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魔法少女は人殺し  作者: Takahiro
第一章 殺し合いの始まり

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5/11

エリクシル

 アシェンプテルはブロック塀から顔を出して覗き込む。真っ黒のゴスロリ衣装に紫の長髪、毒々しい見た目をした少女がそこに立っていた。その右手には大振りの鉈(なた)が握られている。


「ッ……!」


 少女は一瞬、アシェンプテルに向かって微笑んだ。その視線はすぐさまマジカルバレットに向けられる。その目には強い敵意が宿っていた。


「アシェンプテルを傷つけようとする奴は、殺すわ」


 ――何で私の名前を?


「んなッ……!?」


 黒い少女は何の躊躇もなく、マジカルバレットの胸めがけて鉈を投げつけた。その一撃は九七式自動砲そのもので防がれたが、銃身が折れるほどの衝撃であった。


「こいつッ……!」


 マジカルバレットは壊れた自動砲を投げ捨て、再び同じものを作り出した。


「それなら、これで殺す」


 少女は懐からナイフを取り出し、マジカルバレットに向かって一直線に突っ込んだ。


「だ、ダメだよ!!」

「バカがッ!!」


 アシェンプテルの予想通りのことが起こった。自動砲から放たれた20mm砲弾が少女の肩に命中し、ナイフを持った右腕が肩甲骨ごと吹き飛んだ。その衝撃で、少女の突撃もさすがに止まった。


「そんな怪我はもう治らな――何?」


 失われた腕が一瞬にして再生された。マジカルバレットも目を見開いて、引き金を引くのを忘れていた。


「あ、あれは一体……」

『彼女の固有魔法は再生能力みたいだね』

「それに特化した魔法少女、ってこと?」

『そういうことになるね』


 アシェンプテルが見守る中、少女は武器も持たず、マジカルバレットに突進する。


「アシェンプテルの敵! 死ねッ!!」

「これで終わらせてやる!」


 自動砲の照準が少女の頭部に合わされる。アシェンプテルが息を呑んだのも束の間、その引き金は引かれ、黒い少女の首から上は粉々に吹き飛んだ。


「ぃいいッ…………!」

『いや、大丈夫じゃないかな』

「な、何言って……え?」


 頭のない身体は、動いていた。脚に力が入り、倒れかけた身体を支える。少女は体勢を立て直し、腕と同じように、首から上を再生させた。


「こいつ……バケモンか……?」

「私はエリクシル。固有魔法は絶対の不死。お前が死ぬまで追いかけ続けるわ」

「ははっ。望むところだね」


 ――ん? 何か、捨てられた……?


 その時、アシェンプテルは何かを感じた。不法投棄されたゴミを探知している時と全く同じ感覚だ。今まさに、魔法少女たちが殺し合っているこの場所に、誰かが何かを捨てたということになる。


 ――普通の人間がそんなことをするわけない。なら、何かの罠? 爆弾とか?


「ねえ、あなた! 下がって! こっちに来て!」


 ブロック塀から出て呼びかける。


「アシェンプテルが言うならもちろんよ!」


 エリクシルはアシェンプテルの近くまで跳躍してきたが、着地してすぐ、まるで瀕死の病人のように激しく咳き込んだ。


「だ、大丈夫!?」

「うえぇ……何、これ……」


 激しく咳き込み、涙や鼻水を垂れ流すなど、随分酷い有様になっていた。


 ○


 マジカルバレットは、いつの間にか銃を捨て、家屋の屋上に移動していた。


 その隣には、また別の少女が立っていた。セーラー服に白衣を重ねたような衣装をまとい、白い髪をポニーテールにした少女である。


「せっかくの毒ガスを事前に察知するとは、どうやら全く戦闘の役に立たないわけでもなさそうだね」


 白い少女はアシェンプテルを値踏みするように見下ろしていた。


「誰なの、あなたは」

「これは失礼。申し遅れまして、私はアルカロイド。既知の化学物質なら何でも作れる魔法の持ち主だよ」

「ねえ、あなたたちは何がしたいの? 魔法少女を殺して、神様にでもなりたいっていうの?」


 戦いが膠着状態になり、アシェンプテルの中では、恐怖や困惑よりも怒りが勝りつつあった。


「アタシはこの世から武器をなくしたい。誰も傷つかないようにな」

「私は難病を根絶したい。誰も苦しまないようにね」

「そんな良い願いを持っているのに、どうして人に迷惑をかけるの?」

「魔法少女なんて、せいぜい十数人しかいねぇんだ。それを殺して、世界中の人が幸せになるなら、その方がいいだろ?」

「そ、それは……」

「こんなしょうもない話をしてる暇はねぇ。今度また殺しに来てやるよ」

「よくある議論ということは、結論なんて出しようがないってことだからね」


 マジカルバレットとアルカロイドは屋上を飛び降り姿を消した。


「そ、それにしても……あなた、大丈夫? エリクシルで合ってるんだよね?」


 アシェンプテルは改めてエリクシルに問いかける。先程の症状はかなり和らいでいるようだ。


「ええ、私は大丈夫よ。そんなことより、やっとあなたに会えた! 私が一生守ってあげる! あなたを傷つけようとする奴は皆殺しにするわ!」


 エリクシルは急に恍惚とした笑みを浮かべ、矢継ぎ早にまくし立てた。

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