第25話 『路地裏②』
「ダメですか?」
「あ、、、いや」
詰めてくるな。
これが人族の顔だったら、俺はホイホイとついていったのだろう。
蛇の顔の判別なんてできないからな。
よかったー。蛇の顔の子で。
「俺は、急ぐので。また」
そう言って、立ち去ろうとした。
が、俺の服の袖が蛇顔の女の子が掴んでいた。
「あの、、、すみません。離して、もらえませんか?」
「あの、、、私、ニシキって言います」
ニシキ、、、ヘビ?
この世界の名前はだいぶ安直だな。
でも、たまたま、元の世界の言葉に似ているのだから、俺だけが安直だと考えるのだろう。
ても、ニシキって女の子の名前っぽくないよな。
俺が女の子だったら、一生親を恨む。
俺の価値観が違うだけで、デザーム大陸では当たり前なのだろうか。
「はぁ」
「助けてもらって、お礼もせずにさよならなんて失礼だと思うんです!」
いや、いい子!
こういう子は路地裏なんかにくるべきではない。
「大丈夫ですよ。次はこんなことがないように気をつけてください」
「もちろんですよ。でも、お礼はします!」
そう言って、ニシキは袖から手を離し、俺の腕を握り、引っ張った。
まずい。
俺のコミュ障が出てしまっている。
どうやって、断るべきか。
「ニシキさん?あの、、、急いでいるんですけど?」
「すっ、すみません」
ニシキは俺の腕を握る手を離した。
「でも、いつか、、、絶対ににお礼はいたします!」
「わかりました。では」
俺は軽く手を振り、その場を後にした。
ニシキは俺に深く頭を下げていた。
まったく、女の子に擦り寄られたのなんて初めての経験だった。
まさか、自称『神』が言っていたいいことってこれだったのか?
だったら、勿体無いことをしたな。
でも、蛇顔の女の子とは寝れない。
体だけならば、100点を超えているのにな。
せめて、人族に似た顔であってくれ。
一応、路地裏をもう少し見ていくか。
まだ、いいことが起きたわけではないかもしれないからな。
少なくとも俺にとってはとてもいいことが起きてないからな。
俺はそう考えて歩いた。
さて、、、
うん。
そうだな。
ニシキが俺のあとをつけてきている。
足音でバレバレだ。
あいつ、本気で俺に惚れたのか?
キッパリ言った方がいいのだろうか。
「あの。バレバレですよ?」
「え、、、あ。」
俺が振り返ると、物陰からニシキが出てきた。
やっぱりか。
「なんで、ついてきてるんですか?」
「困ったことがあったら、陰ながらでもいいから助けたいなと」
ほんとにいい子だな。
だが、ストーキングは犯罪だ。
犯罪という概念はこの世界にはないけどな。
「ほんとに大丈夫ですよ?」
「でも、、、」
「はい。あなたはいち早く路地裏から出る方が先決ですよ」
「それも、、、そうですね。すみません。では、帰ります」
「助けてくれようとしてくれたのはありがたかったですよ」
「いえいえ」
そう言って、ニシキはほんとに帰っていった。
いい子なんだけどな。
顔だけなんだよな。
面食いと言ってくれても構わない。
でも、無理なものは無理だ。
悪いことをニシキにしてしまっただろうか。
まぁ、大丈夫か。
大丈夫だと信じたい。
ニシキに会うことは、、、この街にいる限りゼロではないか。
心構えは必ずしておこう。
お相手はできませんってな。
ーーー
酒屋街の路地裏から出たが、何もなかった。
次は、どこに行こうか。
路地裏というのはどこにだってある。
この街の全ての路地裏を今日中に回ることはできない。
さて、どこにいくか。
酒屋街の路地裏だけでなく、いろんなところにある。
よし。
1番近いところに行こう。
この酒屋街の路地裏の反対側に行こう。
じゃあ、行くか。
ーーー
ということで、現在、さっきいた反対側にいる。
今は太陽がちょうど真南にあるから、12時の正午くらいだ。
今のところ、ゴロツキに絡まれるようなことはない。
でも、いつ出てきても大丈夫なように構えておこう。
ここも、ホームレスのような人たち、死体。
臭い。
長時間もこんなところにいたら鼻がひんまがってしまう。
「おい。いいじゃねえか。いくら欲しいんだ?」
ここでもか。
まったく、路地裏というものは、
どこでも変わらないのだな。
というか、なんか、聞き覚えのある声だな。
そう思い、声のする方に目を向けた。
そこには、あの男がいた。
そう、あの馬ズラだ。
まったく、あいつはまたこんなところで。
「おい、馬ズラ。また、何をしているんだ?」
俺は、馬ズラの肩を叩き声をかけた。
「誰だよ、、、?お、お前は、、、さっきの。」
「さっきぶりだな」
ほんとにこいつは性欲が強いのか欲求不満なのか。
呆れたやつだな。
「ヒッ!あの、、、ご、ごめんなさい」
「じゃあ、この場からすぐにどいてください」
はぁ、また蛇顔の女の子でもナンパしていたのか?
「いや。助かりましたよ。ありがとうござ、、、、ん?」
俺は、馬ズラのナンパしていた女の子を見た。
ん?
俺らは目が合い。
そのまま、お互いの顔を覗くように見た。
オレンジ色の髪、エルフのような耳。
見たことがあるような?
顔が泥だらけでよくわからないのだが。
「そうだよね?アキトくんだよね?」
アキト、、、くん?
「もしかして、エレナ?」
「そう!やっと会えた!」
俺はついにエレナと合流することができた。




