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112/115

112_宴

「さあ 今日は明日からの宝物庫探索の出発式を兼ねてのグレモール討伐の慰労会じゃ 皆 食べて飲んで鋭気を養っておくのじゃ」


 祖母は仮設の壇上へ立つと飲み物を片手に声を張っている

 ベースキャンプではグレモール討伐のパーティーが開かれていた


「おにい これ 食べて 梨花 作った」


「お 梨花 ありがとう」


 妹梨花が持ってきたのはパンのような生地のものにジェムラートでフライパンダの絵らしいものを描いただけの料理であった

 僕にめったに優しくしない妹が作った料理だきっとこの異世界でもっとも梨花と仲のいいグレモを救出したことに対するお礼もあったのだろう


「あ あと これ 貸してあげる」


「みゅー」


 そう言って梨花から差し出されたのはまるで毛玉のようなふわふわでモコモコの触鬼を模して作られた人形ミューだった

 この人形は祖父リストのスキルプログラミングにより命を吹き込まれた疑似生命体であり元魔王祖母ラミスの宝物庫を開くための鍵である


「いいのか? 梨花」


 僕は少しだけ顔をさげて梨花を覗き込む


「うん 私 ばあちゃんの宝物庫には行かない だから 鍵 かす いこ グレモちゃん」


「イヒヒ 梨花向こうにナバがいる 遊んでもらおう イヒヒ」


 グレモールと分割されナバに救出されたグレモはアルミちゃんと共にサキさんのヒールによりその後発作前の状態と変わらない元気を取り戻していた

 僕たちが神の試練で見たグレモは混沌の精霊であり混沌の原因が消えた時点で消えてしまった

 混沌の原因であろうグレモール討伐後グレモが消えていないところを見ると長い年月の中で精霊のランクをアップさせ自分の体を手に入れることが出来たのかもしれない

 そうでなければ僕たちの降り立ったアルミちゃんの過去の記憶の世界自体別の世界線の話だったのだろう


「おー ラスト アルミ いたにゃいたにゃ」


「タマちゃん!」


「すまにゃい ラスト アルミ ちょっと手伝ってほしいことがあるにゃ 実は料理に使っている水が切れてしまってにゃ 10層入口近くにある湧き水を汲むのを手伝ってほしいにゃ」


「魔法で出した水じゃいけないの?」


 生活魔法を使えば誰でも出せる水 ましてや僕のまわりは強力な魔法の使い手ばかりだ

 僕は不思議に思いタマちゃんへと疑問を投げかけた


「にゃんにゃん ラスト タマの料理にはこだわりがあってにゃ おいしい料理を作るならまず素材が大切にゃ この魔気の根源ダンジョン地下10層ベースキャンプの入口にある湧き水は昔から名水として親しまれているにゃよ 地上に降った雨は何層にもまたぐ地層にろ過されてこの地下10層で湧き水となっているにゃ 生命の源でもある美しい水がここにあることを考えるとここにベースキャンプが出来た理由もわかるってものにゃよ」


 タマちゃんは僕の質問に対して人差し指を振って説明する


「タマ き 君はもう大丈夫なのか?」


 アルミちゃんはタマちゃんを気遣うような目線を送り顔を覗き込む


「にゃ・・・・・・大丈夫だといったら嘘になるにゃ・・・・・・アルミ・・・・・・でもタマはこのまま腐っているわけにはいかないにゃ 輪廻転生するこの世界でこの姿を維持するのにゃら精神は常に前だけ向いていなきゃ・・・・・・理によって次の転生で外道へと踏み入れることになるにゃ 一度そこに落ちればこちらへ帰ってくるのに何百年 にゃ 何千年かかるものかわかったもんじゃないにゃ タマにはうしろを向いている暇はないにゃ ラスト 君もこの世界でずっと転生しながら生きていくことになるかもしれにゃい・・・・・・そしてさまざまな災難や辛い出来事もあるとおもうにゃ この世界で自分の姿を守れるのは自分だけってことを忘れないでくれにゃ・・・・・・」


 タマちゃんは僕に静かだが力強くその言葉を放った 転生・・・・・・この世界での死を経験したことのない僕にとっては想像もつかない話だ だが賢者であるタマちゃんの口から発せられた言葉だしっかり心に止めておきたい


「ま そんなに深刻な顔ににゃることはないにゃ ラストがなりたい人のイメージをその度思い出せばいいだけの話にゃ・・・・・・ もちろんそのイメージは一人じゃなくていいにゃよ 色々な人の美しさに触れてその美しさがどこから来ているものにゃのか・・・・・・そういったものをたくさん取り込んで自分のものにしていけばいいって話にゃ うにゃあ また説教くさくなっちゃったにゃ どうも長く生きてると説教臭くなってきていけないにゃ 行くにゃ 行くにゃ 水くみにレッツゴーにゃ」


 ・・・・・・


「しかし 不思議だねラスト 他の階層では光がないのにこの階層だけまるで外のような光が降り注いでいる 今まで何度も来たけれど気にしたことはなかった 今君と2人でこの階層を歩いているとまるで初めてここに来たように周りのことが見えるよ」


 先にさっさと行ってしまったタマちゃんの後をゆっくりと歩くアルミちゃんと僕はダンジョン地下10層の景色をゆっくりと眺めながら進んでいる 久しぶりの2人きりの時間だ


(なんかいい雰囲気だな・・・・・・)


「ラスト ちょっと こっちきて」


 アルミちゃんは少し上気したような頬で僕を木陰へと引っ張った


(こ これは・・・・・・ チューしていいんすか? アルミちゃん いいんすか?)


 木陰で見せたアルミちゃんはまさに接吻を待っている乙女の仕草だ


(それでは・・・・・・)


「お取り込み中 わりぃなぁ ラストえーっと 水くみ場はどこかいなあ ウヒヒ ちなみにこの地下10層の光は魔気の根源からの光の波長の干渉でこの階だけが明るくなっとるらしいでぇえ ウヒヒ」


「きゃ」


 アルミちゃんが聞いたこともないような悲鳴を短く発する


「ナバ!」


 キスをしようとしていた僕とアルミちゃんの間にぬっと入ってきたのはナバだ


「ウヒヒ アルミちゃん 君はいったい何をしようとしてたのかなぁ」


「ば ばか ナバ 今 ぼ 僕は目に そうだ 目にゴミが入ったんでラストに見てもらおうとしていたんだ」


(この うさぎ 一体どこから見ていたんだ 許さん!)


「ぎゃああああ」


 僕はナバのケーキのデコレーションのような白くて短い尻尾を力いっぱい握る

 ナバは相当痛かったのかスキルを使ってどこか遠くへとぶっ飛んで行ってしまった


「ふふ 行こうか ラスト」


 アルミちゃんは赤いままの顔で何事もなかったように動き出そうとする

 僕はアルミちゃんの手を引いてこちらへ抱き寄せた


 ・・・・・・






























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