第21話 『大男との戦い』
「だから、貴様は誰だ?」
そう、大男が俺に魔人語で言ってきた。
イザベルのスパルタ授業を受けていてよかった。
こんなところで役に立つとはな。
声をかけてきた男の見た目は、茶髪でゴリゴリの筋肉質、そして、何よりもでかい。
3メートルくらいありそうだ。
巨人族だろうか?
いや、魔人語を喋っているからな。魔族か?
どちらにしても、見たことはないからわからない。
そんな男が俺に戦斧を俺に向けながら、威圧的にそう言ってきた。
普通に怖い。
だが、殺気は感じない。
ステークストさんのような失禁しそうなほどの殺気はない。
「お、、、、俺でっ、、すか?」
声がうまく出せない。
舌がうまく動かない。
殺気は感じないとしても、怖いと感じているのだろう。
「貴様だ。貴様は誰だ?」
「お、、、俺は、フィフティ・サイクロンで、、、です」
「違う。お前は何者だ?ここで、何をしている?」
なんか、似たような会話をした気がする。
そうだ、アクト王国のスラム街でこの世界のヤンキーに絡まれた時か。
あぁ。なんか、この世界に来てからのことを思い出せる。
これが走馬灯か。
「俺は、人族で、強大な敵と対峙してしまった時、その時、その場から逃げるために転移魔法でこんなところまで飛ばされました。そして、ここから帰るために歩き、そして、ここで家を作り一晩を過ごそうとしていたところです」
「転移魔法だ、、、?にわかには信じられんな」
転移魔法のことはわからないのか?
「信じられないのかもしれません。しかし、本当です」
「虚言ではないな?」
「はい」
「そうか」
そう言って、大男は俺に向けた斧を肩にしまった。
「悪かったな。そんなこととは知らずにお前の家を壊してしまった」
「いえ」
この人は悪い人ではないだろう。
相手に聞く耳を持ち、相手のことを信頼している。
どっかの胡散臭い自称『神』よりかは信頼できる。
「じゃあ、我は行く。すまなかった」
そう言って、大男は踵を返した。
待てよ?ここにきて初めて、人間に合ったんだ。
あの人を頼る以外選択肢はない。
どうやって、引き止めようか。
できれば、俺と一緒に来てほしい。
「あの、、、、」
「どうした?
まだ、我に用があるのか?」
「これからどこに、、、?」
「我は、ラトネアという国に行くつもりだが?」
え?
ラトネア?
カルコネアに行く前に立ち寄った国じゃないか。
ということは、この人について行けば、戻れるじゃないか。
「じ、、、実は俺もラトネアの隣国に行こうとしていたんです。よければ、一緒に行きませんか?」
「断る」
えー。
流石にダメか。
人族は1日に数時間は寝なければならない。
それに対して、人族以外の人種はそんなことはない。
ほとんど寝なくてもいい人もいれば、1日の大半寝ていなければならない人種も存在する。
きっと、この人は寝なくてもいい人種だろう。
こんな時間に俺の岩を吹き飛ばしてきたくらいだしな。
「足手まといだからですか?」
「そうだ」
やっぱりか。
どうしたものか?
勝手についていくか?
「俺が、足手まといだと証明できればいいですか?」
「貴様は我より強いのか?それとも、我にできないことができるのか?」
「まだ、俺はあなたを知りません。なので、あなたにできないことは知りません」
「では、俺より強いのか?」
「俺なら、あなたと共に戦えます。俺は、付与術師なのでサポートがメインですが」
何を隠そう。
現在、俺は、3級治癒魔術、
そして、2級呪術を使うことができる。
3級治癒魔術は骨が粉々になっても治すことができるほどだ。
これだけ、サポートの能力があれば十分だろう。
ちなみに、界級治癒魔術になると死者も生き返らせるとか、ステークストさんが言っていた。
界級は今までの歴史上1人しか使えなかったらしいが。
だから、界級なんてあってないようなもんだ。
誰も使えないんだから。
「そうか。だが、そんなものはいらん。貴様は、自分で自分を守る力はないのだろう?」
「、、、その自分を守る能力を証明できればいいですか?」
「ああ。いいだろう。それが、できるのならばな」
よし。
チャンスはもらえた。
だが、どうしようか。
この人に戦うか。
それがベストかな?この人に肌に感じて貰えばいいだろう。
「俺と戦いませんか?」
「我とだと?舐められたもんだな。
だが、いいだろう。それが手っ取り早いと我も思っていたところだ」
そう言って、大男は戦斧を肩から抜いた。
大男が使ってるだけあって、斧もバカでかい。
斧だけでも2メートルほどある。
あんなんで切られたらと考えると寒気がする。
「さぁ、こい。
貴様の本気の技を我に打ち込んでこい。」
「え?戦うのではないのですか?」
「何を言っている?魔術師は近接戦はできんだろ?」
そう言って、斧を大地に落とした。
相当の重量があるのだろう。
『ドス』という音と共に落ちた。
すごく寛大な人だ。
俺に合わせてくれるなんて。
舐めたら怪我するぜ?
「じゃあ、いきますよ」
「うむ」
この大男には、自分1人で窮地を対処できるところを見せなければならない。
ということは、5級魔術だ。
なぜなら、急が上がるごとに詠唱時間が長くなる。
なので、5級魔術だ。
呪術が、そもそも5級でも強力なのだから大丈夫だ。
でも、この大男は強い。
そんな気がする。
だから、5級呪術でできるだけ、魔力を使って、できるだけ解かれないようにする。
俺の呪術は、100%かかるから、解かれないことにだけ考えればいい。
よし。
「聖なる糸よ、絡みつきて相手を縛り上げん。我が意のままに動くものの動きを止めよ『束縛《バインド》』」
それは、5級呪術で消費する魔力量の100倍ほどの魔力を使って、唱えた。
「うぅ、、、」
大男に俺の呪術がかかった。
大男は驚いた雰囲気を出している。
気付いたのだろう。
簡単に解けないことに。
俺は、大男に近づき、風属性魔術で体を浮かせ空中で、
大男の顔を殴ろうとし、寸前で止めた。
そのまま、呪術を解いた。
「貴様、、、、」
「これで、証明できたはずです」
「貴様は、我より強くないと勝手に思っておった。すまない」
そっか、呪術は自分より弱い人しか効かない。
だから、自分より弱いと思っていたやつにかけられてビビったのだろう。
まぁ、俺のは特別だからな、、、
「いえ。僕は特別、呪術に向いていたので」
「そうか。誰に習ったんだ?」
「ステークストさんという人です」
「そうか。よい師匠と出会えたのだな」
「はい」
「よかろう。我についてこい」
そして、俺らは、そのまま太陽の方向へ歩き始めた。




