇者一行なら簡単な事さ。魔物を狩って、魔石を集めてくれ。魔導具を作るのに必要なんだ」
「なるほど、分かった」
「まあ、今日はもう遅い。明日からよろしく頼む」
俺達が泊まる部屋を用意してもらい、それぞれの部屋で、休息をとった。聖剣を譲って貰う条件に魔石を要求された俺達は、早速魔物を狩っていた。最早俺達に普通の魔物がかなう訳もなく、なんの問題も無く魔石を集めた。
「ほら、この位でいいか?」
「……よくもまあ、一日でこんなに集められたものだ」
「まあ、この位はな」
「分かった。約束通り、聖剣は渡そう。だが、それとは別にお前らに依頼したい事がある」
「依頼?」
「あぁ、山の反対側にも坑道があるんだが、そこに住み着いている、ロックリザードと、メタルリザードの討伐だ。それが出来たら、俺らが最近発明した最強兵器、移動式砲台を幾つかやる。お主らは使わないかもしれないが、人間の国の戦力強化にはなるだろう」
「移動式砲台……って!戦車か?」
「戦車?あぁ、お前らの世界にもあったのか?それは奇遇だな。あれはいい。土と火の魔法が使えれば誰でも使える」
「土と火の魔法?」
「ん?どうかしたか?」
「いや、火は砲撃時の爆発の為なのは分かるけど、土って?見た所特に使うところなさそうだけど?」
「何言っとるんだ?弾を作る為に決まってるだろ?」
「え?弾って鉄だよな?鉄を土魔法で作れるのか?」
「当たり前だ」
「まじか……」
知らなかった。まさか現代知識を持っている俺が魔法のアイディアで負けるとは…
それはそうとして、金属類も土魔法で作れるなら新しい魔法をガンガン生み出せそうだ。
「どうする?圭くん?」
「うーん、良いんじゃないか?俺達が魔王軍を相手にしている間、国は無防備になる。戦車1つでも有用だ。それを複数貰えるなら……」
「いや、もう1つ条件がある」
「どうした?英治」
「俺達がこの依頼を完了した暁には、俺の依頼する武器を作ってもらいたい」
「それは、どういうものなのだ?」
「銃。砲台を小型化して、人が持って打てるようにしたい」
「なるほど……だがそれだと、お前が使うには威力に問題があるのでは無いか?」
「それを大量生産したい。そうすれば、個人の実力に関わらず、軍全体の戦力を上げることが出来る」
「なるほど。聖剣の様に、使用者を選ぶ特化型では無く、誰でも使える汎用型の武器が望みか」
「あぁ、勿論、大きな力の差の前では、気休めにしかならないだろうが、それでも技能の無い者が剣で戦うよりかは良い。それに、剣より銃の方が数が活かせる」
「なるほどな。面白そうだ。乗ってやる」
「て事なんだが、圭、どうだ?」
「分かった。その条件で引き受けよう」
武器というのは、いつの時代も力の差を埋めてきた。人間は、武器を手にする事で、動物との身体能力の差をカバーし、狩る側にまわった。中世ヨーロッパでは、銃が生まれたことで、それまで最強の実力を持っていた騎士との力の差が無くなり、騎士社会を終わらせた。幾らこの世界が、個人の実力の差が大きい世界でも、数は力だ。凡人が剣で斬りかかるより、銃を乱射した方が強い。前世の様に、当たればほぼ即死の武器にはなり得ないが、それこそ四天王クラスで無ければ、ダメージは通るだろう。四天王クラスが現れた時は……諦めるしかない。
「これで、有象無象の魔種にやられる心配は減るな」
そう、あくまで、有象無象への対処法。やはり、この世界では、銃を持ってしても魔王という存在は殺し得ないのだ。前世でなら、核でもないと対処できない様な……いや、四天王が、仮にも隕石もどきを受けて、死ななかったのを見るに、核でも耐えうるかもしれない。ここはそんな膨大な力を個人が持つ事が出来てしまう過酷な世界なのだ。




