第24話 『路地裏①』
うわー。
また出てきたよ。あいつ。
不愉快だ。実に不愉快だ。
マジで、なんでこの指輪は取れないねん!
とれてーや。
てか、自称『神』はなんて言ってたっけ?
確か、路地裏を歩けって言ってたような。
路地裏?
どこの?
この街に来て2日目だぞ?
どこのどんな路地裏かなんて知らない。
信頼して欲しいなら、もっと具体的に具体的に言って欲しいものだ。
本当に、使えないやつだ。
一方的に言ってきて、なんなんだ?
でも、あいつが俺からの信用を得たいというのは本当そうだ。
俺ならわかる。
路地裏に行くといいことがあるというのは本当だ。
しかし、5年はカルコネアに戻らないほうがいいというのは嘘だ。
簡単にわかるな。
案外ちょろいんじゃないか?
利用できるものは利用するのはこの世を生きていくために大切なことだ。
あの自称『神』を利用してやる。
じゃあ、今日は何をしようか。
路地裏に行くべきか?
行くだけならいいか。
この世界に来たばかりの頃はゴロツキに歯が立たなかったが、今なら、大丈夫だ。
なんたって、俺は2級呪術師だからな。
こんなところに来るまで毎日、鍛えてきたんだ。
秘技もある。
「おい、アキト。今日はどこに行くんだ?今日から仲間集めをするんだろ?」
宿の部屋の中に、ラクガンが入ってきた。
まったく、俺が思春期の男の子だったら、キレてるぞ?
お世話になってるラクガンに「ノックしろよお。ババァ」となんていいたくない。
でも、ノックをして欲しいのは本当だがな。
俺が全裸だったら、どうするのか。
「いえ。今日は路地裏に行こうかなと」
「なぜだ?仲間を集めるなら、冒険者ギルドに行くべきだろう?」
「え?あの、、、」
「なんだ。はっきり言え」
そりゃ、疑われるよな。
急にこんなことを言い始めたら、心配するだろう。
やばい。
出てこない。
なんて、言おう。
いい訳が見つからない。
「路地裏なら、ゴロツキがいるからです」
「ん?言ってることが矛盾しているぞ?」
「いや、冒険者で、仲間を集めるとお金がかかったり、デザーム大陸から出たくない者も多いでしょうから」
そういうと、ラクガンは不思議そうなきょとんとした顔をした。
ラクガンは少し考えるようなポーズをとった。
「貴様が言っていることは、我にはわからん。我には悪手にしか見えぬ。しかし、貴様がそう思うならやってみろ。貴様の仲間を集めるための仲間集めだからな」
「はい」
こんなんで、納得してくれたのだろうか。
俺なら、逆に心配になるな。
この人は力だけということか。
頭はあまり良くないのか。
「では、最善を尽くしてみろ。貴様1人で大丈夫なのか?」
「はい。1人で行っても死ぬことはありません」
「呪術師だぞ?お前は」
「ゴロツキごときに負けるような鍛え方はしていませんからね」
俺は呪術師として一人前のつもりだ。
しかし、体は常に鍛えてきた。
ステークストさんと共に毎日吐きそうになるくらいに走り込みをし、筋トレをしてきた。
現在の俺は、元の世界のボクシング界で考えると、簡単に日本チャンピオンになれるだろう。
ステークストさんと実践訓練も軽くしたことがあるからな。
そんじょそこらの奴らのパンチは避けられる。
「そうか。悪いが、我は今日ついていけない」
「何かあるのですか?」
「ああ。友人に会いに行かなければならない」
友達に会いに行くくらいなら、明日でも良いのではないのだろうか。
俺は、彼の友達以下だということか。
まぁ、そうだろうな。
まだ、会ってから数日だ。
流石に、俺を優先しないだろう。
「わかりました。では、夜にまた落ち合いましょう」
「了解した」
さて、路地裏に行くか。
ゴロツキに合わないように祈っておこう。
対処できるとしても、会わないようにするのが吉だ。
でも、まぁ、大丈夫だ。
あの自称『神』がこのタイミングで行ってきたんだ。
大丈夫だ。
きっと、、、大丈夫、、、だ。
大丈夫ですよね?
俺は、杖だけ持って、路地裏に向かった。
そう、杖だけだ。
逆に杖以外持っていない。
デザーム大陸に飛ばされてから、一文なしだ。
ふざけやがって。
ステークストさんはこのことを考えて、転移させたのか?
もしかして、ステークストさんは自称『神』の手先なのか?
こんなとこに一文なしで飛ばして、餓死させようと、、、
流石にないか。
あるはずがない。
ーーー
今は、酒屋通りみたいなところの近くの路地裏に来ている。
今のところ何もない。
路地裏というとこには、ホームレスのようなものがたくさんいる。
元の世界と似たところもある。
しかし、この異世界だ。
この路地裏には、ホームレスのような人だけでなく、異臭を放つ死体や骨、怪しげな魔道具だ。
ちなみに、魔道具とは、魔力がこもっており、特殊な能力を得た道具のことだ。
魔道具には、足の速くなる靴や魔力をこめるだけで、魔術を使えるものなど、さまざまなものがある。
とても、興味深い。
まったく、空気が汚ない。
埃っぽいし、臭い。
「おい。いいだろ?いくら出せばいいんだよ?」
「うぅ」
ふと、そんな声が聞こえた。
声の方向を見ると、馬ズラの魔族の男が蛇みたいな顔の魔族の女のお尻を触りながら言い寄っていた。
金を出すから、やらせろってことかよ。
ヤダヤダ。
もちろん、見過ごそう
変なことに首を突っ込みたくないからな。
でも、あんなにいやそうな顔をした。
可哀想だ、、、、
俺は、とっさに馬ズラを女の子から服の襟を掴んで離して、自分の方に寄せた。
「おい、嫌がってるだろ。やめてやれよ」
「あん?」
勝手に体と口が動いた。
ヤベェ、心臓バクバクだ。
こんなこと、やったことはない。
なんで、こんな正義感があるんだよ。
てか、、、おっぱいが当たってる。
自分の方に寄せ付けたのもあるが、押し付けられているような。
ふと、おっぱいの感触のある部分に目を向けた。
この子、、、胸がデカい!
巨乳だ。
異世界級だ。
これで、蛇顔じゃなければ完璧だったのに。
蛇顔だからかわいいのかわからない。
「おい。お前もその女に色目をつかってるじゃねえか」
「何を言っている」
「なんなら、3人でやるか?」
「断る」
「いい案だと思ったんだけどな。残念だ」
「あの、、、私、大丈夫ですから」
「心配しないで。俺が守るから」
女の子はブルブルと震えていた。
大丈夫といいながら、大丈夫ではないのだろう。
「ほんと、お前は馬鹿だな」
馬ズラは腰にさしていた短剣を抜いた。
「この『ハイエナのシャック』には向かうとはな。まさか、俺の名を知らぬわけはあるまい」
「知らないな」
「嘘つけ」
いや、ほんと。
そんな、名前は知らない。
なにせ来たばかりだからな。
でも、どう戦うか。
ラクガンの言った通り、俺は呪術師だ。
こうも狭く、戦いにくい場所で近接武器を使うものに勝てない。
と、思うだろう。
しかし、ここで、見せてやろう。
俺の大学教師生活が無駄ではなかったことを。
この鍛えてきたことを見せてやる。
「知らなかったのがお前の死ぬ最大の敗因だ。死ねー!」
馬ズラは俺に短剣を振りかぶって飛んできた。
「『束縛』」
俺の腕は紫色のオーラを纏い、馬ズラの動きが止まった。
そう。
無詠唱魔術だ。
エレナとステークストさんにコツを教えてもらい自分なりに練習した結果、5級呪術のみ無詠唱で扱える。
馬ズラは、瞬きもしず、その場に止まっていた。
反発もできないよう、3級呪術くらいの魔力量を使って、魔術をかけている。
「俺はお前を殺すつもりはない。だが、また来るようだったら、容赦はしない」
動きが止まっている、馬ズラに言ってやった。
動きが止まっていても、聴覚は働いている。
俺は呪術を解いた。
「ヒッ!、、、こ、、、ころ、、、」
すると、馬ズラは、失禁し『殺される』と怯えながら、逃げていった。
「怪我はありませんか?」
「あ!あの、ありがとうございます。お礼がしたいのですが、、、お時間ありますか?」
と蛇顔の女の子がモジモジしながら言ってきた。
え?俺に惚れちゃった系?
白馬の王子様に見えちゃった系?




